『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.478
2010/02/02 (Tue) 13:22:59
写真はケンリック社発行の初版本命版パンフレットです。そして1960年代にも関わらず、パンフはこの1種類しか存在しません。同じ様なパターンは『007危機一発』『恐竜100万年』『ブリット』などにもみられ、アラン・ドロン主演作ならば『ジェフ』『名誉と栄光のためでなく』などが挙げられます。コレクターにとっては比較的発行部数も多く、集め易い類いのパンフレットであると言えるでしょう。
さて、この『猿の惑星』、実はつい最近迄、あたくし「何と云う莫迦莫迦しい映画だろう」とタカを括っておったんですな。ですが、年齢を重ねた今じっくりと慮るに、本作の持つ底知れぬ奥の深さに、いはやはこれは唯事ならぬわ、流石歴史に残っただけの事はある、と、菩提樹の下で座禅を組みつつ悔い改めた次第。
まず、1、進化し文明を持った猿によって支配された世界。言葉を持たず、白痴に近い人間が猿たちから奴婢の如き扱いを受けている。サルたちは皆が皆、かようにした人間を総称し「下等動物」であると断じてやまない。
あのね、要すればこれは今、諸賢の居られる世間様そのままではないかな?サル、若しくはそれに準ずる知能の者共に、君等がどういう暮らしぶりを強要されているのか考えてもみ給え。当然ではあるがサルの脳みそ共ときたら、我々を衆愚としてしか認識しておらんわけだ。
続けて2、支配層であるサルたちにも、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン等、明確な派閥が存在し、且つ、時に対立し、時に協力しながら、強固な組織化階級社会を構築している。
又、支配される側である奴隷には、衣食住、最低限の保証は与えられる。が、そもそも最下層の彼らには知恵を持つ事など許されない。怨嗟の呻きをあげながら現況を甘受するしか成す術無しなのである。
はははは、何がしか思い当たるかね?そう、その通りなのだよ。最早言うを俟つまい。
『猿の惑星』の原作は、作者のピエール・ブールが戦時中に味わった、旧日本軍捕虜収容所での実体験を元にして書かれたと謂われる。ま、これは有名な話だね。ブールのヤツ、余程な目に遭わされたのか知らないが、この話をはじめて耳にした時、私は「随分と日本人を愚弄しちょる!」と憤慨したものであった。『戦場に架ける橋』もブールの著作だが、恐らく、彼自身の我が国に対する本心は『猿の惑星』の方にあったのだろう。でなければ、わざわざ日本人を貶める一篇など執筆する筈がないではないか。
が、ブールの記した『猿の惑星』は、20世紀フォックスに因って映画化されるに及び、彼の底意地の悪い意図なんぞスっとんでしまうくらいの、もっと本質的な、普遍的な、議会制民主主義とは名ばかりのガチガチに凝り固まった、正しくそれは先進国と呼称される国家ならば何処にでも当て嵌まる組織化階級社会を、実に巧く揶揄するまでに至ってしまったのである。
これこそは原作には無い、本作オリジナルのエンディングの御蔭と言って間違いない。
そこで最後に3、真の意味で知識を得ている人間(本作の場合、主人公テイラー:チャールトン・ヘストン)は、猿社会では異端の存在であり、邪魔者なのだ。ヒエラルキー構造に服する事の出来ぬ者は、須らく追い詰められ殺されるか、若しくは、自らの力量のみを頼りに出奔するしかないのである。
さすれば思慮の浅いたわけ者は「自由」などと嘯くのだろうが、そうは問屋が卸さない。これは私がその昔から、あらゆる場所にて延々と吹聴し続けているテーマなのだが、つまり「自由とはこの世では最も不自由」と云う事なのだ。
身分社会とはいえ、格差があろうとはいえ、完全に体を成し得てしまった社会構造からの脱却は、己自身の持てる権利全てが剥奪されてしまう事を意味する。それは、衣食住のみならず、根本の生命活動を継続させる事すら困難の極みを見るのだ。
『猿の惑星』の主人公のテイラーも、猿社会から抜け出す決意を固めた時点で、そんなこんなの不自由なんぞ百も承知の筈。それでも尚も、彼は己を信じ、未来を信じ、自由を求めて海岸を歩き続けるのであった。
而してテイラーはなにゆえに悲嘆し、涙し、叫び崩れたのであろうか?
それはね、心の何処かで「きっとある」と、信じていた筈の自由が地球上の何処にも存在しない事実を、まざまざと見せつけられたからに他ならない。
だって、きみ・・・
幾星霜の時を経て、砂の中に埋もれていたのは自由の象徴そのものだったんだからね。
☆ 索引 〜 懐かしの映画パンフレット資料館 へ戻る
目次
上段の『☆ 索引』、及び、下段の『☯ 作家別索引』からどうぞ。本や雑誌をパラパラめくる感覚で、読みたい記事へと素早くアクセスする事が出来ます。
執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。
✠ トニー・アルゼンタ 〜 映画のお話が専門、たまに書評やエッセイなどを綴ります。当文書館管理人兼編集主幹。資料を読めば誰でも判る様なツマラン評論や自己満足は避け、これ迄に無い斬新な切り口で、エンターテイメントにも成り得る映画話を執筆(できたらいいなー)。自身の更新情報は→tumblrにて。
❁ ntr 〜 小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 PNの由来は映画『ロボコップ』に登場するオムニ社の敵役ロボットからです。今まで書き溜めてあった自身の体験談やコラムを発表するには良い機会と思い寄稿させて頂きました。是非、御読みになってみてください。そして何より皆さんに楽しんで貰えれば嬉しいです。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※
✠ トニー・アルゼンタ 〜 映画のお話が専門、たまに書評やエッセイなどを綴ります。当文書館管理人兼編集主幹。資料を読めば誰でも判る様なツマラン評論や自己満足は避け、これ迄に無い斬新な切り口で、エンターテイメントにも成り得る映画話を執筆(できたらいいなー)。自身の更新情報は→tumblrにて。
❁ ntr 〜 小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 PNの由来は映画『ロボコップ』に登場するオムニ社の敵役ロボットからです。今まで書き溜めてあった自身の体験談やコラムを発表するには良い機会と思い寄稿させて頂きました。是非、御読みになってみてください。そして何より皆さんに楽しんで貰えれば嬉しいです。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※
ブログ内検索