『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.546
2012/01/28 (Sat) 11:39:00
昨日、代々木から新宿あたりを営業の合間にブラブラしてたら、紀伊国屋で「西部警察PART 1」のDVD?ブルーレイ?ボックス発売記念で予告編を流していたのにハマって見続けてしまった。
やはり、この時代の実写の凄さに改めて感じ入ってしまった。
国会議事堂の前を爆走する装甲車、爆発炎上、ひっくり返るパトカー、白バイ、川を飛び越しサスをべったり沈ませて着地するフェアレディZ・・・「西部警察」については詳しく後日機会を改めて書きたいと思うけど。
新宿を出て甲州街道沿い、高井戸に近いバイク屋でRZ250を発見し立ち寄って
見せて貰う。
初のラジエーター付きの2ストエンジンは当時はかなりの話題だった。
初期型のストロボをトリコロールで配した白いタンクもいいけれど、自分が30年前に乗っていたのはこのブルーのラインのヤツだ。
今年のような寒い冬ではラジエーターが冷え過ぎて、ガムテープで半分ほど覆わないと調子が悪い。片肺にもよくなった。NGKの♯8が確か標準だったがいつも6か7をシートボックスの下に入れてグズグズ言い出したらプラグを自分で交換したりもした。
天気の悪い時の信号待ちでよくそのトラブルに見舞われた。
モクモクと白い煙を吐きCastrolのオイル特有の匂いは甘ったるかった。
だが、その一番の魅力はナナハン・キラーとも評されたその圧倒的な加速だろう。
思わず跨ってみたかったが、そうすると本当に欲しくなってしまうのでやめておいた。
このサイドカバーはいたずらされたり、盗まれたりいろんな災難を引き起こしたが
、タンクから後輪へ向かう尖ったストライプはこのバイクのセールスポイントだ。
少年キングに連載されていた「ワイルド7」を読むようになったのは中1からだったと思う。
悪を以て悪を制すは、なんだか幕末の新撰組にも似たコンセプトだが、リーダーの飛葉大陸ほか世界やオヤブン、ヘボピー、両国など個性的なキャラと彼らが操るバイクがさらに個性的だった。
八百の乗っていたノートンはヤモリのように、ビルの谷間や隙間を横から二つ出てくる車輪で上ることもできた。こんな万能なバイクがあるのかと本気で信じていたが、大人になってあんなバイクはおとぎ話と知った。
このころから段々、本格的なオフロードバイク、いわゆるトレール車の市場は主にヤマハとスズキで形成されていく。ホンダも作ってはいたが、マックイーンにCM出演させたエルシノアだけで4ストを得意とするホンダが2ストのバイク市場にそんな真剣ではなかった。
70年代中盤から後期にかけてのトレール車の魅力にタンクラインを、自分なら上げるだろう。
ヤマハのDT400と250だ。
特に250の方は黄色いタンクと一体化するような流麗なラインでまとめられている。このバイクが世に出た当時はまだ50ccのマメタンしか乗れなかった。
数年してスズキのハスラー400を友人から譲り受けるのだが、日本通運のトラックの助手のアルバイトをしていた時に酔っ払い運転で捕まり免許は取り消し、ハスラーも処分するしかなかった。
欠格期間を終えてバイクの免許も中型を取ったが、そのときはオンロードのGSX250や前述のRZ250だった。
80年代初頭のポパイにはDT250にトニーラマのブーツでジーンズ、マンパーみたいなスタイルで合わせよう、街中トレール!なんて出ていたと思うが、当時のレーサーレプリカブームでカウル付きのカフェレーサーにしか眼が行かなくなっていた。
江戸川の土手を二人乗りでサードギアで上れるハスラー400の魅力など何処かへ
置き忘れていた。
最近、公開された映画のワイルド7はこのオフロードバイクの魅力よりコンクリート・ウェスタン=都会の西部劇のほうがイメージが強いのかもしらない。
観ていないし何も言えないけれど。
オヤブンが乗っていたのはハスラー250だと思う。子分が1,000人も居るヤクザの親分がいきなり白バイ隊になんかなれないとその当時から思っていたが、劇中のオヤブンは人情味あるキャラクターでトレール車の扱いが抜群にうまい。
飛葉ちゃんが右手にライフルを提げてCB750で突っ走ってるのがよくあるけど
、スロットルはどうなってるんだろう?
アオシマから発売された飛葉のCB750の下部にはゼンマイが付いていた。
リアシートの端部からチェーン付きのミサイルを発射するギミックはついていたが
、いざ、作ってみるとなんとなく不格好で味気なかった記憶がある。
「ゼンマイで動くバイクのプラモなんてねえ...」と思うけど、当時は今のようなリアルな造形をフィギュアで飾っておくなんて言うよりギミックが命だったから仕方ないだろう。
この模型のゼンマイについても別の機会で語りたい。
旧いバイクに昂ぶるのはなぜだろう?
今更、DTやハスラーを手に入れて乗ってみたら心の中のオヤブンや八百が甦るのだろうか・・・?昔、実写版で放映されたワイルド7は、ほとんどスズキのバイクしか出てこなかったが、あれはあれでなかなか憧れたものだ。
中山麻理なんかも革のツナギで、マリアンヌ・フェイスフルばりにバイクで仇を追う殺し屋みたいな役をやっていて妙にセクシーだった。
「・・・♪ お前がやれぬことならば 俺がこの手でやってやる そうさ、この世のどぶさらい・・・」
よく行く旧い歌を素敵に歌わせてくれる店でこの主題歌を歌っていたら、帰りがけに自分より5歳ほど上のカッコイイおじさんに声をかけられた。
「いや、こんなところでこの歌聴けるなんて!あの番組に出てたスタントは友人だったんですよ。ありがとうございます」
などとお礼を言われてしまった。
この店に来る50前後から60手前くらいの方と案外、カウンターで呑んでいて歌や曲の事を話して友達になってしまう場面が多い。
やはり、テレビなどというものがそれだけの娯楽性を失ってきたからだろう。
使い捨てになるような業界や番組作成の在り方、視聴率ばかりに目を奪われろくでなしがはびこるような御笑いや下品なコントを垂れ流している。
家人に食事中にそれを見せられるのはたまに拷問に近い苦痛に感じる時もある。
自らの人生や体験の中で後進に道を説くような大人は今は嫌われる風潮にある。
先人の苦労や辛酸を我がことに、己の人生に置き換えて人の話を聞こうとするスタンスは今の大方の3,40台には少ないだろう。
旧いバイクは求めるのは意外と楽かもしれないが、今は駐車スペースも居る。
ヘルメットや手袋を置いて置くスペースも欲しい。ガレージ付きの郊外の戸建てが望ましいが今すぐではどうにもならない。
準備が整って、70年代の旧車にでも出会えたら何処の土手や河原を旅して回ろうか?林道ツーリングも楽しいかもしれない。
オンロード・バイクより2ストのトレールのほうがあちこち走るのにきっと便利だろう。旧いバイクに乗れたからと言って、心の中の八百も飛葉ちゃんもオヤブンも出てきてくれる訳ではない。
ただ、少しは自分を楽に励ましてくれる友達が増えるだけだ。
リーダーの飛葉は最終章で思わせぶりな占い師の老婆から優しい鷲と比喩された。
新緑の草木、秋や冬に感じるその草木の枯れて朽ちていく気配と匂い・・・。
懸命に生きてきた自分とその代償をクリアな思い出とともに感じ、生きながら得る自分を「たまには いいことあるさ・・」と願ってやまない自分が居る。
携帯電話などなく、いちいちバイクを公衆電話の脇に停めて公衆電話をかけていた
、あの頃の自分のすがすがしく脳天気なころに少しは戻りたい。
70年代から80年代初頭のバイクたちはワイルド7とともに、そんな思いをタンクのラインから教えてくれる。
優しい鷲は今も心の何処かで生きているんだとも・・・。
(c)2012 Ronnie Ⅱ , all rights reserved.
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やはり、この時代の実写の凄さに改めて感じ入ってしまった。
国会議事堂の前を爆走する装甲車、爆発炎上、ひっくり返るパトカー、白バイ、川を飛び越しサスをべったり沈ませて着地するフェアレディZ・・・「西部警察」については詳しく後日機会を改めて書きたいと思うけど。
新宿を出て甲州街道沿い、高井戸に近いバイク屋でRZ250を発見し立ち寄って
見せて貰う。
初のラジエーター付きの2ストエンジンは当時はかなりの話題だった。
初期型のストロボをトリコロールで配した白いタンクもいいけれど、自分が30年前に乗っていたのはこのブルーのラインのヤツだ。
今年のような寒い冬ではラジエーターが冷え過ぎて、ガムテープで半分ほど覆わないと調子が悪い。片肺にもよくなった。NGKの♯8が確か標準だったがいつも6か7をシートボックスの下に入れてグズグズ言い出したらプラグを自分で交換したりもした。
天気の悪い時の信号待ちでよくそのトラブルに見舞われた。
モクモクと白い煙を吐きCastrolのオイル特有の匂いは甘ったるかった。
だが、その一番の魅力はナナハン・キラーとも評されたその圧倒的な加速だろう。
思わず跨ってみたかったが、そうすると本当に欲しくなってしまうのでやめておいた。
このサイドカバーはいたずらされたり、盗まれたりいろんな災難を引き起こしたが
、タンクから後輪へ向かう尖ったストライプはこのバイクのセールスポイントだ。
少年キングに連載されていた「ワイルド7」を読むようになったのは中1からだったと思う。
悪を以て悪を制すは、なんだか幕末の新撰組にも似たコンセプトだが、リーダーの飛葉大陸ほか世界やオヤブン、ヘボピー、両国など個性的なキャラと彼らが操るバイクがさらに個性的だった。
八百の乗っていたノートンはヤモリのように、ビルの谷間や隙間を横から二つ出てくる車輪で上ることもできた。こんな万能なバイクがあるのかと本気で信じていたが、大人になってあんなバイクはおとぎ話と知った。
このころから段々、本格的なオフロードバイク、いわゆるトレール車の市場は主にヤマハとスズキで形成されていく。ホンダも作ってはいたが、マックイーンにCM出演させたエルシノアだけで4ストを得意とするホンダが2ストのバイク市場にそんな真剣ではなかった。
70年代中盤から後期にかけてのトレール車の魅力にタンクラインを、自分なら上げるだろう。
ヤマハのDT400と250だ。
特に250の方は黄色いタンクと一体化するような流麗なラインでまとめられている。このバイクが世に出た当時はまだ50ccのマメタンしか乗れなかった。
数年してスズキのハスラー400を友人から譲り受けるのだが、日本通運のトラックの助手のアルバイトをしていた時に酔っ払い運転で捕まり免許は取り消し、ハスラーも処分するしかなかった。
欠格期間を終えてバイクの免許も中型を取ったが、そのときはオンロードのGSX250や前述のRZ250だった。
80年代初頭のポパイにはDT250にトニーラマのブーツでジーンズ、マンパーみたいなスタイルで合わせよう、街中トレール!なんて出ていたと思うが、当時のレーサーレプリカブームでカウル付きのカフェレーサーにしか眼が行かなくなっていた。
江戸川の土手を二人乗りでサードギアで上れるハスラー400の魅力など何処かへ
置き忘れていた。
最近、公開された映画のワイルド7はこのオフロードバイクの魅力よりコンクリート・ウェスタン=都会の西部劇のほうがイメージが強いのかもしらない。
観ていないし何も言えないけれど。
オヤブンが乗っていたのはハスラー250だと思う。子分が1,000人も居るヤクザの親分がいきなり白バイ隊になんかなれないとその当時から思っていたが、劇中のオヤブンは人情味あるキャラクターでトレール車の扱いが抜群にうまい。
飛葉ちゃんが右手にライフルを提げてCB750で突っ走ってるのがよくあるけど
、スロットルはどうなってるんだろう?
アオシマから発売された飛葉のCB750の下部にはゼンマイが付いていた。
リアシートの端部からチェーン付きのミサイルを発射するギミックはついていたが
、いざ、作ってみるとなんとなく不格好で味気なかった記憶がある。
「ゼンマイで動くバイクのプラモなんてねえ...」と思うけど、当時は今のようなリアルな造形をフィギュアで飾っておくなんて言うよりギミックが命だったから仕方ないだろう。
この模型のゼンマイについても別の機会で語りたい。
旧いバイクに昂ぶるのはなぜだろう?
今更、DTやハスラーを手に入れて乗ってみたら心の中のオヤブンや八百が甦るのだろうか・・・?昔、実写版で放映されたワイルド7は、ほとんどスズキのバイクしか出てこなかったが、あれはあれでなかなか憧れたものだ。
中山麻理なんかも革のツナギで、マリアンヌ・フェイスフルばりにバイクで仇を追う殺し屋みたいな役をやっていて妙にセクシーだった。
「・・・♪ お前がやれぬことならば 俺がこの手でやってやる そうさ、この世のどぶさらい・・・」
よく行く旧い歌を素敵に歌わせてくれる店でこの主題歌を歌っていたら、帰りがけに自分より5歳ほど上のカッコイイおじさんに声をかけられた。
「いや、こんなところでこの歌聴けるなんて!あの番組に出てたスタントは友人だったんですよ。ありがとうございます」
などとお礼を言われてしまった。
この店に来る50前後から60手前くらいの方と案外、カウンターで呑んでいて歌や曲の事を話して友達になってしまう場面が多い。
やはり、テレビなどというものがそれだけの娯楽性を失ってきたからだろう。
使い捨てになるような業界や番組作成の在り方、視聴率ばかりに目を奪われろくでなしがはびこるような御笑いや下品なコントを垂れ流している。
家人に食事中にそれを見せられるのはたまに拷問に近い苦痛に感じる時もある。
自らの人生や体験の中で後進に道を説くような大人は今は嫌われる風潮にある。
先人の苦労や辛酸を我がことに、己の人生に置き換えて人の話を聞こうとするスタンスは今の大方の3,40台には少ないだろう。
旧いバイクは求めるのは意外と楽かもしれないが、今は駐車スペースも居る。
ヘルメットや手袋を置いて置くスペースも欲しい。ガレージ付きの郊外の戸建てが望ましいが今すぐではどうにもならない。
準備が整って、70年代の旧車にでも出会えたら何処の土手や河原を旅して回ろうか?林道ツーリングも楽しいかもしれない。
オンロード・バイクより2ストのトレールのほうがあちこち走るのにきっと便利だろう。旧いバイクに乗れたからと言って、心の中の八百も飛葉ちゃんもオヤブンも出てきてくれる訳ではない。
ただ、少しは自分を楽に励ましてくれる友達が増えるだけだ。
リーダーの飛葉は最終章で思わせぶりな占い師の老婆から優しい鷲と比喩された。
新緑の草木、秋や冬に感じるその草木の枯れて朽ちていく気配と匂い・・・。
懸命に生きてきた自分とその代償をクリアな思い出とともに感じ、生きながら得る自分を「たまには いいことあるさ・・」と願ってやまない自分が居る。
携帯電話などなく、いちいちバイクを公衆電話の脇に停めて公衆電話をかけていた
、あの頃の自分のすがすがしく脳天気なころに少しは戻りたい。
70年代から80年代初頭のバイクたちはワイルド7とともに、そんな思いをタンクのラインから教えてくれる。
優しい鷲は今も心の何処かで生きているんだとも・・・。
(c)2012 Ronnie Ⅱ , all rights reserved.
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No.545
2012/01/27 (Fri) 15:07:41
つい先日、古書街を得意先回りの帰りに歩いていたら「都電 懐かしの街角」というのが目を引いて、ペラペラと白黒の昭和画像のページをめくるうちにタイムスリップした気分になり衝動買いしてしまった。
昭和の初期から庶民の足として、戦時中は軍需工場へ移動する工場労働者の足として、急速に発達したがやがて台頭してきた戦後の復興~高度成長期には路上をノロノロと12,3kmで通行する路面電車は邪魔者にされ、地下鉄路線網の整備進捗とともにやがて姿を消していく。
都電の姿が消えていく順に地下鉄が整備されていく様子がよくわかる。
都内の随所で細く長い散歩道のような公園や、みどりの小道などの名称で親しまれる公園を歩くと結構、片隅に動輪や線路の一部を遺した記念碑があり、そこに走っていた都電を偲ばせる。
確か荒川遊園地?に行けば昔の何型かしらないけど旧い都電が鎮座していたと思う。トロリーバスと言うのもあったと思う。
幼稚園か小学1,2年あたりにおぼろげな乗車した記憶と景色の思い出が一冊の写真集から甦る。黄色かグリンに塗られた素朴でユーモラスな車両が往来の真中をゆっくりと走っていたのは覚えてる。たまに、何処かの商店や事務所に飾ってある写真や、昭和の日付で描かれた日にちの入ったスケッチや水彩画などを目にすると立ち止まってしまう。
昔の映画のポスターも往時の記憶の断片を見た思いがする時はあるが、これはまた違うノスタルジーだ。映画「三丁目の夕日」の続編が公開されて好評のようだがどちらもまだ見たことはない。
セブンイレブンで、キャンペーンのトミカやマーブルチョコを扱っていたが、早くも見切られ始めた。もう少し、専門店やデパートの玩具売り場などできちんと売り場展開を継続すれば・・・とも思うのだが映画が終わるころにはキャンペーン商品も片付けたいのだろう。それが時代のスピードだ。
都電が走っていた頃は、三和銀行とか富士銀行とかいろんな都市、ローカル銀行がたくさんあって、口座を開くと三匹の子豚やアトム、そしてミラーマンなどのキャラクター貯金箱を窓口でくれたと思う。これも立派なキャンペーングッズだった。
ブルマアクなどで出していたいわゆるソフトビニール(ソフビと縮める言い方はどうも慣れないが)人形は今のそれと比べると格段に頭でっかちで顔がでかい。
それより更にユーモラスなのがキャラクター貯金箱だ。大事に10円や50円、100円と貯めるのだからユーモラスより不細工なのはある意味仕方ない。
今の銀行ではくれるのかどうかも知らないし、カードで皆コンビニでも済まされるからそんな貯金箱を目にする銀行へ行かなくなった。
行ったところで、グローバル・スタンダードか自己資本比率かリーマン・ショックだか分からないけれど「搾取する側の目論見」で統廃合が進み、都電が通った通りの角にはシャッターが下りて何年も経ち、「○×へ移転しました。永らくの御愛顧を・・」などと書かれた黄色に変色した紙がウインドに貼ってある。
やがてそれもなくなり再開発なんとか計画などと称してその建物はマンションに変わっていく。ユーロもドルも駄目、世界恐慌の前触れのような金融不安が世界的に・・・なんて記事や報道は嫌でも目につく。
求めた写真集にはいくつかのこんな文章が書いてある。
「都電は日本が経済成長を遂げた時代に下り坂を転げるように消え去っていった、時代の夢から裏切られ時代と擦れ違い続けた都電」
「人から馬鹿にされてるような気がし、他人の目が気になっていた年頃に都電と出会った。時代遅れ、邪魔者扱いされながら健気に働く姿に、己の未熟さを痛感した」
「その虫のような、しかし辛抱強い都電の動きが、立ち止まっていた自分の背中を押してくれる気がした」
移動や通勤にも多少のラッシュはあっても、それほどの不快感を感じない便利な時代だ。
通勤や通学にゲームをするのは老若男女共通だし、「スマホ」というガラスの板を懸命にこすれば夢の世界が待っている。
音楽を聴くのも携帯かチューイン・ガムくらいのMP3にヘッドフォンを挿せばいい。音も快適だ。
貧乏だったあの時代が脳裏をよぎる。
便利になった暮らしからはあの時代に戻れない。
ただ、あの時代、都電が走っていたあの頃のたくましさや気概が何処に消えたのか
・・・?変わったのか?なくしたのか?
亀戸で観る軌道跡の公園は桜の名所に今はなっている。
近所には大きな商業施設もある。
軌道の跡、線路と動かなくなった動輪は、雪が降っても桜が咲いてまた散っても、物も言わずにひっそりと其処に佇んでいる。
(c)2012 Ronnie Ⅱ , all rights reserved.
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昭和の初期から庶民の足として、戦時中は軍需工場へ移動する工場労働者の足として、急速に発達したがやがて台頭してきた戦後の復興~高度成長期には路上をノロノロと12,3kmで通行する路面電車は邪魔者にされ、地下鉄路線網の整備進捗とともにやがて姿を消していく。
都電の姿が消えていく順に地下鉄が整備されていく様子がよくわかる。
都内の随所で細く長い散歩道のような公園や、みどりの小道などの名称で親しまれる公園を歩くと結構、片隅に動輪や線路の一部を遺した記念碑があり、そこに走っていた都電を偲ばせる。
確か荒川遊園地?に行けば昔の何型かしらないけど旧い都電が鎮座していたと思う。トロリーバスと言うのもあったと思う。
幼稚園か小学1,2年あたりにおぼろげな乗車した記憶と景色の思い出が一冊の写真集から甦る。黄色かグリンに塗られた素朴でユーモラスな車両が往来の真中をゆっくりと走っていたのは覚えてる。たまに、何処かの商店や事務所に飾ってある写真や、昭和の日付で描かれた日にちの入ったスケッチや水彩画などを目にすると立ち止まってしまう。
昔の映画のポスターも往時の記憶の断片を見た思いがする時はあるが、これはまた違うノスタルジーだ。映画「三丁目の夕日」の続編が公開されて好評のようだがどちらもまだ見たことはない。
セブンイレブンで、キャンペーンのトミカやマーブルチョコを扱っていたが、早くも見切られ始めた。もう少し、専門店やデパートの玩具売り場などできちんと売り場展開を継続すれば・・・とも思うのだが映画が終わるころにはキャンペーン商品も片付けたいのだろう。それが時代のスピードだ。
都電が走っていた頃は、三和銀行とか富士銀行とかいろんな都市、ローカル銀行がたくさんあって、口座を開くと三匹の子豚やアトム、そしてミラーマンなどのキャラクター貯金箱を窓口でくれたと思う。これも立派なキャンペーングッズだった。
ブルマアクなどで出していたいわゆるソフトビニール(ソフビと縮める言い方はどうも慣れないが)人形は今のそれと比べると格段に頭でっかちで顔がでかい。
それより更にユーモラスなのがキャラクター貯金箱だ。大事に10円や50円、100円と貯めるのだからユーモラスより不細工なのはある意味仕方ない。
今の銀行ではくれるのかどうかも知らないし、カードで皆コンビニでも済まされるからそんな貯金箱を目にする銀行へ行かなくなった。
行ったところで、グローバル・スタンダードか自己資本比率かリーマン・ショックだか分からないけれど「搾取する側の目論見」で統廃合が進み、都電が通った通りの角にはシャッターが下りて何年も経ち、「○×へ移転しました。永らくの御愛顧を・・」などと書かれた黄色に変色した紙がウインドに貼ってある。
やがてそれもなくなり再開発なんとか計画などと称してその建物はマンションに変わっていく。ユーロもドルも駄目、世界恐慌の前触れのような金融不安が世界的に・・・なんて記事や報道は嫌でも目につく。
求めた写真集にはいくつかのこんな文章が書いてある。
「都電は日本が経済成長を遂げた時代に下り坂を転げるように消え去っていった、時代の夢から裏切られ時代と擦れ違い続けた都電」
「人から馬鹿にされてるような気がし、他人の目が気になっていた年頃に都電と出会った。時代遅れ、邪魔者扱いされながら健気に働く姿に、己の未熟さを痛感した」
「その虫のような、しかし辛抱強い都電の動きが、立ち止まっていた自分の背中を押してくれる気がした」
移動や通勤にも多少のラッシュはあっても、それほどの不快感を感じない便利な時代だ。
通勤や通学にゲームをするのは老若男女共通だし、「スマホ」というガラスの板を懸命にこすれば夢の世界が待っている。
音楽を聴くのも携帯かチューイン・ガムくらいのMP3にヘッドフォンを挿せばいい。音も快適だ。
貧乏だったあの時代が脳裏をよぎる。
便利になった暮らしからはあの時代に戻れない。
ただ、あの時代、都電が走っていたあの頃のたくましさや気概が何処に消えたのか
・・・?変わったのか?なくしたのか?
亀戸で観る軌道跡の公園は桜の名所に今はなっている。
近所には大きな商業施設もある。
軌道の跡、線路と動かなくなった動輪は、雪が降っても桜が咲いてまた散っても、物も言わずにひっそりと其処に佇んでいる。
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No.542
2012/01/24 (Tue) 22:18:09
人工冬眠装置の温度が徐々に高まり、そこに眠っているバイアンズの四人のメンバーが次々と目を覚ました。セカンドの獄目鬼(ごくめき)、ファーストの火戸羅(ひどら)、ライトの鹿羽根(しかばね)、それに控えの外野手だった魔具虎(まぐどらー)。
監督であるモンスターを除いて、今まで起きて任務についていた四人のうち、六減(ろくふぇる)と零刻苦(れいこっく)の二人が松平に殺され、生き残ったのはショートの牟残(むざん)とキャッチャーの兀奴(ごっど)である。つまりもともと三十名ほどいたバイアンズのメンバーも、今は六人だけが残っていることになる。
土星の衛星タイタンの大気圏に突入態勢に入った宇宙船ドリムーン号だが、高性能のコンピュータ・ズバットが松平によって破壊された今、モンスターによる手動操縦に頼らねばならず、危機に瀕していた。
船内が猛烈な熱を持ち始めた。
「船内温度、五十二度。なおも上昇中!」兀奴が言った。
「この船が燃えつきずにいられるかどうかは神のみぞ知る、だな」モンスターがつぶやいた。
やがて船内の温度は下がりだした。
「よし、ひとまず大気圏突入は成功だ。牟残、外の様子はどうだ?」
「前方に厚い雲が見えます。どうやらその下は嵐ですね。液体メタンの雨と大風が吹き荒れていると思われます」
「松平、こんな窒素とメタンだけの星にあんたの妹さんがいるとはとても思えんがな」とモンスター。
しかし松平はそれには答えず、黙ってメインスクリーンを凝視していた。そしてふいにブリッジから出て行った。
「監督、ドリムーン号の二番ハッチが勝手に開きました!」
「何? 二番ハッチの映像を出せ」
するとスクリーンに、サングラスをかけた松平平平がパラシュートを背負って船から飛び降りるのが映し出された。
「あのおっさん、酸素ボンベなしで出てったぜ」兀奴がいうと
「真空の宇宙でも平気だったやつだからな。今後も松平には油断するな」とモンスター。
やがてドリムーン号は地表に着陸した。モンスターは一同に向かって
「さて、バイアンズの諸君。われわれの任務は、タイタンでのエイリアンの生態系の調査だ。知っての通りエイリアンは危険きわまりない怪物だが、彼らと戦いに行くのではない。やむをえない場合を除いて、エイリアンとの無用な衝突は避けること。いいな。では各自装備を準備。雨が上がったら地表の探索に向かう」
やがて液体メタンの雨がやんだ。特殊な宇宙服を着て、モンスターとバイアンズのメンバーはタイタンの砂漠を歩いていった。遠くに丘が見え、ひとまずそこを目標地点と定めた。
二時間ばかり歩いて目標の丘に到着したが、エイリアンの生息している気配はまるでなく、ただセピア色の砂漠が延々と広がっているだけだった。
「ここで小休止しよう」モンスターが丘のふもとで言った。「兀奴、探知機に生命反応はないか?」
「何も反応ありません」と兀奴。「少なくとも松平の反応はあっていいはずなんですが」
「おい、これ何だ?」火戸羅が、丘の側面に出来た断層を注視していた。
「きらきら輝いている……ダイヤモンドじゃないか?」と牟残。「しかもこれは原石じゃない。明らかに人の手が加わっている」
バイアンズのメンバーは、断層から見え隠れしているダイヤモンドを掘り出そうとしてスコップでつつきまわした。
「これは古い文明があった証拠だ。掘り出す前に写真を撮るから皆そこをどいてくれ」
モンスターが言ったが、バイアンズのメンバーはダイヤモンドに目の色を変え、掘り出し作業をやめる気配はなかった。
「おいみんな、我々の使命を忘れてるんじゃないか? そこをどくんだ」
「うるせえ」火戸羅がダイヤの大きな塊りでモンスターの頭をぶんなぐった。
「ぐおっ」モンスターは昏倒し、その場に伸びてしまった。
「お前は誰だ?」モンスターに誰かが尋ねてくる。
「俺は、モンスターだ。一つ目の、無敵のモンスター」
「ここで何をしている?」
「思い出せない……ここはどこだ。天国か?」
「天国? 悪魔の毒々モンスターが天国になんか行けるもんか」
「では地獄か?」
しかしそれには返事がなく、轟々と吹き荒れる風の音が聞こえてきた。
モンスターは意識が朦朧としていた。どうやら今の声は幻聴だったようだ……そう、俺はエイリアンの探索にタイタンまで来ていたのだった。そして殴られて……。
目を開けるとそこは暗闇で、息苦しかった。手を伸ばすと壁にぶつかる。どうも棺桶の中にでも入れられているような具合だ。力いっぱい手を上げると、棺のふたが開いた。目に飛び込んできたのは蛍光灯の光だ……。
「モンスター君、目が覚めたのかね?」近くから声がした。
起き上がってみると、そこは和室で、松平平平がこたつに入ってこちらを凝視していた。
「いやいやいや君が植物人間になってしまったのではないかと心配しておったのだよ」松平が言った。
「ここはどこだ? 日本か?」
「そんなはずないじゃないか、タイタンだよきみ」
「タイタンのどこにこんな家があったんだ?」
「ここは私の妹の家なんだよ。紹介しよう、妹の松平竹子(まつだいら・たけこ)だ」
見ると松平の隣に、おかっぱ頭をした安倍晋三元総理そっくりの人物がいた。まるで男のような顔だし、男の声で
「はじめまして、モンスターさん。いつも兄がお世話になっております」
と言ったが、これが松平竹子らしい。
「竹子、お茶を入れてきなさい」松平平平が言うと、その安倍元総理そっくりの女が「はい」と言って席を立った。
「そしてモンスター君、こちらがお隣に住んでいるテッキク君だ」
見ると、こたつにエイリアンも入っているではないか。そのエイリアンは押し殺したような低い声で
「よろしく、モンスター君」
と挨拶した。
「ちょっと待ってくれ、あんたエイリアンとどういう関係なんだ?」モンスターがうろたえて尋ねると
「どういうもこういうも、ただの茶飲み友達だよモンスター君。断っとくがこれは愛人じゃないよ」松平は真剣な顔をして言った。
エイリアンと人間が友好関係を結べるとは……さっきの安倍元総理そっくりの妹といい、俺はまだ夢を見ているんじゃないか? モンスターは何がなんだか分からないというふうに頭をかきむしった。
「これは夢じゃないんだよ、モンスター君。そうだ、テレビでも点けよう」
テレビに、ドリムーン号を後ろにして整列したバイアンズの面々が映し出された。牟残や兀奴、魔具虎らが、アナウンサーと談笑していた。手にはダイヤの指輪をいくつもはめている。
「さて、タイタンへの探検で巨万の富を得たIRバイアンズのメンバーです。地球に帰還して以来多忙な日々を送っておられる皆さんですが、今日はお忙しい合間を縫って、インタビューに答えていただけることになりました。皆さん宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
「さて、本来モンスターさんとタイタンへ探検に赴いていたバイアンズですが、モンスターは不幸な事故に遭って亡くなってしまいました。改めて今のお気持ちをお聞かせください」
「モンスター監督は、一生の恩人です」火戸羅が涙ぐみながら言った。「それが探検の最中、砂漠の流砂に飲み込まれて……必死で助けようとしたんですが」
バイアンズの六人は、みな涙を浮かべて嗚咽していた。
「思い出した! 火戸羅が俺を殴ったんだ!」モンスターは叫んだ。「畜生、俺を置いて勝手に帰るばかりか、ダイヤに目がくらんで俺を抹殺しようとしたな!」
「へえー」松平平平と竹子はみかんを食べながら無関心そうに言った。
「よし、これからお前らバイアンズのメンバーに復讐してやる! 首を洗って待ってろよ」
モンスターはみかんを握りつぶしながら叫び、復讐の鬼となることを心に誓ったのだった。
(c) 2012 ntr ,all rights reserved.
監督であるモンスターを除いて、今まで起きて任務についていた四人のうち、六減(ろくふぇる)と零刻苦(れいこっく)の二人が松平に殺され、生き残ったのはショートの牟残(むざん)とキャッチャーの兀奴(ごっど)である。つまりもともと三十名ほどいたバイアンズのメンバーも、今は六人だけが残っていることになる。
土星の衛星タイタンの大気圏に突入態勢に入った宇宙船ドリムーン号だが、高性能のコンピュータ・ズバットが松平によって破壊された今、モンスターによる手動操縦に頼らねばならず、危機に瀕していた。
船内が猛烈な熱を持ち始めた。
「船内温度、五十二度。なおも上昇中!」兀奴が言った。
「この船が燃えつきずにいられるかどうかは神のみぞ知る、だな」モンスターがつぶやいた。
やがて船内の温度は下がりだした。
「よし、ひとまず大気圏突入は成功だ。牟残、外の様子はどうだ?」
「前方に厚い雲が見えます。どうやらその下は嵐ですね。液体メタンの雨と大風が吹き荒れていると思われます」
「松平、こんな窒素とメタンだけの星にあんたの妹さんがいるとはとても思えんがな」とモンスター。
しかし松平はそれには答えず、黙ってメインスクリーンを凝視していた。そしてふいにブリッジから出て行った。
「監督、ドリムーン号の二番ハッチが勝手に開きました!」
「何? 二番ハッチの映像を出せ」
するとスクリーンに、サングラスをかけた松平平平がパラシュートを背負って船から飛び降りるのが映し出された。
「あのおっさん、酸素ボンベなしで出てったぜ」兀奴がいうと
「真空の宇宙でも平気だったやつだからな。今後も松平には油断するな」とモンスター。
やがてドリムーン号は地表に着陸した。モンスターは一同に向かって
「さて、バイアンズの諸君。われわれの任務は、タイタンでのエイリアンの生態系の調査だ。知っての通りエイリアンは危険きわまりない怪物だが、彼らと戦いに行くのではない。やむをえない場合を除いて、エイリアンとの無用な衝突は避けること。いいな。では各自装備を準備。雨が上がったら地表の探索に向かう」
やがて液体メタンの雨がやんだ。特殊な宇宙服を着て、モンスターとバイアンズのメンバーはタイタンの砂漠を歩いていった。遠くに丘が見え、ひとまずそこを目標地点と定めた。
二時間ばかり歩いて目標の丘に到着したが、エイリアンの生息している気配はまるでなく、ただセピア色の砂漠が延々と広がっているだけだった。
「ここで小休止しよう」モンスターが丘のふもとで言った。「兀奴、探知機に生命反応はないか?」
「何も反応ありません」と兀奴。「少なくとも松平の反応はあっていいはずなんですが」
「おい、これ何だ?」火戸羅が、丘の側面に出来た断層を注視していた。
「きらきら輝いている……ダイヤモンドじゃないか?」と牟残。「しかもこれは原石じゃない。明らかに人の手が加わっている」
バイアンズのメンバーは、断層から見え隠れしているダイヤモンドを掘り出そうとしてスコップでつつきまわした。
「これは古い文明があった証拠だ。掘り出す前に写真を撮るから皆そこをどいてくれ」
モンスターが言ったが、バイアンズのメンバーはダイヤモンドに目の色を変え、掘り出し作業をやめる気配はなかった。
「おいみんな、我々の使命を忘れてるんじゃないか? そこをどくんだ」
「うるせえ」火戸羅がダイヤの大きな塊りでモンスターの頭をぶんなぐった。
「ぐおっ」モンスターは昏倒し、その場に伸びてしまった。
「お前は誰だ?」モンスターに誰かが尋ねてくる。
「俺は、モンスターだ。一つ目の、無敵のモンスター」
「ここで何をしている?」
「思い出せない……ここはどこだ。天国か?」
「天国? 悪魔の毒々モンスターが天国になんか行けるもんか」
「では地獄か?」
しかしそれには返事がなく、轟々と吹き荒れる風の音が聞こえてきた。
モンスターは意識が朦朧としていた。どうやら今の声は幻聴だったようだ……そう、俺はエイリアンの探索にタイタンまで来ていたのだった。そして殴られて……。
目を開けるとそこは暗闇で、息苦しかった。手を伸ばすと壁にぶつかる。どうも棺桶の中にでも入れられているような具合だ。力いっぱい手を上げると、棺のふたが開いた。目に飛び込んできたのは蛍光灯の光だ……。
「モンスター君、目が覚めたのかね?」近くから声がした。
起き上がってみると、そこは和室で、松平平平がこたつに入ってこちらを凝視していた。
「いやいやいや君が植物人間になってしまったのではないかと心配しておったのだよ」松平が言った。
「ここはどこだ? 日本か?」
「そんなはずないじゃないか、タイタンだよきみ」
「タイタンのどこにこんな家があったんだ?」
「ここは私の妹の家なんだよ。紹介しよう、妹の松平竹子(まつだいら・たけこ)だ」
見ると松平の隣に、おかっぱ頭をした安倍晋三元総理そっくりの人物がいた。まるで男のような顔だし、男の声で
「はじめまして、モンスターさん。いつも兄がお世話になっております」
と言ったが、これが松平竹子らしい。
「竹子、お茶を入れてきなさい」松平平平が言うと、その安倍元総理そっくりの女が「はい」と言って席を立った。
「そしてモンスター君、こちらがお隣に住んでいるテッキク君だ」
見ると、こたつにエイリアンも入っているではないか。そのエイリアンは押し殺したような低い声で
「よろしく、モンスター君」
と挨拶した。
「ちょっと待ってくれ、あんたエイリアンとどういう関係なんだ?」モンスターがうろたえて尋ねると
「どういうもこういうも、ただの茶飲み友達だよモンスター君。断っとくがこれは愛人じゃないよ」松平は真剣な顔をして言った。
エイリアンと人間が友好関係を結べるとは……さっきの安倍元総理そっくりの妹といい、俺はまだ夢を見ているんじゃないか? モンスターは何がなんだか分からないというふうに頭をかきむしった。
「これは夢じゃないんだよ、モンスター君。そうだ、テレビでも点けよう」
テレビに、ドリムーン号を後ろにして整列したバイアンズの面々が映し出された。牟残や兀奴、魔具虎らが、アナウンサーと談笑していた。手にはダイヤの指輪をいくつもはめている。
「さて、タイタンへの探検で巨万の富を得たIRバイアンズのメンバーです。地球に帰還して以来多忙な日々を送っておられる皆さんですが、今日はお忙しい合間を縫って、インタビューに答えていただけることになりました。皆さん宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
「さて、本来モンスターさんとタイタンへ探検に赴いていたバイアンズですが、モンスターは不幸な事故に遭って亡くなってしまいました。改めて今のお気持ちをお聞かせください」
「モンスター監督は、一生の恩人です」火戸羅が涙ぐみながら言った。「それが探検の最中、砂漠の流砂に飲み込まれて……必死で助けようとしたんですが」
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「思い出した! 火戸羅が俺を殴ったんだ!」モンスターは叫んだ。「畜生、俺を置いて勝手に帰るばかりか、ダイヤに目がくらんで俺を抹殺しようとしたな!」
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目次
上段の『☆ 索引』、及び、下段の『☯ 作家別索引』からどうぞ。本や雑誌をパラパラめくる感覚で、読みたい記事へと素早くアクセスする事が出来ます。
執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 ブログ引っ越しました。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※
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