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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/23 (Sat) 04:02:16

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No.474
2011/09/04 (Sun) 21:33:49

新秋

秋夕疎星露自幽
淸颷竹戰月如鉤
誰邊促織吹吾夢
永夜杯中大火流

秋の夕べ、星はまばらに輝き、地上におく露は自然と多くなっている
清々しい秋風に、竹はざわざわと揺れ、かぎのような三日月が輝いている
何処かできりぎりすが鳴いて、私の夢を吹き消した
眠られぬ長い夜、一人で酒を飲んでいると、杯の中を大火星が流れていった


大火星:さそり座のアルファ星アンタレス。


(c) 2011 ntr ,all rights reserved.
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No.457
2011/08/22 (Mon) 17:42:29

「えー、馬鹿のことを昔は愚者と申しましたそうです。女の尻をしじゅう追い掛け回して鼻の下を伸ばしている馬鹿、ケチでお金に異常なほど執着する馬鹿。馬鹿にも四十八馬鹿ございまして、その大統領が噺家ということになっております」
 そこで観客はどっと笑った。すると噺家は急に激怒し、高座の下から機関銃をとりだした。
「安易に笑うんじゃねえ!」噺家は客席に向かって銃を乱射した。耳をつんざくような兇悪な銃声、飛び散る血しぶき、観客の阿鼻叫喚。
 撃ち終わった噺家は呼吸を整え、着物についたほこりを手で払った。
「その程度で笑うなら落語家なんて要りゃしねぇんだ」
 そして再び正座して話し始めた。
「中でもたちの悪いのは理屈を言う馬鹿ですな。おう、そこにいるのは八兵衛じゃないか、こっちにお入り。どうもご隠居さん、今日はちょっと分からないことがありまして、教えてもらおうというわけで参じました。……なんだ、その分からねえことってのは」
 噺家はそこでお茶をすすった。
「うわばみってものがあるでしょう。ありゃどうしてうわばみってんですかい? ……何だ、変なことを尋ねる奴だな、蛇の太く大きくなったものをうわばみというんだ。……いやそりゃ分かってますがね、どうしてうわばみっていう名前になったんです? 蛇の大きくなったものなら、『おおへび』とか『へびおお』とか言いそうなもんじゃないですかい、うわばみなんて蛇とは縁のない言葉ですからね、そこんとこをご隠居さんにお尋ねしようと思って。するとご隠居さん、しばらく腕組みしてこう言った」
 噺家は客席をにらみまわした。
「まずここに、うわっ、ていうものがあると思いねぇ」
 噺家は急に立ち上がり、客席に降りていったと思うと若い男性客のむなぐらを掴んだ。
「思いねぇ!」と噺家。その迫力に押されて客は
「お、思いました」
「それが、ばむんだな」
「……」
「ばむんだよ!」噺家は返事を強要した。
「は、はぁ」
「うわ、が、ばむからうわばみだ、分かったか」
「分かりました」
「本当に分かったんだな?」噺家は男性客をにらみつけた。
「ええ」
「それじゃあここに、うわ、が、ばんでるところを描いてみな」というと噺家はスケッチブックとマジックを客に手渡した。
 客が何も描けずに凝固していると、噺家はストップウォッチをふところから取り出した。そしてたもとから出した剃刀を客の頚動脈に押し付け、
「三十秒以内に描け。さもなくば殺す」
 なおも客が描けずにいると
「あと二十秒……あと十五秒……あと十秒だ」
 噺家は額から汗を流しながらストップウォッチを見ている。
「五……四……三……二……、一」
 そのとき、寄席の後部の扉が開き、銃をもった私服の男と数人の警官がなだれこんできた。
「そこまでだ! 手に持った武器を捨てろ!」
「おっと、邪魔者が入ったな。だがしかし、タイムリミットだ」
 そういうと噺家は、男性客の頚動脈を勢いよくかき切った。鮮血がシャワーのように飛び出し、噺家の顔を真っ赤に染めた。そしてもろはだを脱ぐと、彼の胴体にはガムテープで筒状のものがたくさん巻きつけられていた。
「ダイナマイトだ。下手に俺を撃ったら寄席ごとふっとぶぜ」
 噺家はゆうゆうと高座に戻り、凍りついたように沈黙している観客、そして刑事たちに向かって言った。
「そうとも、俺はまともな噺家じゃねぇ。立派な師匠に弟子入りしたが、さっぱり芽が出ず毎日いらいらして、気晴らしに日本刀を持ってある家に忍び込み一家五人皆殺しよ。だがな、警察のおっさんたちよ、俺は気が狂ってるとかで裁判所は死刑にしてくれねぇんだ。で精神病院にぶち込まれはしたが、俺みたいな気狂いが日本中にわんさかいるのか、定員オーバーですぐ釈放されたのさ。だが俺に何をして食ってけってんだ。キチガイの凶状持ちがやる仕事なんて無え。そこで俺は、本当のキチガイ、殺人狂にしかできない落語をやることにした。気に入らねぇ客は容赦なくぶち殺す、サバイバル寄席だ。すべからくエンターテインメントは客からスリルを求められる。だがな、本当のスリルってものは一生の心の傷にもなりかねねぇおっかねぇものだ。それを俺はこの世に知らしめようとしてるんだよ」
「講釈はそれで終わりか、くされ外道!」私服刑事が拳銃を構えながら言った。
「何を、この」噺家が言いかけたところで刑事の銃が発砲された。弾丸は見事に噺家の眉間を撃ちぬいた。
「即死だな」高座に上がった刑事は、噺家の脈を調べて言った。「皆さん、もう安全です。この男は死にました。安心してください」

 しかしここで眉間を撃たれて死んだ落語家、その名も桂米狂(かつら・べいきょう)は、その過激すぎるパフォーマンスによって死後、一部の演芸関係者の間で熱狂的に支持を集め始めた。またそのご日本の演芸界は退廃の一途をたどり、あらゆる娯楽に飽きて感覚の麻痺しきった人々は、二代目三代目の桂米狂が提供するサバイバル寄席をおおいに歓迎したのである。

 それから百五十年。十代目を数える桂米狂は政界に打って出た。総理大臣に上りつめた彼は、当然のごとく核ミサイルで大戦争を引き起こし、その結果ほとんどの地球人類は死に絶えてしまった。彼は最後に「ハレルヤ!」と叫んで自分の頭を撃ちぬいたそうである。


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No.456
2011/08/22 (Mon) 17:41:07

 ベムは禿げた茶色い頭をなでながら、自社ソフトの修正プログラムをデバッグにかけ、うまく作動することを画面上で確かめた。あとは他の社員にプログラムのテストをまかせ、今日はもう帰るとしよう。
 ベムは黒いソフト帽をかぶり、白い金属製の短い杖を手に取ると、
「ウー、ウガンダー!」
 と叫んだ。するとベムの体中から人間のものとは思えぬ、異様な発達を遂げた筋肉がもりあがった。頭部は左右に裂けて、大脳が露出したかのように白くなって大きく膨らみ、口からは鋭い牙も伸びてきて、よだれがあふれ出す。その姿はまさに妖怪だった。
「お先に失礼します」
 ベムはタイムカードを記録器に差し込み、オフィスを出て行った。
 かつてベムは張り切って力を出すべきときに妖怪に変身していたが、人間社会に溶け込むため、仕事を離れた夜の自分の時間にだけ、妖怪の姿になることにしていたのだ。

 帰途、列車の窓に疲れた体をもたせかけ、ぼんやり夜景を眺めるベム。
 俺は一生いまの会社で働くのだろうか? それでいいのか、妖怪人間なのに? 
 これまで何百回となく繰り返されてきた想念が去来する。その想念はもはや擦り切れて薄っぺらなものになっていて、疲労してぼんやりしたベムの頭脳をほとんど刺激することなく、彼はいつしかこくりこくりと居眠っていた。

 翌日はベロの運動会。日曜ぐらい眠っていたいが、家族サービスを怠るとベラに鞭で打たれる。ソフト帽を頭にのせ、ベロの通う小学校に足を運んだ。
 ベムはカメラを構え、ベロが徒競走で走ったり綱引きする姿を、せっせと写真に収める。一般人に混じっての見物だから、もちろん人間の姿である。
「次は父兄参加によるスウェーデンリレーです」というアナウンス。
「なにぼんやりしてるのよ」とベラ。
「わかった、参加するよ」抵抗が無駄なことを知っているベムは、力なく返事した。

 禿頭に白いハチマキをさせられたベムは、お玉にのせたボールを落とさないように注意して、出発の合図を待った。
 ピストルが鳴らされ、走者いっせいにスタート。運動不足の父親たちが主な参加者だから転倒者が出るのもご愛嬌だが、妖怪の運動神経を持つベムは、足取りも軽く他の参加者をどんどん引き離していった。
 一等はいただきだと思ったベムだったが、心に隙ができたのか、ぐんぐん追い上げてくる男がいるのに気づかず、ややペースダウンした。追い上げてきたのは髪を短く刈った三十代と思しき男で、ベムに追いつくとにやりと笑った。そして足を引っ掛けてきた。ベムはたまらず転倒した。
 ベムはむらむらと怒りがこみ上げてきた。久しぶりに悪の匂いをかいだ気分だ。
「ウー、ウガンダー!」
 ベムは妖怪の姿に変身し、自分を転ばせた男を追いかけた。
 会場は異様に盛り上がった。しかし誰もベムを応援しなかった。妖怪に追いかけられる一般人を見ては、一般人のほうを応援するのが人情というものである。
 ベムが卑怯な短髪の男をとうとう捕まえ、格闘が始まった。金属のお玉で互いに殴り合いを始めたのである。会場は騒然となった。
「みなさん、落ち着いてください! 落ち着いてください!」というアナウンス。「では次のプログラムに移ります! 六年生による玉入れです」
 六年生たちが運動場の真ん中に出てきた。そこには赤と白の玉がばら撒かれている。
「よーい、始め!」
 笛の音とともに玉入れが始まった……かに見えたが、六年生たちは競技よりも妖怪人間に興味を持っていた。そして石を拾ってベムに投げ始めたのである。
「ぐぁーっ」
 ベムは石をぶつけられて苦悶の声を上げた。

「ベム、なんでみんなといざこざを起こしたんだよ!」
 運動会が終わった帰り道、ベロが詰問した。
「さ、ベロ、機嫌を直しなさい。今日はお寿司を食べに行くわよ」とベラ。
「寿司に行く金なんてないだろ」ベムが小声でベラに言った。
「今月のあなたのお小遣いを五十パーセントカットするから平気よ」ベラはキッとなって答えた。

 ベムはその晩、寝床で考えた。

 ああ、明日も会社か。もう本当に辞めてしまいたい。しかし家のローンがあと二十年近くあるしな……かつては人間になりたいと本気で望んだものだった。しかし人間は家を持たなければならないなどと、いったい誰が決めたんだ? また人間の男は、なぜ身を粉にして家族を養わなければならないのか。妖怪人間なら、下水道にでも住めばいい。そして家族には鼠でも食わせてりゃいいんだ。
 家族サービス? むかし俺たちが戦った悪霊や怪物どもが聞いたらへそが茶を沸かすぜ。
 つくづく、以前の生活に戻りたくなった。

 ああ、妖怪になりたい! 決めた。明日から失踪しよう。


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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