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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2025/04/05 (Sat) 02:29:51

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No.336
2010/09/01 (Wed) 06:39:40

蜀山書舍圖  高啓

山月蒼蒼照煙樹
碧浪湖頭放船去
隔林夜半見孤燈
知是幽人讀書處

山の月はもやのかかった樹をおぼろに照している。
碧浪の湖のほとり、舟を出すと、
ま夜中の林の向こうにぽつんと灯が見える。
それは風流人が本を読んでいる所。

(入谷仙介訳)

まだまだ暑い日が続く。自分もこの詩の風流人のように、湖のほとりに住んでひねもす読書していたいが、そういう日は長くは続かず新学期である。働かなければ。
久しぶりに教壇に立ったが、立ち仕事は疲れる。
それにしても「しごと」を変換しようとすると「詩語と」となるこのPCはなんと優雅なのだろう。叶うことならずっと詩語と戯れていたい。

今日明日は部屋で採点の仕事。ふと思いついてインドの香を焚いてみた。箱に梵字でなにか書いてあるが読めない。学生時代サンスクリット語の授業に少し出ていたが、すぐに挫折したからだ。その講義の先生はインド哲学も講じており、「われわれはサンスクリット語においては永遠に初心者です」と仰っていたのをよく覚えている。
岩波全書の『サンスクリット文法』は難解すぎて初心者には向かないから、最初はゴンダの『サンスクリット語初等文法』で学ぶべきだ、と聞いた。サンスクリットは基本的にアルファベットで学ぶが、梵字も最初から慣れ親しんでおかないといつまでも嫌いなままになってしまう、というのも通説らしい。いまサンスクリットを学び直そうという気はないけれど。

ラテン語は文法そのものは難しくないが、単語の語順の自由度が高すぎるから、文献によっては読みこなせるようになるのに非常に時間がかかると聞いた。とくに難しいのは弁論の類らしい。「弁論」という文学のジャンルは今の世の中ではあまり聞かないが、政治家や教師など人前で喋る職業の人間は、そういうものも学ぶべきなのかな、と時おり思う。アリストテレスの『弁論術』を読むとか(どんな本なのかまるで知らないが)。
というのも、数学の授業をしているとよく感じるのだが、「論理的に話す」だけでは聴き手がまったく理解してくれないことも往々にしてあるのである。論理そのものが身についていない相手に話すのだから当然のことかも知れない。そういうとき、論理によらないで相手を言いくるめる術が必要になるが、それがどういうものか自分にはいまいち分からないのだ。

その昔スプートニク・ショックがきっかけで日本でも「数学教育の現代化」が行なわれ、そのカリキュラムのもとでは中学一年から集合論を学ばせた。あまりに子供の頭脳に負担をかけるというので、その教育課程は全面的に見直しがなされたが、近頃自分は、早い段階で集合論をやるのも一理あるのではないかと思うようになった。集合は論理の基本だからだ。これが身についていない者に数学をやらせるのは、水に浮くことも覚えていない者にクロールやバタフライを教えるようなものではなかろうか。

(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
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No.335
2010/08/18 (Wed) 01:20:01

18××年、三人の科学者を乗せた気球が、人類未踏の地であった北極への探検を敢行していた。しかし極地についてみると、小さな島の上に、明らかに人工と思われる基地が建てられていた。気球が制御不能になり、探検家たちはその基地の住民によって救われた。その住民たちは実は火星人だった。北極上空に宇宙ステーションが建造されており、そこは火星地球間航路の地球駅となっていたのだ。火星人たちは男性が白髪であるほかは、おおむね地球人とそっくりだった。火星語も難しくなく、探検隊員たちは火星人たちと親交を結んだ。実は火星人は何十年も前から地球に訪問しており、第一次地球探検の隊長であったアルは、ドイツで地球人女性と結婚し、エルという子をもうけていた。やがて探検隊員ら数名の地球人が火星を訪れたが、その出発の際、英国海軍と不運な武力衝突を起こし、それが火星人が地球人を危険視する火種となった。

やがて火星は英国と戦争状態になり、容易に勝ちを収め、ヨーロッパ各国は火星の北極での主権を認めるようになる。火星人は個人の自由の尊重、平和主義を旨とする種族だったが、地球人とりわけヨーロッパ列強の好戦的態度に直面し、地球人を火星のよりよき道徳心で導こうと考え、それはやがて火星人の武力を背景とした強制的な教化になっていった。地球人の間には、火星の文化を取り入れつつもその圧制から脱しようという機運が高まっていく。

火星の女ラーと地球人探検家ザルトナーとの恋、火星人と地球人との混血児として火星の重要人物となっていくエルの苦悩などが生き生きと描かれている。火星の重力が地球の三分の一しかないことからくる両惑星人の接触の困難さは、重力調節装置によってほぼ解決される。宇宙船が超光速を実現する手段として「宇宙エーテルの爆発」を利用するというのは、アインシュタイン以前の小説としてはやむえないところか。

1897年に出版されたドイツの小説。ヴェルヌ、ウェルズ以前に発表された画期的なSF作品だが、古きよきヨーロッパの風俗も垣間見える楽しい小説。

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No.330
2010/08/05 (Thu) 14:34:50

少年野球チームIRバイアンズは、非情なコーチ岸川と、厳格な監督・一つ目モンスターの指導のもと、日々激しい練習を行なっていた。怠惰な選手はどんどん処刑され、選手たちの死に対する感覚は麻痺しつつあったが、なんとかこの体制で一カ月が過ぎ去った。選手たちはみな中学生だったが、今や彼らの顔からは少年らしい純朴さが失われ、その表情には手負いの狼のような闘争心と残忍さが宿っていた。最初三十人いたメンバーも、今では十四人。選手たちの過半数が岸川とモンスターによって殺されたことになる。しかし残った選手はえり抜きの「野球の虎」であった。
そしてモンスターが監督となって初めての試合が行なわれることになった。試合の三日前、モンスターは岸川と相談して決めた先発メンバーを発表した。
「一番・センター、愚呂(ぐろ)! 二番・セカンド、獄目鬼(ごくめき)! 三番・ファースト、火戸羅(ひどら)! 四番・サード、斬仁(ざんにん)! 五番・ライト……」
名前を呼ばれた選手も先発から外れたメンバーも、一様に不気味な笑みを浮かべ「イヒヒヒヒ」「ウケケケ……」などと奇声を発していた。

試合当日。空はどんよりと曇り、あたりにはかすかに血の匂いがただよい、野球場は不穏な空気に包まれていた。
モンスターが球場に来ると、岸川と選手たちはすでに着換えていて、スパイクの手入れをしているようだった。
「スパイクを磨いているのか。初心を忘れないのは大事なことだからな」モンスターが言うと岸川は
「いや、スパイクの刃にストリキニーネを塗ってるんですよ」
「ストリキニーネ? それは毒だろう。スパイクで相手を殺す気か?」
「え? 試合というのは仁義なき戦いですよ。試合ではスパイクにストリキニーネは常識です。な、野郎ども!」
「おす!」選手たちが応じた。
「まあ、なるべく穏やかにやってくれ……ところで手提げ金庫がベンチにおいてあるが、あれは何だ、岸川?」
「ああ、忘れていた……いや、IR鉄道というスポンサーがついている以上、こいつらはプロなんすよ。プロのやる気を引き出すには、何をおいても実弾です」そういうと岸川は金庫をあけ、中から札束を次々に取り出し、ベンチの奥に積んでいった。
「球場で金をやることはないだろう?」
「え? ヒットを打ったり三振を取ったりするたびに選手に金をやるんすよ……これぐらい常識です。監督、大丈夫ですか?」
「……知らなかった。少年野球の『やる気』は現金に支えられてるんだな」
「当然ですよ」

さて試合が始まると、岸川は宣言したとおり、選手がヒットを打つと即十万円、ピッチャーがピンチを抑えると即三十万円、といった具合に惜しげなく現金を渡していった。しかし怠慢プレーに対しては相変わらず厳しく対応し、エラーをしたショートの選手はベンチに戻ってくる前に岸川によって射殺された。
試合は、互いに点が入らない投手戦になった。六回を終って0対0。岸川は、七回表の攻撃に入ると、具体的な指示を選手に与え始めた。
「いいか、初球はカーブを狙え。それ以後ツーストライクまでは真っ直ぐ一本に絞るんだ」
すると一番・愚呂はみごとに初球のカーブを叩き、センター前のクリーンヒット。
二番・獄目鬼は送りバントをしたが、それが相手の野選とエラーを誘い、ランナー一・三塁となった。
「よし、ツーストライクまでは真っ直ぐ一本に絞っていい。追い込まれたら外角球の見極めに気をつけろ。今日のストライクゾーンは外に広いからな」
すると三番・火戸羅は走者一掃のタイムリー・ツーベースを放ち、バイアンズは2対0と勝ち越しに成功した。
しかし四番・斬仁は初球で頭部にデッドボールを受け、血の気の多いバイアンズの選手たちはグラウンドになだれこんだ。すわ乱闘かと思われたそのとき、監督のモンスターが
「引け、野郎ども! すぐベンチに戻らんと内臓を引きずり出すぞ!」と一喝、すると選手たちは冷や水を浴びたように動きを止め、ベンチに戻ってきた。しかしコーチの岸川は監督の意思を無視して愛用のコルト・バイソンを発砲し、相手チームのピッチャーの脳天を撃ちぬいた。
ピッチャー交代、次のバイアンズのバッターは五番・鹿羽根(しかばね)。相手投手はマウンドに散らばる前のピッチャーの脳味噌を見て、明らかに動揺していた。
「いいか、前のピッチャーがぶち殺されたんだ、絶対に内角には来ない。外一本で絞っていけ」
五番・鹿羽根は、力のない外角の直球を狙い打ちし、打球はぐんぐん伸びてライト・スタンドに吸い込まれていった。ホームランだ! 鹿羽根は斬仁に続いて、ゆっくりダイアモンドを一周し、ホームに戻ってきた。岸川は彼に「よくやった! 貴様には一千万円だ!」と言って札束をどんと手渡した。
鹿羽根のツーランで4対0となり、試合はそのままのスコアでゲーム・セットとなった。
試合を一人で投げきり、みごとに完封したバイアンズのピッチャー・剃度場(ぞるどば)には現金二億円が贈られた。
「いやー、本当に勝って良かったっす」試合後、岸川は笑顔でモンスターに話しかけた。
「いや、たしかに良かったな。ただ金を使いすぎた気がしないでもないが……」
「まあ、うちは親方日の丸みたいなもんすからね。心配ないですよ」
「しかし中学生に二億円だぞ。人生狂っちまうんじゃないのか?」
「剃度場ですか? まぁもともとクルクルパーですが、まんいち頭がおかしくなったらすぐぶち殺しますんで」
「お前は楽観的だな。俺はどうもこのチームの行くすえが恐ろしいよ」

そう、まだまだ楽観は許されない。IRバイアンズはきょう船出したばかりなのだ。
真っ赤に煮えたぎる血の海を航海するごとく、モンスターとバイアンズの行く先々には危険が待ちうけ、不安の暗雲が大きくたれこめていたのである。

(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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