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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2025/04/19 (Sat) 05:35:45

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No.285
2010/04/18 (Sun) 20:48:48

エミール・ギレリス晩年のベートーヴェンのアルバム「テンペスト、ワルトシュタイン、告別」また「悲愴、月光、熱情」を最近聴いて、これはとても良かった。遅いところも速いところも、ピアニスト自身の言葉で語りかけてくるようである。ギレリスによる「ハンマークラヴィーア」のアルバムも購入したが、これは音楽自体がよく判らないから何とも言いようがない。

今日は音楽を聴いてぼんやり過ごしていた。ブラームスのピアノ三重奏などもじっくり聴いてみると良い曲だな。ブラームスにはピアノ四重奏曲、ピアノ五重奏曲、弦楽五重奏曲など室内楽の名曲が多いが、どれぐらい聴かれているのだろう。

モーツァルトのディヴェルティメント17番ニ長調K.334をウィーン八重奏団員の演奏で聴く。この曲は何度聴いても飽きない。レナー四重奏団らによる古風な演奏も好きだ。これを弦楽合奏でやるのは邪道だ、と誰かが書いていたが、そんなこともないと思う。カラヤンによる弦楽合奏版はレガート奏法がマッチしてなかなかいい線いっていると思う。

モーツァルトのピアノ・ソナタは、僕はフリードリヒ・グルダによる演奏を最も好む。彼のピアノの音はなんとコロコロと耳に心地よいことか。この人はごく微妙なテンポの崩し方をし、モーツァルトでは一様でないトリルを聴かせ、それが洗練されたユーモアを感じさせる(自分が所持しているのはamadeoのK.331, K.333, K.545, K485 が収められたアルバム)。

あと今日はトスカニーニ指揮によるショスタコーヴィチ「交響曲第七番」を聴く。冷戦下、ソ連から楽譜をマイクロフィルムにしてアメリカに持ち込んだとかいうもの。アメリカ初演だそうだが、もうトスカニーニ節になってしまっているのが凄い。


(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
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No.284
2010/04/18 (Sun) 16:53:26

「おい、ケンカがすんだあとあのモンスターを殺しちまえば、まるまる二十五億儲かるんだがねえ」と丑寅院長の妻・兼子がひそひそ声で言った。
「おふくろ、そりゃひでえや」と息子の与一兵衛が言った。
「馬鹿、盗っ人人殺しと言われるようじゃなきゃ顔が立たないんだよ」
「おっかあの言うとおりだ」丑寅院長がいった。
その親子の会話を、モンスターは陰で立ち聞きしていた。

「よし、これからモンスターの旦那を先頭にして熊沢病院に殴り込みだ!」
「おー!!」丑寅病院の若い者、つまり大部分は患者だが、威勢よく応じた。
熊沢病院からも、院長はじめ若い者たちが大勢繰り出してきた。
「おっと、小柳の先生が見あたらねえな」
「あの先生は逃げたぜ。救急車を盗んでトンズラだ」とモンスターが言った。続けて銀のアタッシュケースを放り投げ「悪いが俺は抜けさせてもらうぜ。ケンカに勝った後に殺されちゃ元も子もないものな」 
「こいつ、怖気が振るったんだよ」と兼子が言うのを無視してモンスターは
「おーい、熊沢の! 俺は腹に据えかねることがあって丑寅病院とは手を切った!」と言って火の見やぐらに登って、熊沢と丑寅のケンカを高みの見物と洒落こんだ。

そのときである。熊沢病院から白衣を着た若い医師がすっとんで出てきて叫んだ。
「大変だ! 地下倉庫のタンクに貯蔵していたトライオキシン235が漏れ出したぞ!」
「なんだと!?」と熊沢院長はじめ医師たちはうろたえた。
まもなく、全身無毛の黄色味がかった奇妙な人間たちが四五人、病院から飛び出してきた。その者たちは敵味方の区別なく襲い掛かり、頭にかじりついた。
「熊沢の! それは陸軍が開発した薬品だろ? 死者を生き返らせるという」と丑寅院長。
「そうだ! このゾンビどもを退治するには全身バラバラにするか、焼却炉で焼くしかない!」
「ひとまず休戦しよう!」
「おう、分かった!」

「ちくしょう、ゾンビどもが俺の筋書きを書き換えやがった」モンスターはそう呟いてやぐらから降り、そしてなじみのうどん屋に入っていった。
うどん屋のおやじ・権じい(ごんじい)はニコニコしてモンスターを出迎えた。
「よ、来たな。せっかくのケンカも休戦になったことだし、めでてえめでてえ」
「馬鹿やろ! 表を見ろ。ゾンビどもがウロチョロしてるだろうが。バクチ打ちの手打ちとゾンビぐらい怖いものはねえんだぞ」
「おい、そこの若いの」と、奥の席でうどんをすすっていた男が言った。
「俺のことか?」とモンスター。
「そうだ。さしものモンスターもゾンビにはかなわないと見えるな」その男は髭をぼうぼうに生やした五十がらみの男だった。
「お前は誰だ?」
「俺の名は熊谷谷谷(くまがや・やつや)。またの名をゾンビー・ハンター。見てろ」
熊谷はそう言って窓を開け、いきなりライフルを発射した。散弾銃だ! 無数の弾丸が一人のゾンビの体のあちこちに命中したと見え、あっという間に体がバラバラになってしまった。
「モンスター、俺の弟子にならないか。ゾンビとの戦い方をみっちりしこんでやる」
「余計なことだ、俺はあくまで一匹狼だ」
しばらくするとうどん屋に、若い血色の悪い男が幼児を連れて入ってきた。「おやじ、邪魔するよ」
「よう、伝次郎じゃないか」と権じい。
「俺よぉ、ゾンビに女房を寝取られちまった。へへ、笑ってくれや」
「相手がゾンビじゃなあ……なまじ別嬪な女房をもらうからそういう目に合うんだ。どこで寝泊りしてるんだ?」
「自分の家の隣で野宿さ。女房に触るとゾンビに殴られるからな。まあ殴られつけて、もう慣れちまったが」
モンスターは伝次郎を横目にするめをかじって吐き捨てるように言った。「俺はああいうやつは好かねえ。……よう、腹を決めたぜ。熊谷のおっさん。俺はあんたに弟子入りする。ゾンビとの戦い方をぜひ教えてもらいたい」
モンスターは熊谷谷谷とがっちり握手を交わした。
そのとき、一発の銃声が外から鳴り響いてきた。「熊沢の卯之介が帰ってきたぞ! からっ風もお出迎えだ!」


(つづく)

(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
No.283
2010/04/18 (Sun) 12:14:06

未来世界。世界は、保守的なリー(リアリストの略)と、現実的なものすべてを否定するヴァイクの二つの政治勢力に分かれ、二つの派が互いにしのぎを削っている。主人公のヴァン・ブラントはヴァイク派文学の版権代理会社(作家の利益を代表して出版社と交渉するマネージャー業)を営んでいる。彼やその身の周りにいる秘書、ヴァイク派の作家たちは、すべて典型的なヴァイク的生活を送っている。すなわち、日常的な麻薬の摂取(セックスより麻薬の刺激をよしとする)、過度に皮膚を露出した服装、高度なヴァーチャル・リアリティによる映画(センソー映画)への耽溺。リーたちはそれに反し、快楽に背をむけ、基本的に禁酒・禁煙、肌を隠す服装をし、現実に目を向けた文学を標榜していた。ヴァン・ブラントとリーの代表格であるディノ・ペラジとの対決を軸に物語は進んでいく。

ヴァイク派の不健康な日常、リーたちの懊悩が、迫力を持って描かれている。

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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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