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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2025/04/19 (Sat) 20:49:52

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No.256
2010/03/24 (Wed) 08:07:05

エドガー・アラン・ポオの「鐘楼の悪魔」という短編小説(野崎孝訳)の最初に

何時かしら? 古諺

と記されているのだが、これが何故ことわざたりえるのかどうしても分からない。この古諺が何を伝えているのか、ご存知のかたがいらっしゃったら教えてください。

ポオといえば彼の「ハンス・プファアルの無類の冒険」という小説で、気球に乗って月に行く話があった。それが書かれた当時月が真空の宇宙にあるということが知られていなかったのか、あるいはポオは意図的に事実を無視したのかも知れない。さて気球に乗ってぐんぐん空を上昇していくと、気圧が下がり乗組員が苦しみだす。体の内部からの圧力と外部からの圧力のバランスが取れていないから苦しむので、腕をナイフで切って瀉血(しゃけつ)、すなわち血を捨てることで健康を保つのである。ちょっと苦しくなったら瀉血と、ジャンジャン血を捨てていくからこの人たち大丈夫かと思うのだが、最後まで病気になったりしない。

瀉血が低気圧に有効なら、逆に人が深海に潜るとき、どんどん輸血すればいいのかも知れないがそんな話は聞いたことがない。やはり血管が破裂するなど体に害が及ぶのだろうか。
コレステロールが体にたまると、血管の壁が肥大して血の通り道が狭くなり、それが成人病の元になるのだという。それでは逆に貧血に悩んでいる人は、コレステロールをどんどん摂取して血管の壁を肥大させれば、体中に血が行きわたって良いのではないか。しかしそんな健康法も聞いたことがないから、これも間違った考えかも知れない。

僕は近眼である。近眼の人は老眼になればちょうど良い視力になるのではないか、という考えがあるが、それもどうも間違いらしい。老眼は「ちょうど良いところで止まってくれない」のが問題なのだという。
近眼も老眼も、視力の使いすぎから来るのだろうか。だとしたら、これから何年か片目をつぶって過ごし、片方の目の視力を温存しようか、などという考えも浮かぶ。落語のマクラに、それを実践した者が何年かぶりに一方の眼を開いてみると、知っている者が誰もいなくなっていた、というのがあった。右目で見ている世界と左目で見ている世界が実は別個のものだったということだ。

いつも右肩に重い荷物を下げて歩いていると、荷物を降ろしたとき右肩が左肩より上にくるようになる。生き物の体は左右対称が基本だが、アシンメトリーなところに注目するとちょっと面白い。ある美しい女性の顔がいつもは左右対称に見えるのに、その人の虚をついて話しかけたとき、顔のなかでの眼の位置の高さが左右で全然違っているのに驚いたことがある。そういえばヒラメやカレイの眼の位置が片方に寄っている原因が遺伝子レベルで解明された、というニュースが最近あったっけ。

生物の体は通常左右対称なものである、という考えは一般的だから、これからの空想の怪物は、左右非対称なものを考えるといいのかも知れない。これまでにもあるのかな。たとえばマジンガーZのアシュラ男爵は体の左右で性別が違うのだった。スタートレック(TOS)のエピソードに、ある惑星の種族が二つに分かれ、一方が他方を抑圧し支配していたが、そこの種族はみな顔の片側が真っ白、片側が真っ黒なのだった。「支配民族と被支配民族では肉体的にはなんら差異は見あたらないようですが」とミスター・スポックが尋ねると、支配民族は怒って「よく見ろ、われわれは右が白で左が黒、奴隷民族は右が黒で左が白だ!」という。人種差別に対する傑作なアイロニーだ。ところでタレントの安めぐみが、クイズで「半魚人を描いてください」と言われ、ボードに左半分が人間で右半分が魚、というぶっとんだ生物を描いていた。彼女はすごいセンスの持ち主だと思う。


(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
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No.255
2010/03/16 (Tue) 00:44:20

男からもらった花束は、とてもよい香りがする。
なんて名前だったかしら?とにかくとても綺麗な深紅。

放っておけば枯れてしぼんでしまうでしょう。
さりとて、活けて飾るには多すぎる。

だから、花びらを千切ってバスタブに浮かべた。
湯気で香りがむせ返る。
衣服を脱いで髪をまとめると、足の先をほんの少し、湯の中につけてみた。
適温。
身を清めて今度は肩まで、心地よい暖かさに身体を沈める。

男の顔すら、もう、忘れた。

その程度の出会いだったのだと思い直し、今、この時間のほうがよっぽど重要だわ、とひとりごちる。

そう。多分、私は孤独が好きなのだと思う。


知り合いの映像作家に、ショートムービーの主役を演じて欲しいと頼まれたとき、
感電したような感覚に襲われた。
監督である彼の作品が好きだった。
作品の力強さと繊細さが、彼の腕が本物であるということを物語っていた。
それでも、どこかで必然だと自惚れた。
「孤独な女性を撮りたいんだ」
「ええ、出来ると思うわ」
それなら、得意だわ。


清濁合わせた混沌を醜さとし
その醜い土を糧として
美しさは生まれる
その美しい花を咲かせる

孤独を胸の内に秘め。


牢獄のようなロケーションで、黒い服を身にまとった私は、
この短いセリフをとつとつと呟くだけでよかった。
あまりの簡単さに、拍子抜けした。
充実感はなかったものの、この経験は私に自信をつけた。


「なんか、違うんだよねぇ。。。」
監督の声はいつもどおりだった。ただ、その一言は重かった。
不安にざわめくスタッフの声を無視して、監督は何度も映像を再生紙、画面を凝視し続けた。
そのとき、自分が原因だとは、夢にも思わなかった。
「やっぱり、撮りなおそう」
監督はそう口に出してしまうと、スタッフにきびきびと指示を入れだした。ただ、一向に撮影が始まる気配はなかった。

君ね、と監督は私の方を向いて言った。
「綺麗だと思ったんだけど、ここは孤独がわかっている子じゃないとだめなんだ。だから、今回はもういいよ。別の子を探すことにする」
そう言うと監督は現場へと戻っていった。
否、正しくは、私が現場から隔絶されたのだ。

酷く、腹が立った。
自分が無くなるくらいに怒りで一杯になると、
今までにないくらいの大声で監督を怒鳴りつけていた。
早口でまくし立て、しまいには悔しさのあまり涙が出た。
そんな私を、彼は醒めた目で見ていた。
感情の起伏が収まるのを見計らって、彼は溜息をついた。
「じゃあ三日だけ待とう。その間に、君に僕の撮りたいものが解ったら、君を採用する。三日間じっくり考えてみて」


三日の間、部屋にひとりきりで閉じこもって考えた。
彼の言う孤独とは何だろう。
私の思うところの孤独と言うのは、孤独でなければ何だというのだろう。
彼の思うところの孤独と、私の思う孤独との違いは何なのだろう。
そもそも、孤独って何?

時間はすぐに消費され、精神的に疲弊したまま、また同じカメラの前に立つこととなった。


結果から言うと、彼は上機嫌だった。
映像は採用されたけど、その理由は解らなかった。
そう彼に伝えると、彼は出来上がったショートムービーを見せてくれた。
そこには、私と同じセリフを吐く、私とよく似た女が映っていた。
自分だと解っていても、
映像の中の私は所在無い風で、頼りなく肩を揺らし、不安に負けそうな目でこちらを見つめていたので、戸惑った。
そんな顔をした自分を、見たことも想像したこともなかった。

隣で監督が囁く。
「考えた?」
少しむっとする。
「できるだけのことは」

「おかげさまで、いい映像が出来たよ」
「そう、それはよかったわね」

「悪い部分がいい具合に削げたね」
「・・・わからないわ。私はただ考えただけだもの。答えなんか見つからなかった」
「でも、自分と向き合えたろう?」
「悪い部分しか見えなかったわ。一人で悶々と苦しんで。馬鹿みたい」

彼は子供じみた笑い方をした。
「孤独なんざ、そういうもんだろ」


                                      end.

(c) 2010 chugokusarunashi, all rights reserved.
No.254
2010/03/15 (Mon) 05:04:12

読心術と透視術が、生まれつきの能力として、日常生活に用いられるようになった時代の話。ただし読心術と透視術の両方を身につけることはできないという設定である。
主人公のスティーブ・コーネルは、婚約者のキャサリンを隣に乗せていた車が事故に遭い、大怪我を負う。かつぎこまれた病院で意識を取り戻した彼は、キャサリンについて医師や看護婦に尋ねるが、誰もがそんな女性は事故現場にいなかったと言う。警察に問い合わせても答えは同じ。スティーブは独自に調査を開始する。しかし出会った人間が次々と行方不明になり、謎は深まるばかり。失踪した人物の一人が、皮膚が異常に硬化する難病「メクストローム病」に犯されていたことを聞かされて以来、彼の周りにその病気の患者が次々と出没するようになる。やがて彼は、特殊な道路標識をたどることにより、メクストローム病患者の秘密結社が存在することを探り出す。実はメクストローム病患者は、適切な治療を受ければ不死身の肉体を手に入れることができ、スティーブはその数少ない媒介者(病原菌を他人にうつすことができる者)だったのだ。

後半になると真相が次々と明らかになり、なるほどと膝を打つところが多くなるが、そこまでは話がどこに突き進んでいるのかちょっと分かりづらい。また主人公の懊悩が作品全体に憂鬱な雰囲気をかもし出している。


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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