『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.172
2010/01/05 (Tue) 00:05:16
清の張惠言という人の編、中田勇次郎という人の訳による『詞選』(麗澤社編集、弘文堂刊行)という本をだいぶ前に古書で買った。悲恋の詞が多く続けて読むのはしんどいけれど、訳の日本語が美しい。気に入ったものを二つばかり。
菩薩蠻 李白
平林漠漠烟如織
寒山一帶傷心碧
瞑色入高樓
有人樓上愁
玉階空竚立
宿鳥歸飛急
何處是歸程
長亭更短亭
ひろのの林はてもなく霞をこめて織る如く
寒き山々おしなべて心かなしきあさみどり
ゆふやみのいろ高樓(たかどの)にせまり
うきわれひとり樓上にあり
むなしくも玉の階(はし)にぞたたずめば
鳥はねぐらにいそぎゆく
きみがかへりぢいづかたぞ
長亭や短亭のみちはるけくも
生査子 牛希濟
春山烟欲收
天淡稀星少
殘月臉邊明
別涙臨淸曉
語已多
情未了
回首猶重道
記得綠羅裙
處處憐芳草
春山にかかりし雲の收まりそめて
そらあはく星まばらなり
ありあけの月明かりさす枕のほとり
しののめのあかぬわかれに涙こぼるる
かたりつくせど
こころはつきず
かへりみてなほかさねてぞいふ
忘れめやもえぎのきぬのもすそをひきて
ところどころの春草にあはれかけしを
不勉強にして知らなかったが、中田勇次郎という人は漢文学・書道史の研究で著名な人物とのこと。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E7%94%B0%E5%8B%87%E6%AC%A1%E9%83%8E
(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
菩薩蠻 李白
平林漠漠烟如織
寒山一帶傷心碧
瞑色入高樓
有人樓上愁
玉階空竚立
宿鳥歸飛急
何處是歸程
長亭更短亭
ひろのの林はてもなく霞をこめて織る如く
寒き山々おしなべて心かなしきあさみどり
ゆふやみのいろ高樓(たかどの)にせまり
うきわれひとり樓上にあり
むなしくも玉の階(はし)にぞたたずめば
鳥はねぐらにいそぎゆく
きみがかへりぢいづかたぞ
長亭や短亭のみちはるけくも
生査子 牛希濟
春山烟欲收
天淡稀星少
殘月臉邊明
別涙臨淸曉
語已多
情未了
回首猶重道
記得綠羅裙
處處憐芳草
春山にかかりし雲の收まりそめて
そらあはく星まばらなり
ありあけの月明かりさす枕のほとり
しののめのあかぬわかれに涙こぼるる
かたりつくせど
こころはつきず
かへりみてなほかさねてぞいふ
忘れめやもえぎのきぬのもすそをひきて
ところどころの春草にあはれかけしを
不勉強にして知らなかったが、中田勇次郎という人は漢文学・書道史の研究で著名な人物とのこと。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E7%94%B0%E5%8B%87%E6%AC%A1%E9%83%8E
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No.171
2010/01/04 (Mon) 15:21:33
大阪は今日は天気がよく、昨日おとといと見られなかった野良猫が街をうろついている。気温も高いのだろう。
僕は年末年始の休みはずっと冬眠状態に近いぐらいによく眠っていた。
「人類SOS トリフィドの日」という1962年の映画を観た。原作が好きで、忠実に映像化するとかなり長くなるはずだが、うまく端折ってあって観やすかった。人類のほとんどが流星群を見たがために失明してしまい、トリフィドという肉食で動き回る植物に襲われるという話。本来トリフィドは良質の植物油を採るために栽培され、毒をもったムチはふだん剪定されているという設定だったが、映画では単に「隕石に乗ってやってきた肉食植物」ということになっていた。原作では、人類がほとんど盲目になったときどんな社会が築かれるか、という社会科学的興味(?)も濃かったが、映画でそれがカットされるのは仕方がないと思う。
むかし関西で年末年始に必ず放映されていた映画「大陸横断超特急」のDVDを観る。何度観てもテンポが良くて面白い。広川太一郎節を楽しむDVDでもあると思う。まだご覧になっていない方は是非。
時代劇の殺陣で、刀で人を斬るときの音について姉と議論した。たしか市川右太衛門などの古い時代劇では、人を斬るときの音はほとんど入っていなかったように思う。黒澤明の時代劇などでは、今よりずっと地味だがそれらしい音が入っていた。では人を斬るとき本当はどういう音がするのだろう。きっと今の時代劇のような派手な「グサーッ」という音ではないと思う。よく切れる刀でうまく斬れば音はほとんどしないかも知れない。
しかし時代劇の殺陣で、本当にリアルなものを追求するのには限度があると思う。まず本当の斬り合いになれば血しぶきが出るはずだ。これは一部の映画では実現されている。あと人間は斬られてすぐ死ぬとは限らないから、しばらく激痛にうめいている手負いの者が画面に映るのが自然だろう。それから手が切り落とされるシーンはときどき時代劇で見るが、残酷なシーンはそれだけではないはずだ。袴というのは前の紐を後ろで交差させて、前で少し下の方で交差させ、再び後ろに持っていって結ぶ。それは一つには腹を斬られたとき、袴の上部をずり上げて傷を覆い、内臓が出てこないようにするためである。だから実際の戦闘になったら、腹を斬られて腸が飛び出し、それを必死に腹の中に戻して袴をずり上げ、再び斬り合いにのぞむ武士もいると思う。それはさすがに映画でも描けないのではないか。
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僕は年末年始の休みはずっと冬眠状態に近いぐらいによく眠っていた。
「人類SOS トリフィドの日」という1962年の映画を観た。原作が好きで、忠実に映像化するとかなり長くなるはずだが、うまく端折ってあって観やすかった。人類のほとんどが流星群を見たがために失明してしまい、トリフィドという肉食で動き回る植物に襲われるという話。本来トリフィドは良質の植物油を採るために栽培され、毒をもったムチはふだん剪定されているという設定だったが、映画では単に「隕石に乗ってやってきた肉食植物」ということになっていた。原作では、人類がほとんど盲目になったときどんな社会が築かれるか、という社会科学的興味(?)も濃かったが、映画でそれがカットされるのは仕方がないと思う。
むかし関西で年末年始に必ず放映されていた映画「大陸横断超特急」のDVDを観る。何度観てもテンポが良くて面白い。広川太一郎節を楽しむDVDでもあると思う。まだご覧になっていない方は是非。
時代劇の殺陣で、刀で人を斬るときの音について姉と議論した。たしか市川右太衛門などの古い時代劇では、人を斬るときの音はほとんど入っていなかったように思う。黒澤明の時代劇などでは、今よりずっと地味だがそれらしい音が入っていた。では人を斬るとき本当はどういう音がするのだろう。きっと今の時代劇のような派手な「グサーッ」という音ではないと思う。よく切れる刀でうまく斬れば音はほとんどしないかも知れない。
しかし時代劇の殺陣で、本当にリアルなものを追求するのには限度があると思う。まず本当の斬り合いになれば血しぶきが出るはずだ。これは一部の映画では実現されている。あと人間は斬られてすぐ死ぬとは限らないから、しばらく激痛にうめいている手負いの者が画面に映るのが自然だろう。それから手が切り落とされるシーンはときどき時代劇で見るが、残酷なシーンはそれだけではないはずだ。袴というのは前の紐を後ろで交差させて、前で少し下の方で交差させ、再び後ろに持っていって結ぶ。それは一つには腹を斬られたとき、袴の上部をずり上げて傷を覆い、内臓が出てこないようにするためである。だから実際の戦闘になったら、腹を斬られて腸が飛び出し、それを必死に腹の中に戻して袴をずり上げ、再び斬り合いにのぞむ武士もいると思う。それはさすがに映画でも描けないのではないか。
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No.168
2009/12/27 (Sun) 17:35:56
題名に意味はないし、もちろん金髪美女の奴隷になりたいわけでもない。
学校が冬休みになって、期末試験で燃え尽きたのか、頭の中がカラッポになったような気がする。
■アルバン・ベルク四重奏団らによるドヴォルザーク、シューマンのピアノ五重奏曲を聴いた。実はABQはあまり好きでなく、だからそんなに多く聴いてきていないが、ピアノが加わるとどうかしらと思い買ってきた。やっぱり好きじゃない。彼らの弦の音は、僕には頭に突き刺さってくるような不快感がある。技術は高いのか知らないが、その高度な技術でいやな音を鳴らしてどうする。しかしABQは人気があるから、こういう感想を抱くのはきっと少数派なのだろう。
昨日はじめて聴いたジャズで、マッコイ・タイナーの「タイム・フォー・タイナー」というアルバムが気に入った。ボビー・ハッチャーソン(vib)、タイナー(p)、ハービー・ルイス(b)、フレディ・ウェイツ(ds)というMJQと同じ楽器編成だが、聴こえてくる音楽はMJQとはまるで違う。タイナーのピアノが奏でるメロディはジョン・ルイスよりずっと現代的。というかジョン・ルイスのシンプルな音作りのほうがジャズの世界では珍しいのかも知れない。上述のアルバムでのタイナーのピアノは、音がとんがっていて小気味よい。彼の有名なアルバム「バラードとブルースの夜」は僕には面白くなかった。あそこではまずピアノの音が鈍かったような気がする。
「スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス」というアルバムも聴いた。ビル・エヴァンスが苦手というジャズ・ファンに僕は会ったことがない。ところが僕はエヴァンスが苦手なのである。彼のやる即興には、しばしば狭いところに無理に何かを押し込もうとするかのような息苦しさを感じる。
「リリカル」と形容される繊細なタッチも、神経質な感じがするだけであまり琴線に触れない。代表作とされる「ワルツ・フォー・デビー」ですら僕にはつまらなかった。自分のようなジャズ・ファンはかなり珍しいと思う。しかしピアノ・トリオという形式を最も得意にしたエヴァンスだが、そこに他の楽器が加わったときのエヴァンスは僕はけっこう好きなのである。ヴィブラフォンのデイブ・パイクと共演した「パイクス・ピーク」、フルーティストのジェレミー・スタイグと組んだ「ウィズ・ジェレミー・スタイグ」など。そこでは共演者の目立つ音と、エヴァンスのピアノの陰鬱さとでいいバランスが出来ているように感じる(ジャズを聴かない人に断っておくけれど、これはかなり珍しい意見だと思う)。で、ゲッツと共演したこのアルバムだが、ゲッツはこの出来に満足できず発表する意思はなかったらしい。しかし聴いた感じ、歴史に残る名演とまではいえなくても、エヴァンスとゲッツの個性がよく出ていて楽しめ、いいアルバムだと思った。
■E・R・バローズの小説を古書でまとめ買いして、火星シリーズをいくつか読んだけれど、あまり趣味の良い作家ではないような感じもしてきて、どうも「むさぼり読む」とはいかない。主人公はじめ人物の性格がどれも単純で、趣味が悪いというよりは「趣味がない」という感じがする。冒険活劇で子どもにすすめるとしたら、こっちよりH・R・ハガードのほうが断然良いと思う。
(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
学校が冬休みになって、期末試験で燃え尽きたのか、頭の中がカラッポになったような気がする。
■アルバン・ベルク四重奏団らによるドヴォルザーク、シューマンのピアノ五重奏曲を聴いた。実はABQはあまり好きでなく、だからそんなに多く聴いてきていないが、ピアノが加わるとどうかしらと思い買ってきた。やっぱり好きじゃない。彼らの弦の音は、僕には頭に突き刺さってくるような不快感がある。技術は高いのか知らないが、その高度な技術でいやな音を鳴らしてどうする。しかしABQは人気があるから、こういう感想を抱くのはきっと少数派なのだろう。
昨日はじめて聴いたジャズで、マッコイ・タイナーの「タイム・フォー・タイナー」というアルバムが気に入った。ボビー・ハッチャーソン(vib)、タイナー(p)、ハービー・ルイス(b)、フレディ・ウェイツ(ds)というMJQと同じ楽器編成だが、聴こえてくる音楽はMJQとはまるで違う。タイナーのピアノが奏でるメロディはジョン・ルイスよりずっと現代的。というかジョン・ルイスのシンプルな音作りのほうがジャズの世界では珍しいのかも知れない。上述のアルバムでのタイナーのピアノは、音がとんがっていて小気味よい。彼の有名なアルバム「バラードとブルースの夜」は僕には面白くなかった。あそこではまずピアノの音が鈍かったような気がする。
「スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス」というアルバムも聴いた。ビル・エヴァンスが苦手というジャズ・ファンに僕は会ったことがない。ところが僕はエヴァンスが苦手なのである。彼のやる即興には、しばしば狭いところに無理に何かを押し込もうとするかのような息苦しさを感じる。
「リリカル」と形容される繊細なタッチも、神経質な感じがするだけであまり琴線に触れない。代表作とされる「ワルツ・フォー・デビー」ですら僕にはつまらなかった。自分のようなジャズ・ファンはかなり珍しいと思う。しかしピアノ・トリオという形式を最も得意にしたエヴァンスだが、そこに他の楽器が加わったときのエヴァンスは僕はけっこう好きなのである。ヴィブラフォンのデイブ・パイクと共演した「パイクス・ピーク」、フルーティストのジェレミー・スタイグと組んだ「ウィズ・ジェレミー・スタイグ」など。そこでは共演者の目立つ音と、エヴァンスのピアノの陰鬱さとでいいバランスが出来ているように感じる(ジャズを聴かない人に断っておくけれど、これはかなり珍しい意見だと思う)。で、ゲッツと共演したこのアルバムだが、ゲッツはこの出来に満足できず発表する意思はなかったらしい。しかし聴いた感じ、歴史に残る名演とまではいえなくても、エヴァンスとゲッツの個性がよく出ていて楽しめ、いいアルバムだと思った。
■E・R・バローズの小説を古書でまとめ買いして、火星シリーズをいくつか読んだけれど、あまり趣味の良い作家ではないような感じもしてきて、どうも「むさぼり読む」とはいかない。主人公はじめ人物の性格がどれも単純で、趣味が悪いというよりは「趣味がない」という感じがする。冒険活劇で子どもにすすめるとしたら、こっちよりH・R・ハガードのほうが断然良いと思う。
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目次
上段の『☆ 索引』、及び、下段の『☯ 作家別索引』からどうぞ。本や雑誌をパラパラめくる感覚で、読みたい記事へと素早くアクセスする事が出来ます。
執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 ブログ引っ越しました。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 ブログ引っ越しました。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
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