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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/21 (Thu) 17:52:43

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No.103
2009/10/20 (Tue) 21:05:31



題名は忘れてしまったがフレドリック・ブラウンの短編に、無人島に漂流した詩人の話があった。絶海の孤島で助かる見込みとてないが時間はたっぷりとあり、詩人は畢生の大作をものしようと意を決した。かなりの年月を経て、長編の詩が一応の完成を見たが、だからといって故国から助けが来るわけでもない。詩人はそれからの長い時間、詩をより完璧な作品にすべく無駄な部分を削る作業についやした。より本質的な言葉だけを残そうという強い意志をつらぬき、大部の作品がやがてわずか八行の詩に短縮され、さらに何年もかけて四行の詩になり、ついにはたったの一行の句になった。ようやくその孤島の近くに船が通りかかり救出されることになった詩人は、しかしもうほとんど発狂していた。彼はそのとき、残った一行の句をさらにたったの一語につづめ、その一語だけを叫び続け、死ぬまで他の言葉はいっさい口にしなかったという。
この語り手に対し聞き手は、だったら何故詩人が大作をその一語に凝縮したことが分かったのか、と当然の疑問を投げかけていたが、その説明がどうだったか覚えていない。
文章を作る際も、無駄な部分を容赦なく削ることで完成度を上げるという方法があるだろうけど、何が最も言いたいことなのか明瞭にしないとそれは難しい。
さて休日で何か書こうと思ったものの頭に浮かぶのは脈絡のない妄言ばかりで、無駄な部分を削っていくと結局何も残らないということになりそうである。

対義語というものを新たに考えてみることがある。冗談めいたところでは、蟻地獄があるなら蟻天国もあってよいはずだがそれはどんなものだろうとか、ボケ老人がいるならツッコミ老人もいるはずだとか、いやツッコミ老人というのは上岡竜太郎の話していたことだしボケという言葉もいまや認知症と改められているから、そんなことを考えてもしょうがないが、プラス思考とマイナス思考があるなら「ゼロ思考」があるだろう、と思うのである。
コップに水が半分入っているとき、まだ半分あると考えるのがプラス思考で、もう半分しかないと思うのがマイナス思考とよく言われるが、ゼロ思考ではそれを見てただ「水が半分ある」と思うだけで価値判断は与えないのである。あえてプラスに捉えてもマイナスに考えてもどうにも事態が好転しないときには、事実をそのまま受け止めるしかない。きっとどんな仕事でもプロになると、窮地に陥ったときそうした冷静なゼロ思考をするものではなかろうか。落ち込んでも事態がよくなるわけでもなし、もし駄目だった場合は善後策を考える必要があるからあえてプラス方向にも考えない。僕はなかなか窮地でこの頼りがいのある思考方法ができないのだが。

写真はジャズのアルバムで、左がエロール・ガーナーの「ミスティ」、右が「ディジー・ガレスピー・アット・ニューポート」。どちらも有名で、今さらかも知れないが最近初めて聴いてとても気に入った。「ミスティ」はピアノ・トリオ作品で、このエロール・ガーナーという人のピアノはとても「とんがった」音と輝くような音色で、ジャズに馴染みのない人でも思わず耳をそばだててしまうような力があるのではなかろうか。
「ディジー・ガレスピー・アット・ニューポート」はビッグ・バンド作品で、おそろしく陽気で勢いがあって、勢い余ってアンサンブルが乱れているようだが、それがたまらない魅力。デューク・エリントンやカウント・ベイシーの、完成度の高い多くのビッグ・バンド作品よりも僕はこちらのほうが好きだ。
どちらもおすすめです。

(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
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快文書作成ユニット(仮)
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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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