『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.143
2009/11/29 (Sun) 00:44:18
ゴロス対策委員会の若い委員が言った。
「いっそのこと、南極にジェット噴射機をたくさんつけて地球の軌道を変えてやって、大隕石を避けたらどうです?」
「そんな馬鹿な」
「いや待て、ゴロスを破壊することに比べれば易しいかも知れん。その実現可能性を研究してみようじゃないか」
というわけで、委員会は地球移動作戦に着手したのだった。
地球そのものを動かすという未曾有の試みなだけに不安要因は多かったが、気候の変動もその一つだった。ジェット噴射機が完成するのは次の八月になるだろうが、そのときの地軸の傾きを考えると、作戦が行われれば地球は太陽に近づき、気温は上昇するだろう。なんとかゴロスを回避したあとは逆向きのジェットを建造し、地球をもとの軌道に戻す予定ではあったが。
大隕石ゴロスがいよいよ近づき、南極大陸に設置された千七百機の巨大ジェット噴射機が火を吹く日がやってきた。ゴロスが地球に大接近し、その強烈な引力で潮の干満は狂い、南半球の人間は髪の毛を逆立たせいっせいに鼻血を出した。
「点火!」
轟々とジェットの束は火を吐き、地球は従来の軌道を離脱していった。ゴロスはゆっくりと、もと地球があった空間を通り過ぎていった。地球移動作戦は、まずは成功に終った。
しかし逆噴射ジェットを建造し地球をもとの軌道に戻す仕事がまだ残っている。それにも長い時間がかかる。太陽に近づいた地球の各地で、異常事態が起こった。
「キャベツが異常な大きさに成長しています」各地のキャベツ農場から報告が入ってきた。そのキャベツから次々と、身長三メートルを超える赤ん坊が生れてきた。彼らは誕生後も異常な成長をとげ、従来の人間とは違っていちように深緑色をしており、体中にうろこがびっしり生えていた。赤ん坊たちはその邪悪な姿の通り非常に凶暴で、周囲の人間に咬みつき血を吸って殺していった。こうした緑色人間が北半球各地のキャベツ畑から大量に発生し、人間界を恐怖におとしいれていた。
そのころ南半球では、銅介816Mi11が育てた巨人兵が暴れていた。姿は薄茶色で青く丸い目をしており、身長は二十メートルあまりだった。巨人兵は口から強力なビーム光線を発射し、それで大地をひとなでするだけで人間の街々はあっという間に灰になり木々は焼き尽くされた。銅介816Mi11は巨人兵の力を誇示し、世界を屈服させようと目論んでいたのだ。
巨人兵の乱行は南半球を震撼させたが、北半球の人間はそれに別な興味を抱き始めた。深緑色の巨大な赤ん坊の群れを、巨人兵の力で退治できないかというのである。
「このままでは地球はあの緑色の奇怪な赤ん坊たちに乗っ取られてしまう。どころか、人類そのものがすべてああいう化け物になってしまうだろう。事実いまキャベツ畑からは化け物しか生れていないのだから。逆噴射ロケットが出来るまで、あの巨人の力を借りようではないか」
という訳で、地球上では巨人兵と緑の赤ん坊たちの対決が始まろうとしていた。
(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
「いっそのこと、南極にジェット噴射機をたくさんつけて地球の軌道を変えてやって、大隕石を避けたらどうです?」
「そんな馬鹿な」
「いや待て、ゴロスを破壊することに比べれば易しいかも知れん。その実現可能性を研究してみようじゃないか」
というわけで、委員会は地球移動作戦に着手したのだった。
地球そのものを動かすという未曾有の試みなだけに不安要因は多かったが、気候の変動もその一つだった。ジェット噴射機が完成するのは次の八月になるだろうが、そのときの地軸の傾きを考えると、作戦が行われれば地球は太陽に近づき、気温は上昇するだろう。なんとかゴロスを回避したあとは逆向きのジェットを建造し、地球をもとの軌道に戻す予定ではあったが。
大隕石ゴロスがいよいよ近づき、南極大陸に設置された千七百機の巨大ジェット噴射機が火を吹く日がやってきた。ゴロスが地球に大接近し、その強烈な引力で潮の干満は狂い、南半球の人間は髪の毛を逆立たせいっせいに鼻血を出した。
「点火!」
轟々とジェットの束は火を吐き、地球は従来の軌道を離脱していった。ゴロスはゆっくりと、もと地球があった空間を通り過ぎていった。地球移動作戦は、まずは成功に終った。
しかし逆噴射ジェットを建造し地球をもとの軌道に戻す仕事がまだ残っている。それにも長い時間がかかる。太陽に近づいた地球の各地で、異常事態が起こった。
「キャベツが異常な大きさに成長しています」各地のキャベツ農場から報告が入ってきた。そのキャベツから次々と、身長三メートルを超える赤ん坊が生れてきた。彼らは誕生後も異常な成長をとげ、従来の人間とは違っていちように深緑色をしており、体中にうろこがびっしり生えていた。赤ん坊たちはその邪悪な姿の通り非常に凶暴で、周囲の人間に咬みつき血を吸って殺していった。こうした緑色人間が北半球各地のキャベツ畑から大量に発生し、人間界を恐怖におとしいれていた。
そのころ南半球では、銅介816Mi11が育てた巨人兵が暴れていた。姿は薄茶色で青く丸い目をしており、身長は二十メートルあまりだった。巨人兵は口から強力なビーム光線を発射し、それで大地をひとなでするだけで人間の街々はあっという間に灰になり木々は焼き尽くされた。銅介816Mi11は巨人兵の力を誇示し、世界を屈服させようと目論んでいたのだ。
巨人兵の乱行は南半球を震撼させたが、北半球の人間はそれに別な興味を抱き始めた。深緑色の巨大な赤ん坊の群れを、巨人兵の力で退治できないかというのである。
「このままでは地球はあの緑色の奇怪な赤ん坊たちに乗っ取られてしまう。どころか、人類そのものがすべてああいう化け物になってしまうだろう。事実いまキャベツ畑からは化け物しか生れていないのだから。逆噴射ロケットが出来るまで、あの巨人の力を借りようではないか」
という訳で、地球上では巨人兵と緑の赤ん坊たちの対決が始まろうとしていた。
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目次
上段の『☆ 索引』、及び、下段の『☯ 作家別索引』からどうぞ。本や雑誌をパラパラめくる感覚で、読みたい記事へと素早くアクセスする事が出来ます。
執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 ブログ引っ越しました。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※
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主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
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