硝子のひび　　木下杢太郎

月かげは窗（まど）のがらすの一つの罅（ひび）をさへきらきらと銀色に光らせた
故もなく湧き出でたる今宵の悲哀は過ぎし日の雑艸（ざつさう）に似る薄情（うすなさけ）をもいとどいとしきものに思はせた


今日は税務署に確定申告に行く。還付金が思ったより多くテンションが上がった。これでGWは余裕を持って東京に行ける。
昨日は仕事が休みで、近所に住む同僚の先生とガストで昼食をとる。僕は酒が飲みたかったから、車で来ているその先生には悪いが一人でビールを飲んだ。僕が最初に就職した会社のそばにガストがあって、毎日そこで昼食をとっていたことを思い出すと、その職場でのつらい思い出がつらつらと浮かんできて、それが僕にビールを飲ませるのだ、と言い訳をした。その先生と意外な共通の知人がいたことが分かったり、この一年の仕事の愚痴を言い合ったりと、有意義なランチだった。ただ当「快文書館」のアクセス数が、その先生のブログに負けているのが悔しかった。やはりまめに毎日更新するというのが、通常のアクセス数の伸ばし方のようだ。

その先生にも話したのだが、今年度は生徒の「分からん」という言葉にはさんざん悩まされた。生徒が授業中に発する「分からん」という言葉は、実に多様な意味を持っている。たとえば僕が一つの公式を紹介したとして、それに対してある生徒が「分からん」と言ったとする。その「分からん」は、「その公式がなぜ成り立つのかが分からない」という意味であったり、また「その公式の覚え方が分からない」という意味であったり、いやそうではなくて「そもそもなぜその公式を覚えなくてはいけないのかが分からない」と言っている場合もある。このように「分からん」という言葉は非常に様々な意味を持ちうるが、この学校の生徒はボキャブラリーが貧困なのか、ただ「分からん」という言葉を繰り返すのみなのである。そこで僕が、いろいろと生徒に問いかけ、その「分からん」がどういう意味で言われているのかを探り出さなければならない。それに失敗すると僕は「分かりにくい先生」ということになる。今の勤務校のような必ずしも学力の高くない学校では、数学の教員は「数学者」というより「心理学者」でなくてはならないのである。そして僕は正直、あまり心理学者にはなりたいとは思わない。


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