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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
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2024/11/21 (Thu) 17:42:01

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No.269
2010/04/06 (Tue) 10:35:18

郵便配夫  千家元麿

お爺さんの郵便配夫はやつてくる
世界の隅から山を越え海を渡つて
はるばると
不思議な郵便配夫はやつて來る
若い者にも負けない脚で
太陽や月や星をうしろにして
春はポカポカ暖に
霜解け道も輝いて
電信柱も芽が出るやうな
田圃の水も温む時
それでも夜は銀世界霜を戴き輝く屋根に
清い空から幸福が窓の燈に來るやうに
彼は急いでやつて來る。
手には日月星辰に劣らぬ愛の小形のランプをさげ
背後にかけた鞄からは貴いカードが新鮮な花のやうに溢れてゐる
今折り立ての新しい綠の小枝も交つてる
大人も子供も女も皆んな
彼の來るのは大歡迎
どこの家でも知つてゐて
どこの道でも知つてゐる
不思議な若いお爺さん
私位の息子があつてもよささうな
六十年缼勤なしの
すばらしい健康のお爺さん
太陽の軌道を眞下に
雷様でも嵐でも
雨でも月でも星でも
ものともしない英雄の郵便配夫はやつて來る
無數の妖魔の住む國を
丈夫な脚で踏みしだき
綠の小枝や無數の花を一杯背中にくつつけて
いつも新鮮にやつて來る
元氣なお爺さん
鹿や兎もゾロゾロと
あとから皆んなついて來い。


昼から学校で打ち合わせがあるのに眠れない。もう牛乳配達も来た。
千家元麿のこの詩は素敵だ。
仕事に嫌気が差した郵便配達夫が、自分の仕事が皆が心待ちにしている手紙を配って歩く立派なものだと気付く、などというお伽話もあったっけ。

今まで大病をしたことがなく、生命保険の有難みがよく分からない。会社を辞めていったん学生に戻ったとき、月々の保険料を最低ラインまで下げてもらったのだが、営業のお姉さんの電話攻勢に負けて、この六月から大幅アップすることになった。いま何か病気をしていないか聞かれたものの、実は馬鹿という名の精神病を抱えており脳ドックの受診も考えている、ということは黙っておいた。

脳というと、以前大学の講義でビデオを観せられたのだが、ものの形を把握するための多くの神経細胞が、人間の脳には生まれつき備わっているとのことだ。つまりある細胞は直線、ある細胞は円、またある細胞は三角形を把握するために存在している、という具合に、基本的な図形に対して役割分担が決まっているらしい。そして面白いことに、その中にはニコチャンマークを把握するための細胞があるのである。それはすなわち人間の顔である。つまり人間の顔を最も基本的な図形の一つとして把握するようヒトの脳は出来ているのである。だから小さな子供でも、紙にニコチャンマークを描いて見せてやると喜ぶ。
その辺の図形把握をつかさどる脳の機能に支障をきたしている人も、中にはいるのかも知れない。数学者ポアンカレは、図形を描くのが極端に苦手だったという。三角形を描こうとしたら丸になってしまうぐらいだった。だからというのではないだろうが、ポアンカレは三角形と円、ドーナツとコーヒーカップなどを同一視する数学の分野、位相幾何学(トポロジー)の創始者となった。

一つの球体を適当な有限個の部分に分けて、再度うまく組み合わせると元と同じ大きさの球体が二つ出来上がる、というのは有名なバナッハ・タルスキーのパラドックスである。ところでその「一つの球体を適当な有限個の部分に分ける」というのは、実は5個の部分で十分である、という信じがたい結果がある。
http://mathworld.wolfram.com/Banach-TarskiParadox.html
一つの球体を5つに分けて再度組み合わせると、同じ大きさの球体が二つできる。にわかには信じがたい話だが、おそらくは数学が無限小を扱うことから生じる結果で、5つの部分は「体積不確定」であるためになんら矛盾は生じないのだろう。


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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

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 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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