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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/21 (Thu) 17:56:12

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No.349
2010/09/11 (Sat) 13:50:50

ある日、一つ目モンスターと岸川コーチが淀川河川敷の練習場に来てみると、IRバイアンズの主力選手の一人である獄目鬼修(ごくめき・おさむ)がベンチで首を吊っているのが見つかった。遺書らしきものがあり、そこには
「これ以上、モンスターや岸川コーチの拷問のような練習には耐えられません」
と書かれてあった。
岸川は激怒した。「俺に無断で命を絶つなんぞ、許してたまるか」
すぐさま救急車が呼ばれ、心臓救命装置(AED)で獄目鬼の胸に電気ショックが与えられた。なかなか息を吹き返さない中、救急車が到着した。
「俺は病院に行ってきますから、監督、練習を始めといてください」岸川は言って、救急車に乗りこんだ。
他のバイアンズの選手は獄目鬼には無関心で、キャッチボールなどをしている。
「よーし、守備位置につけ。ノックを始めるぞ」モンスターは言い、獄目鬼を心配しながらも、選手たちに檄(げき)を飛ばしつつ、ノックを続けた。

大阪市内のとある総合病院、集中治療室。
「先生、助かりますか?」と岸川。
「ああ、なんとか命は取り留めた。あと二週間は絶対安静だがね」
「ありがとうございます!」といって岸川は治療室のドアを勢いよく開け、獄目鬼の酸素マスクをもぎとり、その耳元で叫んだ。「おい、助かるとよ! まだお前には野球が出来る! 残念だろうが貴様は死ねないんだよ!」
岸川は、体中を包帯で巻かれミイラのようになった獄目鬼を強引にベッドから起こした。「二週間も休めると思うなよ、今から練習だ!」

練習場に連れてこられた意識のない獄目鬼は、セカンドの守備位置に無理やり寝かされ、岸川によるノックが始まった。
「貴様は野球の虎になるんだ! 千本ノックを受けるまで帰さねえからな!」
打球が、獄目鬼の体を次々と直撃する。獄目鬼はときどきうめき声を上げる。
「目を覚ますんだよ!」
百球もノックを受けたころだろうか、獄目鬼はむっくりと体を起こし、ともかくも打球を受けようとし始めた。包帯の下のあちこちから血が滴っている。
「ほらほら、まだ一球も取れてねえぞ! あーいらつくぜ! もういい! やっぱり貴様はぶち殺す!」岸川はバットを放り出しホルスターから拳銃を抜くと、獄目鬼に狙いをつけた。そのときである。ボールを岸川に渡す役をしていた外野手の愚呂(ぐろ)が、いきなり岸川の腕に噛みついた。拳銃の狙いは外れ、空に向かって弾丸は発射された。
「愚呂! なんのつもりだ!?」岸川は叫んだ。
「もう貴様らの指図は受けねえ! 野郎ども、かかれ!」愚呂の掛け声とともに、バイアンズの選手たちは手に手にバットを持って、岸川とモンスターに襲い掛かった。
「謀反か!? いい度胸だ! 束になってかかってこい!」岸川は叫んで、選手たちに次々発砲した。モンスターもバットで殴られたぐらいで参ることはなく、選手たちの腕を引きちぎったり臓器を引きずり出したりして応戦した。
しかし多勢に無勢、ついにモンスターと岸川はバイアンズの選手たちに取り押さえられ、木の杭に縛り付けられた。
「おい、俺たちをどうするつもりだ!?」岸川はあくまで強気な調子で叫んだ。
「ひひひ、どうするつもりだ、とよ」
「これまでの恨みを晴らすのさ。けけけ」
「さあ、悪魔の毒々バーベキューの始まり始まり」といってバイアンズの一人は、長い鉄の串を数本取り出した。「そら」と言って岸川の脇腹に突き刺す。
「むっ」眉をしかめる岸川コーチ。次々と鉄串が彼の体に刺されてゆく。
「殺すなら早く殺せ」岸川は言った。
「バーベキューは火で焼かないとね」選手たちは岸川の頭から灯油をかけ、マッチで火をつけた。燃え上がる岸川。
しかし、いっこうに苦しそうな顔はしない。「これで勝ったと思うなよ」岸川は口から白い液体を吐き出し「バチャビロビロビロビロ」と薄気味悪い機械的な声を発したかと思うと、ロープを引きちぎり、再び選手たちに襲い掛かった。
「早く殺せ!」パニックになったバイアンズの選手たちは、金属バットで狂ったように岸川の頭部を殴打した。岸川コーチの頭は炎をあげながら真後ろに折れ曲がり、首の付け根から人間のものとは思われない無数のチューブと白い液体をふき出させ、なおも選手たちに襲い掛かる。
「うわーっ、助けてくれ!」選手たちは人間以外の不気味な怪物を相手にしているのだと思うと、急に怖くなったらしく、全員が逃げ腰になった。
「そいつはロボットだ! 貴様らの手には負えん。俺に任せろ!」モンスターは縄を引きちぎり、かつては岸川コーチだったアンドロイドに立ち向かった。
モンスターは燃え盛るアンドロイドの四肢を引きちぎり、その頭部をねじ切った。ようやく大人しくなったアンドロイド。
「よし、せっかくだからこのロボットから話を聞いてみようじゃないか」モンスターは焼け焦げたアンドロイドの首を、ベンチにそっと置いた。
「岸川、聞こえるか?」モンスターが尋ねる。
「ああ、聞こえる」
「貴様はいったい何者だ?」
「もちろん、IR鉄道が開発したアンドロイドだ」
「野球のコーチをするために開発されたのか?」
「もちろんそれもあるがね。だが本当の目的は、野球を通して心身ともに強靭な少年戦士を作ることにあった」
「少年戦士?」
「IR鉄道と宇宙開発機構が共同で作った土星探査船が、三年前に未知の生物を発見した。それは無敵ともいえる危険きわまりないエイリアンだった。そこで少年戦士たちを鍛え上げて土星に派遣し、エイリアンを生け捕りにしよう、というのがIR鉄道の目論見だった」
「そんな厄介な怪物を捕獲してどうする?」
「アジャバラブ」
「何?」
「バラバラピーブロブロ。グッ」岸川だったアンドロイドはそこでこと切れてしまった。
「IR鉄道の考えてることはさっぱり分からん……しかしみんな、もうIRバイアンズはおしまいだ。悪い夢を見ていたとでも思って、もとの健全な中学生に戻ってくれ」
モンスターがそう言ったとたん、ピッチャーの剃度場(ぞるどば)が口から血を吹き出して倒れ、苦しそうに身もだえした。
「どうした!? 大丈夫か?」
剃度場の腹がいきなり裂け、血しぶきの中から眼のないコブラのような生物が頭を出した。その生物はあたりを見回すと、さっと身をひるがえして素早く蛇行し、草むらの中に逃げていった。
「なんだあれは?」モンスターは狐につままれたような顔で言った。

バイアンズのメンバーはこれからどうなるのか? 物語はまだまだ続く。


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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

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