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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/21 (Thu) 17:43:31

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No.396
2011/01/05 (Wed) 21:22:14

 淀川河川敷にある中学生野球チーム・バイアンズの練習場で、ピッチャー・剃度場(ぞるどば)の腹から出てきたエイリアンの幼生が、どこかへ行方をくらました。
 すぐに成長したエイリアンは、口から発する強力な酸を武器に、河川敷に住む浮浪者たちを次々と襲った。犠牲者はたいてい四肢がもぎ取られ、頭蓋がゲル状に溶かされて、見るも無残な遺骸を残していた。
 もとはといえばバイアンズから発生した事態だったから、モンスターは責任を感じ、バイアンズのメンバーとエイリアン捕獲作戦に乗り出したのである。
「エイリアンをおびき寄せて落とし穴に落とすんだ。エイリアンは口から強い酸を出すが、それはアルカリ性の物質によって中和させればいいと思う」
 モンスターは作戦を指示した。しかし彼の化学の知識はうろ覚えだったから、エイリアンの酸に対抗しうる強いアルカリ性溶液を作ることなど到底出来なかった。彼らの知恵で出来たのは、アルカリ乾電池を大量に集めることだけだった。

 ある日の深夜。
 モンスターとバイアンズのメンバーは、エイリアンの徘徊地域で、茂みに隠れて待ち伏せていた。
 やがて不気味な呼吸音とともに、エイリアンの引きずるような足音が聞こえてきた。その長細い頭が月に照らされ、コンクリートの堤防に影を落とした。
「アルカリ爆弾、行け!」
 モンスターが命令すると、バイアンズの中学生たちはいっせいに単一のアルカリ乾電池をエイリアンに投げつけた。
 エイリアンは頭に大きな電池をぶつけられて一瞬ひるんだが、アルカリの効能などあるはずもなく、すぐに戦闘体制に入った。大きな口を開け、中から第二のアゴが飛び出し、バイアンズのサード、斬仁(ざんにん)の喉もとに喰らいついた。
「ぎゃーっ」
 斬仁の頸動脈から鮮血が噴水のように飛び出し、あっという間に彼の頭部の三分の二が酸によって溶かされた。痙攣する斬仁の体を鋭い爪で串刺しにし、その脳味噌をぐちゅぐちゅとむさぼり食うエイリアン。
「ちくしょう!」
 ファーストの火戸羅(ひどら)が金属バットでエイリアンの頭を殴った。エイリアンは「シーッ」と威嚇するような声を上げた。
「よし、関心を引いたぞ。落とし穴におびき寄せろ!」
 モンスターはバイアンズのメンバーに指示を与えながら後ずさった。しかし前に気を取られすぎたのか、モンスター自身が落とし穴に転げ落ちてしまった。
「ぐぁーっ」
「監督、大丈夫ですか! おい、どうすりゃいいんだ」バイアンズのメンバーはリーダーを失い、混乱した。
「構わん、エイリアンもこの穴に落とせ! もう死なばもろともだ」モンスターは叫んだ。選手たちはその指示通り、エイリアンを落とし穴に突き落とした。
 深い穴の底でもみあうモンスターとエイリアン。バイアンズのメンバーは手に汗を握って戦況を見守っていた。
「監督、勝ってくれ! ……とはいうものの、モンスターが負けそうだな」
「モンスターは死なばもろともって言ってたぞ」
「よし、二人の上から岩を落とそう」
 衆議一決し、必死で戦うモンスターとエイリアンの上から巨大な岩が落とされた。
 ぐしゃ、という音がして土ぼこりが上がり、急に辺りはひっそりとなった。虫の声だけが聞こえる。
「死んだかな」
「監督もエイリアンもつぶれちまったろう」

 バイアンズの選手たちは警察に通報し、事態はひとまず一件落着した。

 IR鉄道株式会社本部の社長室に、バイアンズのメンバーたちが招かれた。
「いや、このたびは大手柄だった。みんな、ありがとう」社長は一堂を見回し、満足げに言った。「エイリアンはわがIR鉄道が地球に誤って侵入させたものだからな。本来ならわれわれの手で退治すべきだったが、君たちも筋金入りの戦士だ。立派だぞ。モンスター君もそう思うだろう?」
 右手と左足にギブスをはめ、包帯で頭を巻いたモンスターがうなずいた。
「バイアンズのメンバーは、本当に素晴らしい戦士に育ちましたよ。まあ私も一時は死ぬかと思いましたが、こんなことでくたばってはいられません。彼らには、まだ私のような指導者が必要なんです。ところで、落とし穴に岩を落とした件だが」モンスターはバイアンズの面々を見渡した。「最初に言い出したのは誰だ?」
「愚呂(ぐろ)です」メンバーの誰かが言った。
「そうか。愚呂、頼もしいぞ。貴様はなかなか心臓が強いな」モンスターはそう言うや否や「どんな心臓か見てやる!」
 モンスターは愚呂の胸に左手を突っ込み心臓をつかみ出した。社長室の壁や天井が、吹き出した大量の血しぶきで真っ赤に汚れた。
 IR鉄道の社長は、顔についた愚呂の鮮血をハンカチでぬぐいながら
「ところでモンスター君。きみとバイアンズにはまだ使命が残っている。土星の衛星群におもむき、エイリアンの棲む世界の生態系を調査するんだ」

 モンスターとバイアンズのメンバーの前には、まだまだ苦難が待ちうけている。勇猛果敢な毒々軍団、いざ土星へ。


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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

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