『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.54
2009/10/16 (Fri) 01:24:11
吐屠郎の運転するトラックは、ゆるやかな坂道をしばらく登り、そのまま病院へ向かうかに見えたが、右折して最近オープンした大型ショッピング・モールの前に停まった。
「ここ、ゾンビがうじゃうじゃいるわ! ここに冥(めい)がいるっていうの?」
吐屠郎は「あ、う」と声を発して小さくうなずき、アクセルを強く踏んで、うつろな目をした青白いゾンビたちを次々はねとばし、建物の入り口にトラックを横付けした。
ダダダダダダ!! ダダダ!! 機関銃の音がショッピング・モールの中から響いてきた。
冥が、二階からマシンガンで階下のゾンビたちを撃ちまくっているのが見えた。
「ウキキキキキキー!!」
「冥、そこで何やってるの!?」
「あ、お姉ちゃん! こいつら、頭を吹っ飛ばしたら死ぬよ!」
殺気(さつき)と姦太(かんた)が、停止したエスカレーターを駆け上って、よだれを垂らして赤紫に顔を上気させた冥のもとに向かった。
「ばか冥! 心配したんだから! しかも病院じゃなくてなんでデパートなんかにいるの!?」
「お腹がすいちゃったの。でも、ヒキガエルよりもっといいもの、見つけた!」
冥は後ろの「佐伯銃砲店」という看板を指差した。
「手榴弾にバズーカ砲、なんでもあるよ! ね、お婆ちゃん!」
「こげな立派な銃、初めて持っただよ、あたしゃ」そこには鬼婆がいた。
「婆ちゃん、なんでここに!?」姦太が目を丸くして言った。
「池に冥ちゃんのらしきサンダルが浮んでてね、何かあったんかと思ってあたしゃ冥ちゃんの匂いを追跡してここまで来たんだよ。ほれ、そこに一匹」と言うなり鬼婆は拳銃を構え、姦太の背後に迫っていたひげ面のゾンビの眉間を撃ち抜いた。
あたりがしんとなった。ゾンビたちの姿はあまり見えなくなった。
「冥、今のうちに病院に行きましょ」殺気が言った。
「あれ、吐屠郎は?」姦太が言った。たしかに吐屠郎の姿がさっきから見えない。
「これ何かしら」殺気が紙切れをひろいあげた。「タビニ デマス。トトロウ。吐屠郎の手紙だわ!」
「あいつめ! トラックもないぞ!」姦太が叫んだ。
「デパートの外はまだゾンビだらけぞな、車がないと動きが取れんわ」鬼婆が言った。
「……どうすりゃいいんだ」姦太が言った。
「じたばたしてもしょうがないわ。何か食べましょ……上の階に食べ物あるんじゃない?」
「そうじゃな」
そのとき、デパートの入り口から若い男の声が鳴り響いた。
「すみません! そこにおいでの方! こっちです!」
一同はその人物のほうを見た。
「あ、撃たないで。僕、ゾンビじゃありません」若い男が言った。
「うきー!」冥がかまわず機関銃を発射した。ダダ、ダダダ!
男はあわてて床に伏せた。
「違うんです、撃たないでったら!!」
「冥、やめな。ゾンビじゃないのよ」殺気が冥を制した。
「でも姉ちゃん、とどめを刺さなきゃ」
「お願いです! 僕はれっきとした人間です! 毒島(ぶすじま)といいます! 島の南部に住んでいる科学者です」
吐屠郎の生みの親でゾンビ騒動をひきおこした喪漏博士(もろうはかせ)の、片腕として働いてきた助手の毒島、彼はここに何をしにきたのであろうか。物語はさらに続く。
(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
「ここ、ゾンビがうじゃうじゃいるわ! ここに冥(めい)がいるっていうの?」
吐屠郎は「あ、う」と声を発して小さくうなずき、アクセルを強く踏んで、うつろな目をした青白いゾンビたちを次々はねとばし、建物の入り口にトラックを横付けした。
ダダダダダダ!! ダダダ!! 機関銃の音がショッピング・モールの中から響いてきた。
冥が、二階からマシンガンで階下のゾンビたちを撃ちまくっているのが見えた。
「ウキキキキキキー!!」
「冥、そこで何やってるの!?」
「あ、お姉ちゃん! こいつら、頭を吹っ飛ばしたら死ぬよ!」
殺気(さつき)と姦太(かんた)が、停止したエスカレーターを駆け上って、よだれを垂らして赤紫に顔を上気させた冥のもとに向かった。
「ばか冥! 心配したんだから! しかも病院じゃなくてなんでデパートなんかにいるの!?」
「お腹がすいちゃったの。でも、ヒキガエルよりもっといいもの、見つけた!」
冥は後ろの「佐伯銃砲店」という看板を指差した。
「手榴弾にバズーカ砲、なんでもあるよ! ね、お婆ちゃん!」
「こげな立派な銃、初めて持っただよ、あたしゃ」そこには鬼婆がいた。
「婆ちゃん、なんでここに!?」姦太が目を丸くして言った。
「池に冥ちゃんのらしきサンダルが浮んでてね、何かあったんかと思ってあたしゃ冥ちゃんの匂いを追跡してここまで来たんだよ。ほれ、そこに一匹」と言うなり鬼婆は拳銃を構え、姦太の背後に迫っていたひげ面のゾンビの眉間を撃ち抜いた。
あたりがしんとなった。ゾンビたちの姿はあまり見えなくなった。
「冥、今のうちに病院に行きましょ」殺気が言った。
「あれ、吐屠郎は?」姦太が言った。たしかに吐屠郎の姿がさっきから見えない。
「これ何かしら」殺気が紙切れをひろいあげた。「タビニ デマス。トトロウ。吐屠郎の手紙だわ!」
「あいつめ! トラックもないぞ!」姦太が叫んだ。
「デパートの外はまだゾンビだらけぞな、車がないと動きが取れんわ」鬼婆が言った。
「……どうすりゃいいんだ」姦太が言った。
「じたばたしてもしょうがないわ。何か食べましょ……上の階に食べ物あるんじゃない?」
「そうじゃな」
そのとき、デパートの入り口から若い男の声が鳴り響いた。
「すみません! そこにおいでの方! こっちです!」
一同はその人物のほうを見た。
「あ、撃たないで。僕、ゾンビじゃありません」若い男が言った。
「うきー!」冥がかまわず機関銃を発射した。ダダ、ダダダ!
男はあわてて床に伏せた。
「違うんです、撃たないでったら!!」
「冥、やめな。ゾンビじゃないのよ」殺気が冥を制した。
「でも姉ちゃん、とどめを刺さなきゃ」
「お願いです! 僕はれっきとした人間です! 毒島(ぶすじま)といいます! 島の南部に住んでいる科学者です」
吐屠郎の生みの親でゾンビ騒動をひきおこした喪漏博士(もろうはかせ)の、片腕として働いてきた助手の毒島、彼はここに何をしにきたのであろうか。物語はさらに続く。
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目次
上段の『☆ 索引』、及び、下段の『☯ 作家別索引』からどうぞ。本や雑誌をパラパラめくる感覚で、読みたい記事へと素早くアクセスする事が出来ます。
執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 ブログ引っ越しました。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
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セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
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