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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/21 (Thu) 17:54:36

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No.556
2012/03/31 (Sat) 23:21:56

 女と差し向かいで酒を飲んでいたら、どうも毒を盛られたようだ。
「おい、おせん。もっと明るくしろ」
「いやですよ、明るいままだなんて」
 浴衣を着た若い女が言った。部屋の奥には布団が敷かれている。
「いいから明るくしろ!」
 するとおせんは枕もとの行灯の火を明るくした。
 手足がしびれてきた。だが意識ははっきりしている。
「おせん! 俺を殺るつもりなら、毒の盛り方が少なかったようだな」
 すると窓が開き、浪人風の男が雪風とともに押し入ってきた。刀を上段に構えている。
 私も刀を抜いた。しかし毒のせいでときおり目がかすんでくる。
「これがお前の情夫(いろ)か?」私は言った。「二人して紀州屋からいくらもらった」
「でぇい!」浪人者が突きかかってきたが、私はその切っ先を間一髪でかわし、相手の頭を斬った。
「ぎゃーっ」浪人者は両眼から血を流してうめいた。
「おい、おせん。お前の相方はこの通り視力を失ったが、あとはどうするつもりだ」
「ばか! この人はね、この人はあなたの実のお父っつぁんなんだよ!」
「何!? それはまことか! 父上! ああなんたること、そうすると俺は親の目をつぶした不孝者だ、知らなかったこととは申せ人は許しても天は許すまじ、かくなる上は腹をかっさばいて果てようぞ」
 私がもろ肌を脱いで脇差を抜くと、さっきまで目を押さえてうめき苦しんでいた浪人姿の父がすっくと立ち上がり「介錯つかまつろう」
 私が腹を真一文字にかき斬ると、父は刀を振り下ろした。しかし目が見えないから刀は見当はずれのところに振り下ろされ、あろうことかおせんの首を斬り落としてしまった。
「ぎゃーっ」噴き出した鮮血は行灯に飛び散り、辺りは血の海になった。
「父上!」私は叫んだ。「目が見えず仕方のなかったこととは申せ、このおせんは私の実の妹、つまりあなたの娘でございますぞ!」
「何!? それはまことか! おせん! してみると私は我が子を手にかけたことになるのか、犬畜生でも子は可愛がるもの、私は天道にもとる大罪人だ、かくなる上は腹かっさばいて果てようぞ」
 父がもろ肌を脱いで脇差を抜くと、私はさっき腹を切ったところで腸が飛び出していたが、腸を腹の中に無理やり押し込んですっくと立ち上がり「介錯つかまつろう」
 私は父の首を勢いよく斬り落とした。
 私はその場にへなへなと座り込み、本来は誰かに介錯を頼むところだがこの場合いたしかたなく、脇差で自分の頚動脈を切ろうとした。
 折りしも、窓から突風が吹き込んできた。そしてその風は偶然にも強力なかまいたちを引き起こし、私の首をすぱっと切り落としてしまったのである。

【越後かわらばん・四月一日号より】
 怪異! 旅館の一室に転がる三つの首! いったい誰が斬ったのか?

 さる三月三十日の朝、旅館赤松屋の二階の一室で男女三名が首を切り落とされて絶命しているのを女中が発見した。他の旅客や旅館の奉公人の仕業でないことははっきりしている。またその前の晩は雪が降っていたが、三人の死亡推定時刻にはやんでおり、赤松屋の周囲に降り積もった雪の上に足跡が見当たらないことから、密室殺人の様相を呈してきた。
 次の日の昼ごろ、上方の豪商・紀州屋伝兵衛なるものが赤松屋を訪れ、死んだ三人のうちの一人を訪ねてきたため、奉行所は事件との関わりを調べている。紀州屋が訪ねた以外の二人の死人の紙入れには合計で大枚五十両の金子が入っており、この金子と紀州屋との関係が疑われているが、この豪商は否定している。しかし紀州屋伝兵衛はかねてから密貿易の疑いがもたれている人物であり、奉行所では彼が南蛮渡来の「ぶうめらん」なるもので三人の首を刎ね飛ばした疑いがあると見ている。ただ三人の死亡した時刻には紀州屋は事件現場とは五里離れた宿場におり、いくら南蛮の飛び道具でも五里も離れた人間の首を刎ね飛ばせるものかと紀州屋は抗弁しているが、他にこの密室殺人を説明する方法がないことから、近く奉行所は紀州屋伝兵衛をはりつけ獄門の刑に処する見通しである。


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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

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 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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