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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/21 (Thu) 18:00:15

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No.609
2012/11/25 (Sun) 06:40:53

「情報屋の話によると」片桐部長は煙草の火を灰皿でもみ消した。「今日の深夜に第七埠頭でコカインの受け渡しがあるそうだ。トミーにマツ、行って現場を押さえて来い……もちろん、やむをえない場合には犯人を殺すことになるだろうが」

 グレーのスーツを着た端正な面立ちのトミーに、薄茶の背広を身にまとった色黒のマツ。二人の刑事は名コンビだった。そのわけはこれから起こる事件の成り行きを見れば分かるであろう。
「せ、先輩。密輸団が船から出てきましたよ。マシンガンを持った奴もいるぞ……怖いなぁ」
「何を情けないことを言ってるんだ、トミー。ちゃんと飯を食ってきたのか? 顔色が青白いぞ。まあお前はいつだってそうだがな」
「だだだって相手はマシンガンですよ。こっちは旧式のニューナンブが二丁。どうするんですか」
「まぁ今の警察は貧乏だからな。俺たちもそのうち密輸団に鞍替えするか……っと冗談言ってる場合じゃねえ、そろそろブツの受け渡しだ。さ、突入するぞ」
「こ、殺されるに決まってるじゃないですかぁ! ありていに言うと、僕おしっこちびってます」
「それでも刑事かよ!」マツはトミーの背中をドンと叩いた。「お前なんか男じゃない、トミオが聞いて呆れるぜ。お前はトミ子だ。このトミ子トミ子、トミコー!!」
 それを聞いたトミーは耳をぴくぴくさせ、目に生気がみなぎってきた。そればかりか肩から胸の筋肉がむきむきっと盛り上がり、胸板はもとの三倍以上、一メートルぐらいに分厚くなった。そしてトミーの口からは犬歯が伸びてサーベルタイガーのごとき牙となって、目には瞳がなくなり、まるで悪魔が取り付いたようによだれを垂らしながら不気味な吠え声を発した。
「よし、それでこそトミーだ。行ってひと暴れしてこい!」
 マツが言うと、トミーは密輸団の群れに飛び込み、マシンガンで撃たれても平気な顔をしてかえってその相手の頭をつかんで百八十度回転させた。トミーは敵たちの頭を掴んでは粉々に砕き、また喉笛に喰らいついて相手の消化器官を引きずり出し、それをむさぼり食った。生き残って腰を抜かした敵の一人のところに、マツがつかつかとやってきて、頭から生えた三本目の手で警察手帳を振りかざした。
「湾岸署のものだ。麻薬取締法違反で貴様らを逮捕する」
 パトカーが数台やってきて、密輸団のメンバーを連れ去って行った。もっとも、密輸団の十一名中九名まではトミーに惨殺されたのだったが。
 敵のほとんどを倒すと、トミーはいつのまにかもとの姿に戻っていた。「わぁ、何が起こったんですか? あっちにもこっちにも人体のかけらがごろごろと……いったい誰がやったんですか?」
「お前だよ、トミー! いつも暴れたときのことはコロッと忘れちまうんだからなぁ。さ、帰ろうぜ。今日の仕事は終わりだ」
「あ、雨が降ってきましたね」
「お前、傘もってるか」
「ええ、折りたたみのやつが一本。でも、これじゃ二人は入れませんね」
「貸せ! こういうのは先輩に譲るもんだ」
「わ、ずるいですよ先輩」
「おいトミー、この傘、穴が開いてるじゃないか。というか、穴だらけだ」
「へーっくしょい! もうどうだっていいや。雨に当たったって」
「それもそうだな!」
 マツは壊れた傘を振り回し、トミーは両腕を振り回して、二人はジャンプした。
「もう放射能の雨なんて、恐くない!」
「どうせ俺たち奇形人間! ひゃっほー!」


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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