忍者ブログ
AdminWriteComment
 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/21 (Thu) 18:01:06

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

No.615
2012/12/22 (Sat) 16:49:05

 二人いる上のほうの甥は、高校に入学した当初、何のクラブに入るか考えたとき、まず少林寺拳法部が候補に挙がったらしい。その高校ではいちばん活発なクラブと言われていたからだ。しかし試しに一日だけ体験入部したところ、あまりの厳しさに根を上げ、けっきょく文科系の物理部に入った。僕など少林寺拳法と聞いてもまったくの門外漢で、カンフー映画に出てくる少林寺の修行風景しか思い浮かばない。だからそのクラブがおそろしく厳しかった、と聞かされてもジャッキー・チェンの「少林寺木人拳」のように大勢の堅い木のロボットに半殺しにされたとか、「少林寺三十六房」の主人公のように慢心していきなり頂房に挑戦して念仏で失神させられたとか、まあそこまで飛躍したことは考えないけれども、どうも少林寺拳法について正しいイメージが湧いてこないのである。

 彼の弟は今年高校に入ったのだが、クラブは弓道部にしたそうだ。しかし弓道にしても僕にはまったく分からない世界で、かろうじて中島敦の「名人伝」で弓術の修行について読みかじったぐらいだ。だから下のほうの甥が弓道部に入ったと聞くと、ああ名人伝のあれか、最初の一年は絶対にまばたきしない人間になるためひたすら目を開けているだけ、次の一年はシラミが牛ぐらいの大きさに見えるようになるまでとにかくにらみ続けるだけ、そして弓に触れるのは三年になってからなんだろう、などという空想をしたが、実際はそうではなくて、一年の最初から弓を持って構え方から練習するらしい。まあそりゃそうだろうな。

 ところでヨーロッパのほうでは、非公式なものかも知れないが、いまだに剣を使っての決闘が行なわれることがあるらしい。日本はというと現在では「決闘罪」というのがあって、決闘は非合法になっている。しかし二十年、三十年にもわたって続いている裁判を見るにつけ、場合によっては裁判ではなく決闘で決着をつけるという選択肢があってもいいのじゃないかと思う。気の短い者同士なら決闘のほうを選ぶかも知れない。

 そういえば小学校三年のころ、クラスで仲の悪い二人の男子がいて、毎日のように喧嘩していた。それを見ていて業を煮やした担任の先生は、二人を砂場で決闘させることにした。ここで勝負をつけたあとはこんりんざい争わないこと、と二人に約束させ、決闘に際してはパンチは駄目、腹を蹴るのも駄目、といくつかルールが設けられた。そしてクラスのみんなが見ている中、決闘が行なわれた。自分が教師になって思うのだが、その担任の先生はずいぶん思い切ったことをさせたものだと思う。もしどちらかが怪我して、保護者からクレームが来たらどうするのだろうか。あるいは、まだ当時は学校の先生が尊敬されていて、親がねじ込んでくるなどということは少なかったのかも知れない。

 中学一年のころ、空手をやっている奴がクラスにいた。なんでも糸東流という空手らしかったが、そいつが休み時間になるたび僕に殴りかかってきた。相手は鍛えているのだからこっちはまるで敵わない。そいつは空手で身に付けた本格的な突きや蹴りをやりたい放題にあびせてきた。武道の技術だけ覚えて、精神などはくそくらえという奴だったのだ。僕はあるとき、次の休み時間に奴がかかってきたら鉛筆で刺してやろうと思った。そいつが怪我して先生に何か言われたら「命の危険を感じたので正当防衛です」と開き直るつもりだった。しかし僕がそう腹を決めて鉛筆をポケットに忍ばせていたら、そいつはかかってこなかった。直後に僕は別なことで口を怪我し、その空手野郎も怪我人は攻撃できないと思ったのか、他の標的を見つけて休み時間はそいつをいたぶるようになった。僕はいまだにこの空手野郎が許せず、もしどこかで会ったら角材か何かで殴ってやりたい。会うのがあと五十年先でも、おそらく僕は同じ気持ちだろう。武器がなければ、たとえ総入れ歯になっていても噛み付いてやるつもりだ。


(c) 2012 ntr ,all rights reserved.
PR
[627]  [623]  [621]  [620]  [618]  [615]  [614]  [613]  [612]  [610]  [609
執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









 ※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※







文書館内検索
バーコード
忍者ブログ [PR]