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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/21 (Thu) 17:55:32

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No.618
2012/12/26 (Wed) 20:15:54

「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」というが逆に「大海の鰯(いわし)井の中を知らず」という格言があっても良さそうなものだ。お前は危険で敵の多い大海でいつまでもふらふらと不安定な暮らしをしているが、そろそろ一つところに足をつけて身を固めろ、と年老いた父親が放浪息子に説教するときなどに使う。大海の鰯は井の中の平凡な暮らしの良さを知らない、というわけだ。
 ちなみに蛙のことわざは「井の中の蛙大会を知らず」と書くのが正しいという説があり、これは例えば柔道の選手などがあまり小さな道場で練習していると、大事な大会の通知が届かないことがあるから気をつけろよ、といったほどの意味である。

「耳なし芳一」という怪談を聞いて多くの子供が疑問に思うのは、琵琶法師の芳一が耳にだけお経を書くのを忘れて怨霊に耳をもぎ取られたというけれど、ということはおちんちんにはお経を書いたのだろう、おちんちんにさえお経を書くのを忘れなかったのに耳にだけ書き忘れるのはおかしい、ということだろう。これはもっともな疑問である。実はこの昔話の「芳一」という名前は誤伝であって、主人公は本来女性だったのであり、正しいタイトルは「耳なし芳恵(よしえ)」だった。これが柏原芳恵の名の由来である。
 あまり知られていないが柏原芳恵も琵琶法師一級の腕前であり、その熱烈なファンだった独身時代の皇太子殿下から皇居に招かれ、彼女は殿下のヴィオラとのコラボレーションで琵琶を奏でつつ、眉をいからせて壇ノ浦の戦いの一節を唸ってみせたそうである。

 マーガレット・セント・クレアによる『アルタイルから来たイルカ』というSF小説では、人間とイルカはもと同じ生物から進化したのであり、進化してその姿かたちが分化する以前は別の星に住んでいたという設定になっている。なるほどそうであれば何故イルカが異常なほど人間になつくかが説明できるように思われる。しかし実際はそうではない。人間と共通の祖先を持ち、かつて別の星でいっしょに暮らしていたのは出目金(でめきん)だった。こんにち金魚すくいなどでよく見かけるあの黒いデメキンである。古代の日本人が作った遮光器土偶がデメキンによく似ているのはその一つの証拠であり、その頃の人間も同様に目が飛び出ていたことが古い壁画の解析から明らかになっている。彼らの目が飛び出ていたのは当時の地球の大気が希薄で、気圧が非常に低かったことによる。だから人間とデメキンの顔で飛び出ていたのは目だけではなく、舌も肥大して飛び出していた。人間とデメキンは、その長い舌を使ってオオアリクイのように蟻を食って生きていたのである。
 日本の国産みの神話では、イザナギ・イザナミの二神が混沌とした大地を矛でかき混ぜ、矛からしたたり落ちたしずくから島が生まれたようすが描かれている。その矛というのは実は人間とデメキンの故郷の星で開発された酸素製造機のレバーを象徴的に語ったものであり、酸素がある程度いきわたり人間とデメキンは互いの舌が引っ込んだのを見て「よし」と言った。遮光器土偶はその瞬間の人間とデメキンの姿を写したものだが、そのご人間は目も引っ込んだものの、デメキンの目がそのままであったことが両種族の対立を生み、デメキンは河川、人間は陸という住み分けのもとになったと思われる。

 マラソンという競技の由来はよく知られている。すなわち古代ギリシアのマラトンという地でアテナイ軍とペルシア軍が戦ったが、前者が勝利を収めたことをアテナイの元老に伝えるためフィリピデスという兵士が伝令に選ばれ、彼は全力で走って約四十キロ離れたアテナイに着き「われ勝てり」と告げたあと力尽きて死んだというのである。それなら、今日のマラソンでゴールした選手がさほど苦しそうな顔もせず命にも別状なさそうな様子からして、仮に彼らがゴールした瞬間に死んでしまうほど全力で走ったら記録はもっともっと伸びるのではなかろうか、と思うのは自然である。そういう発想のもと、ゴールした直後に死ぬという前提で走る「デス・マラソン」という競技が生まれ、近年脚光を浴びつつある。2016年のリオデジャネイロ・オリンピックから正式種目となる模様で、リオ市民は今から「デスレース2016年」と呼んで期待に胸を膨らませている。本番ではゴール近くに有名選手の屍の山ができると思われ、その有様はまさに「つわものどもが夢のあと」であり、われわれは現代の義経の最期、あるいは藤原三代の盛衰を目の当たりにできるのだ。しかしこの競技、途中けがなどで棄権すると「死ぬのが怖いのか」と強烈なバッシングを浴びること必至で、日本陸上競技連盟は選手に脇差を持たせ、棄権した場合はその場で切腹するよう指示している。


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快文書作成ユニット(仮)
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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

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