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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
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2024/11/21 (Thu) 18:18:34

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No.645
2013/05/15 (Wed) 00:19:37

 篝火(かがりび)の影しるければうばたまの夜河の底に水も燃えけり  紀貫之

 塚本邦雄のアンソロジー『王朝百首』で知った作品。かがり火の光がくっきりとしているから、夜の川面にそれが映って、あたかも川底の水が燃えているかのようだ、といっている。自分は詩歌を読むとき頭が理系に働くのか、恋の歌などよりはこうした、自然の中にシンメトリー等の美しさを発見した喜びを歌ったものに心惹かれる。
(ところで塚本邦雄によると小倉百人一首には優れた歌はひとつもないという。おかきで有名なお菓子メーカー「小倉山荘」の関係者が塚本の読者でないことを祈ろう。)


月下獨酌  李白

花間一壺酒 獨酌無相親
擧杯邀名月 對影成三人
月既不解飮 影徒隨我身
暫伴月將影 行樂須及春
我歌月徘徊 我舞影零亂
醒時同交歡 酔後各分散
永結無情遊 相期邈雲漢

花の間で酒壺をひとつ置き 友もいないから独り酒を飲む
杯を挙げて名月を迎え 自分の影も合わせれば仲間は三人だ
しかし月は酒を飲む楽しみを知らないし 影は自分に従って動くだけ
だがまあ月と影とを相手に 今宵はぜひとも春の楽しみを味わおう
わたしが歌うと月はさまよい わたしが舞えば影もふらふら踊りだす
正気のうちはこうして一緒に悦びあっているが 酩酊したあとはめいめいばらばらになってしまう
しかし月と影とわたしの三人は世俗を離れた遊び仲間のちぎりを永久に結ぶ 落ち合う約束の場所は天の川のはるか彼方だ

 有名な李白の詩だが、これも「はじめは一人だった、月を見つけて二人になった、そして影も見つかって三人になった」というのが、僕には「認識主体がいたから世界が始まった」という宇宙観を思い起こさせ、また一つ、二つ、三つと数えることが数学の始まりでもある、といったような理系的な面白さを感じるのである。
 もちろんこの詩は酒の徳と愉しみを詠って酔余の幻想を極大にまで拡大してみせた李白一代の傑作であって、これを味わうのに読者が理系だの文系だのといった区別などまるで要しないことはいうまでもない。


宇治川を船渡せをと喚(よ)ばへども聞えざるらし楫(かぢ)の音(と)もせず 作者不詳(万葉集巻七・一一三八)

 これまでにも何度か取り上げた歌である。夜に宇治川の岸に来て、船を渡せと呼ぶけれども、聞こえないのか、こいでくる櫂(かい)の音がしない、と言っている。それだけの歌だが、闇のなか河の向こうで何が起こっているのか推測するしかない、そこで何が起こっているのか分からない、というところが闇に覆われた空間の広大さを思わせ、僕はそこに宇宙的な広がりを感じるのである。ブルックナーの交響曲も連想するし、またいつくるか分からない船を闇の中で待っている情景は、闇を宇宙にたとえるなら、素粒子物理学の巨大な実験装置「スーパーカミオカンデ」が太陽から飛来する微細なニュートリノを静かに待ち続けるのにも似ている。
 あと絶対に面白いと思ってtwitter やmixiにアップした発言に意外に何の反応もなく、茫然と待ちつくすさまにも似ていなくもない。

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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

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