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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/21 (Thu) 17:43:19

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No.66
2009/10/16 (Fri) 03:21:19

エドガー・アラン・ポオの「赤死病の仮面」という短編が大好きなのだけれど、これが映画化されたものを最近観た。
ロジャー・コーマン監督、ヴィンセント・プライス主演による「ポオ・シリーズ」の一篇で、1963年撮影の作品。映画は、色彩豊かでキレイな映像だったけれど、僕は原作のほうが好きだなと思った。

ある国で「赤死病」という死の伝染病が猛威を振るい、民衆の半ばが死に絶えようというとき、領主のプロスペロ公はその惨状を無視して宏大な城郭に閉じこもることにした。赤死病も堅固な城郭の中までは入り込んでこないだろうと高をくくり、千人ばかりの貴族や貴婦人を呼び寄せ、敢えて陽気な酒宴を毎夜くりかえしていた。ある日、城内で壮大な仮装舞踏会が開かれることになった。

それが催されることになった七つの部屋は美しく豪華きわまりない。七つの部屋は不規則に折れ曲がってつながっており、東の端の部屋は青色を基調とし、壁掛けや装飾品はすべて青。次は全ての物が紫色になっている紫の部屋、続いて緑の部屋、オレンジの部屋、白の部屋、すみれ色の部屋、最後は黒の部屋。各部屋の壁にはおのおのの色に合わせたステンド・グラスが嵌めてあり、それは七つの部屋に沿った廊下に面していて、廊下に置かれた幾つものかがり火で外から照らされている。色ガラスを通して差し込んでくるその光で、青の部屋はいっそう青く、紫の部屋はいっそう紫に輝き、宴をさらに妖しく演出している。

西の端の黒い部屋には黒檀の巨大な時計があり、それが一時間毎に陰鬱な音で鳴り響くたび、にぎやかに騒ぎ踊っていた参加者も不吉な面持ちで沈黙してしまう。鳴り終われば元通り楽しげな雰囲気に戻り、宴はえんえんと続く。最後は不気味な仮面の男とともに、この部屋にも赤死病が入り込んできて、舞踏会の人々もすべて死に絶える。


と、こんな感じの話だった。外の世界で荒れ狂う伝染病を無理に忘れようとして、酒や音楽で浮かれ騒ぐ人たちの姿は不気味でもあり、ときに身につまされるような気もする。借金に追われたり、やるべき仕事をほったらかしにして享楽的な生活を送っている、そんな自分に気づいた瞬間とか。



建てもの探訪

ポオの小説や、それを映像化したものに登場する建物には、美しい調度や妖しげな小物もあいまって、いつも魅力を感じる。

僕は「渡辺篤史の建てもの探訪」という番組が好きで、いつも見ているのだけど、ポオの世界に出てくるような建物が紹介されたら面白いと思う。
長寿番組で、渡辺篤史さんもすでに建てものレポートの大ベテランなわけだけど、ときにはつまらないと感じつつレポートしている場合もあるだろう。このあいだ見たときは、二階に上がったところにある「階段のフード」の斜面をほめたたえ、それにもたれかかって天井を見て「うわー、いいですねぇ」と言って、そこに付いていた小棚を見るや「お! これ取り外しが出来るんですねぇ。いやなんとも小粋で素晴らしい」と、執拗にその斜面で話を膨らませていて「渡辺さんも今回は時間をつぶすのに苦心しているな」と思った。

ポオ風の建物ならそんな気苦労は要らないだろう。玄関を入ったら、いつもなら「下駄箱がいかに機能的に出来ているか」のような賞賛をしなきゃいけないけど、この建物なら入るなり迫力ある地下室に直行。先祖伝来の拷問用具を鑑賞。渡辺さんはプロだから、ひるまずいつもの笑顔をまったく崩さないで「お、私もこういうものには目がないほうでしてねえ」と言うだろう。
「この台も趣きがあっていいですね。横になってもいいですか? うわー、あの天井から釣り下がっている巨大な三日月形の刃物! 趣きがありますねえ」
振り子状の刃物が勢いよく左右に揺れながら下がってきても、目を細めながらにこやかに、
「建築家のこだわりを感じます」。

二階に上がるとそこはリビング。上方にはロフト状の空間があり、そこに登ってみる渡辺さん。いつもだと、だいたいその家の子供がチョコンと机に向かっていて「どうだい、こんな家だと勉強も進むだろ」のようなセリフが出てくる。しかしこの建物では、ロフトにはほとんど素っ裸の若い男女が大勢横になっていて、アヘンか何かを吸って虚ろな目をしている。渡辺さんはこれにも全く動揺せず「うわー」と叫びながら女体の群れにおどりこむだろう。自分もアヘンを吸わせてもらい、美女のお腹を枕にして「いや、まったく極楽です」。

ポオといえば最後はやはり「呪われた家の破滅」ということで、失火で燃えていく建物が見たいところ。邸宅がぼんぼん燃えさかり、渡辺さんは落ちてきた梁の下敷きになっても汗ひとつかかず、笑顔でレポートをしめくくる。
「いかがでしたでしょうか、閑静な中にも歴史の重みを感じさせるアッシャー邸。延床面積30000平米、建築費202億円、坪単価250万円」
炎上する建物をバックに、いつものように小田和正の平和的なエンディング・テーマ。 
「どんなに小さな声でも きっといつもきいてるから♪」
で、次週は何事もなかったように普通の家を紹介する。


ってふざけた話ですみません。断っておきますが「建てもの探訪」は大好きです。映画「赤死病の仮面」を観た翌朝にこの番組を見たものだから、つまらない妄想が膨らんでしまったようです。

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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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