誰も読まないかも知れないが、今日はガロア理論を軸に代数系の話でも書こう。
「集合」というのを高校数学で習ったと思う。集合とはただ「ものの集まり」のことである、という理解で差支えない。
a, b, c という3つのものの集まりを A と名付けるとき、われわれは
A = { a, b, c }
のように記す。また a が 集合 A の要素であることを a ∈ A と表す。
代数系とは集合の要素間に + とか×とか何らかの演算が定められているようなものである。
数学でしばしば登場する代数系に群、環、体がある。
まず群について説明しよう。
集合 G が群であるとは、G のどの要素 a, b(∀a,b ∈ G のように略記することがある)に対しても a * b という G の要素が存在して、次の3条件を満たすことである:
(1) G のどんな3要素 a, b, c に対しても
( a * b ) * c = a * ( b * c )
が成り立つ。
(2) e という G の要素があって、G のどんな要素 a に対しても
a * e = e * a = a
が成り立つ。
(3) G のどんな要素 a に対しても a^(-1) という G の要素が存在しており
a * a^(-1) = a^(-1) * a = e
が成り立つ。■
(2)の e のことを群 G の単位元という。(3)の a^(-1)のことを a の逆元という。
また注意しなければならないのは群 G の要素 a, b に対して必ずしも
a * b = b * a は成り立たなくてもよいことである。
a * b = b * a がつねに成り立つような群のことを可換群、またはアーベル群という。
(アーベルは19世紀のノルウェーの数学者の名)。
群の例をいくつか挙げる。
(例 1) たとえば上の * のことを + だと思って G を整数全体の集合( Z で表す)だと思えば Z は群となる。というのも明らかにどんな整数 a, b, c に対しても ( a + b ) + c = a + ( b + c ) だから(1)が成り立つし、(2)の単位元 e は 整数 0 がこの役割を果たす。つまりどんな整数 a に対しても
0 + a = a + 0 = a. よって Z の単位元は 0 である。そして整数 a の逆元は - a である:
a + ( - a ) = ( - a ) + a = 0.
以上で整数全体の集合 Z は足し算 + によって群となることがわかった。
また整数 a, b に対しつねに a + b = b + a だから Z は足し算(和)に関してアーベル群である。 (例 2) 有理数全体から 0 をのぞいた集合(これを Q'で表そう)は掛け算×によって群となる。有理数とは平たく言えば分数のことで a/b ( a, b は整数で b≠0 ) の形をした数のことである。有理数 p, q, r が (p×q)×r = p×(q×r) を満たすのは明らかである。またどんな有理数 p に対しても 1×p = p×1 = p だから 1 が単位元となっている。また有理数 a/b が 0 でなければ a≠0 で有理数 b/a が考えられ (a/b)×(b/a) = (a×b)/(b×a) = 1 となるから a/b の逆元は b/a である。また有理数 p, q に対してつねに p×q = q×p だから、Q'は掛け算(積)に関してアーベル群である。
(例 3) 行列式が 0 でない n 次行列の全体 GLn(K)( K は行列の成分が属する集合で、さしあたっては実数全体 R または複素数全体 C とする)
簡単のためここでは、行列式が 0 でない実数を成分とする 2 次の行列の全体 GL2(R) を考えよう。まず「実数を成分とする2次の行列」とは 4つの実数 a, b, c, d を正方形に並べ左右からカッコではさんだ
( a b )
( c d )
のようなもののことである。本当は上下に ( を2つ並べるのではなく、2行にまたがるようなカッコではさむのだが、ここでは上手く表せない。a, b, c, d をこの行列の成分という。行列どうしの足し算は簡単で、各成分どうしを足せばよいのである。
( a b ) + ( e f ) = ( a + e b + f )
( c d ) ( g h ) ( c + g d + h )
と定められる。行列どうしの掛け算はもうすこし複雑で
( a b )( e f ) = ( ae + bg af + bh )
( c d )( g h ) ( ce + dg cf + dh )
と定められる。そしてこの行列の掛け算(積)について GL2(R) は群となるのである。
ここで行列
( a b )
( c d )
を A とするとき実数 ad - bc のことを A の行列式と呼び det A で表す:
det A = ad - bc.
つまり各成分が実数で det A ≠0 であるような 2 次の行列 A 全体のことを GL2(R) というのである。
さてこれが群であるというのだが、GL2(R) に属するどの行列 A, B, C に対しても
(AB)C = A(BC)
が成り立つことは計算で直接確かめられる。
( 1 0 )
( 0 1 )
という行列を2次の単位行列といい、ここでは I であらわそう。すると GL2(R) に属するどんな A に対しても
IA = AI = A
が成り立つ。つまりこの I が GL2(R) の単位元である。
さて GL2(R) の要素 A を
( a b )
( c d )
とするとき、逆元 A^(-1)は
( d/(ad-bc) -b/(ad-bc) )
( -c/(ad-bc) a/(ad-bc) )
という形をしている。つまり A^(-1)をこの形のものと定めれば
A A^(-1) = A^(-1) A = I
がなりたつのである。A^(-1)は A の逆元であるが、A の逆行列とも呼ばれる。
数学では分数の分母に 0 がきてはならないから、行列が積に関して群となるためには
det A = ad - bc ≠0 という条件が必要なことが分かるだろう。
以上で GL2(R) が積に関して群であることがわかったが、どんな自然数 n に対しても
n 次の行列について行列式を定めることができて、GLn(R) が群となることが分かる。
ただし
( 1 1 ) ( 1 0 )
( 0 1 ), ( 1 1 )
をそれぞれ A, B とするといずれも GL2(R) の要素だが
( 1 1 )( 1 0 ) = ( 2 1 )
( 0 1 )( 1 1 ) ( 1 1 ),
であるのに対し
( 1 0 )( 1 1 ) = ( 1 1 )
( 1 1 )( 0 1 ) ( 1 2 )
であるから AB ≠BA. すなわち GL2(R)はアーベル群ではない。■
集合の話で大事なことを書き忘れていた。たとえば
A = { 2, 4, 6 }, B = { 1, 2, 3. 4, 5, 6 }
という2つの集合A, B について、A の要素はどれも B の要素になっている。
言い換えれば、A は B の中に入っている。このようなとき
A は B の部分集合であるといい、A ⊂ B (または B ⊃ A)と表す。
ただしこの A ⊂ B という記号は A = B である場合も含むとする。
つまり A = { 1, 2, 3 }, B = { 1, 2, 3 } のように A = B の場合も
A ⊂ B とか A ⊃ B などと書いてもよい。
G が群で、H が G の部分集合で、H も群であるとき、H を G の部分群という。
(厳密にいうと、G が演算 * によって群をなしていて(つまり G の要素 a, b に
対して a * b が定まっていて)その単位元が e であり、G の部分集合 H も
演算 * によって群をなしていて、H の単位元も e であるとき、H を G の部分群である
という。)
ちなみに、H が G の部分群であるための条件は
(1) x, y ∈ H ならば x * y ∈ H,
(2) x ∈ H ならば x^(-1)∈ H
の2条件が成り立つことであることがわかる。
H が G の部分群であることを H < G と表すことがある。
たとえば例1の整数全体 Z のなす群において、偶数全体のなす集合
Y = { ... -4, -2, 0, 2, 4, 6, ... }
は足し算 + に関して部分群となっている。
さらにたとえば上の例3の群 GL2(R) に対して、GL2(R)の要素で行列式の値が 1 であるもの全体をSL2(R) とかくと、これは行列の積について GL2(R) の部分群となっている。
さて群についてはこの程度にして、環の話に入ろう。
群の説明のときは、a と b の演算のことを a * b と表したが、
環には要素 a, b に対して 2種類の演算があり、これらを通常
a + b, ab
で表す。前者を a と b の和、後者を a と b の積という。
環の定義は次のようになる。
集合 R が環であるとは、R のどんな要素 a, b に対しても和と呼ばれる R の要素 a + b,
積と呼ばれる R の要素 ab が定まり、次の条件(1)~(6)が成り立つとき、R を環という。
(1) R のどんな要素 a, b, c に対しても
( a + b ) + c = a + ( b + c )
が成り立つ。
(2) 零(ゼロ)と呼ばれる R の要素 0 があり、R のどんな要素 a に対しても
0 + a = a + 0 = a
が成り立つ。
(3) R のどんな要素 a に対しても - a と書かれる R の要素があり
a + ( - a ) = ( - a ) + a = 0
が成り立つ。
(4) R のどんな要素 a, b, c に対しても
( ab )c = a( bc )
が成り立つ。
(5) 単位元と呼ばれる R の要素 1(ただし 1≠0)があり、どんな R の要素 a に対しても
1a = a1 = a
が成り立つ。
(6) R のどんな要素 a, b, c に対しても
( a + b )c = ac + bc,
a( b + c ) = ab + ac
が成り立つ。■
環 R の要素 a, b について必ずしも ab = ba は成り立たないが、
つねに ab = ba が成り立つ環を可換環(かかんかん)、そうでない環を非可換環という。
平たく言えば、環とは足し算、引き算、掛け算ができるが、割り算は必ずしもできないような集合である。
例えば整数全体の集合 Z は普通の和 + と積 × によって可換環となる。
また実数を成分とする2次の行列全体 M2(R)(行列式が0のものも入れる)は、行列の和と積に関して非可換環となる。
環について言うべきことは他にたくさんあるが、ここでは割愛する。
さて環は加・減・乗という演算ができる集合だが、さらに除(割り算)も出来るような集合を体(たい)と呼ぶ。ただし 0 による割り算だけは考えない。
つまり上の環の定義(1)~(6)に加え次の(7)を満たすような集合 R のことを体と呼ぶ。
(7) 0 でないどんな R の要素 a に対しても a^(-1)という R の要素があって
a a^(-1) = a^(-1) a = 1.
ただ R は環(ring)の頭文字で、体は英語で field, ドイツ語で koerper だから、ふつう体を表すときは F とか K という文字を使うことが多い。
体のもっとも簡単な例は、有理数全体の集合 Q である。Q が環であり、上の(7)も満たすことは明らかだろう。
体 K の部分集合 L が体をなしているとき、L を K の部分体、K を L の拡大体という。
(厳密には、K の部分集合 Lで、K と同じ演算で体をなしており、K と零と単位元を共有するものを体 K の部分体という、云々)
K が L の拡大体であることを K / L と書くことがある。/ はここでは割り算の意味ではなく、分かりにくい記法だが、伝統だからしかたがない。
さてさて。
群にしても環にしても体にしても「準同型写像」というものが大切になってくる。準同型写像の特別なものが「同型写像」とよばれるものである。
まず群についてこれを説明すると。
G が演算 * について群をなしており、H が演算 # について群をなしているとする。
つまり G の要素 a, b に対しては演算 a * b が定まっており、H の要素 α,βに対しては演算α#βが定まっている、とする。
このとき G から H への写像 f ( つまり f は G の要素に H の要素を対応付ける規則で、a ∈ G に対しα ∈ H が対応付けられているとき f(a) = αとかく)があって、G の要素 a, b に対し
f(a * b) = f(a)#f(b) ……@
となっているとき、写像 f: G → H を 群 G から H への準同型写像という。
@で G と H の演算がどういうものか明らかなときは * や # を取り払ってしまって
f(ab) = f(a)f(b)
のようにかくことが多い。
そして準同型写像 f: G → H が全単射であるとき、f を同型写像(または単に同型)といって G と H は同型であるといい、
G ≅ H のように表す。
で、f が全単射とは
(1) a ≠ b ならば f(a)≠f(b),
(2) どの H の要素 c に対しても f(a) = c となる G の要素 a がある。
の 2 条件が満たされることである。
環の準同型写像については次のようになる。R と S を環とし、
f: R → S が(環)準同型写像であるとは、R の要素 a, b に対しつねに
(1) f(a + b) = f(a) + f(b),
(2) f(ab) = f(a)f(b),
(3) f(1') = 1" (ただし 1'は R の単位元、1"は S の単位元)
の3条件が満たされることである。ただし R の加法・乗法と S の加法・乗法は同じ表し方をしている。
そして(環)準同型写像 f: R → S が全単射であるとき、f を同型写像(または単に同型)といって R と S は同型であるといい、R ≅ S のように表す。
体の準同型写像については、体は同時に環でもあるので、体 K, L に対し写像 f: K → L が環の準同型写像になっているときと定める。ただし K, L が体であるときは、環準同型の定義(3) f(1') = 1"は(1),(2)から自動的に出てくる。体の同型についても群・環のときと同様である。
さて群の説明のとき、群 G のすべての要素 a, b について
a * b = b * a ……(¥)
が成り立つとき G をアーベル群であるといったが、群においては(¥)がつねに成り立つとき、
* という演算を足し算と同じものと見なして、* の代わりに + とかくことがしばしばある。
とくに + で演算をあらわすとき、G はアーベル群ともいうが「加群」とよぶほうがむしろ多い。
そしてわれわれが群を「加群」というとき、その加群の外から別な代数系が作用している、というニュアンスをしばしば含んでいる。
V を加群とするとき、環 R が外から作用しているときは V を R 加群と呼び、とくに加群 V に体 K が外から作用しているとき
は V を「K 上のベクトル空間」と呼ぶ習わしである。
正確にいうと、加群 V が体 K 上のベクトル空間であるとは、V の要素 v と K の要素λに対し V の要素λv が定まっていて、
V の要素 u, v と K の要素λ,μについてつねに
(1) (λμ)v = λ(μv),
(2) (λ+μ)v = λv + μv,
(3) λ( u + v ) = λu + λv,
(4) 1v = v ( 1 は K の単位元)
の4条件が満たされていることである。
V が K 上のベクトル空間であるとき、V は基底と呼ばれる要素の組を含んでいることが分かる。つまり V の要素の組 { v_1, v_2, v_3, ... , v_n } が V の基底であるとは
(1) V のどんな要素 w に対しても次式を満たすような K の要素 c_1, c_2, ... ,c_n がある:
w = c_1v_1 + c_2v_2 + ... + c_n v_n.
(2) K の要素 c_1, c_2, ... ,c_n に対し、もし
c_1v_1 + c_2v_2 + ... + c_n v_n = 0
となるならば c_1 = c_2 = ... = c_n = 0
の2条件を満たすことである。V に対して基底の取り方はいろいろあるが、今の場合その個数が n 個であることは一定している。そこでベクトル空間 V の次元は n であるといい dim V = n などと表す。
さて体 K が体 L の拡大体であるとき、L は K に含まれているのだから、L の要素のと K の要素の積は当然 K に含まれている。そういうわけで、K を体 L 上のベクトル空間とみなすことができる。このときのK の次元を K / L の拡大次数といい [ K : L ] と表す。
ところで2つの体の間の同型写像を上で定義したが、体 K から体 K への同型写像を K の自己同型といい、K の自己同型(写像)全体の集まりを Aut(K) であらわす。Aut(K) の要素 f, g について、それらの積 fg を次のように定める。つまり K の要素 a に対し (fg)(a) = f(g(a)) とする。Aut(K) はこの積によって群となる。単位元は K の恒等写像、逆元は逆写像である。
さて K / F すなわち体 K が体 F の拡大体であるとき、K の自己同型 f: K → K で
F の元 a に対してはつねに f(a) = a となっているものを「 K の F 上の自己同型」とよび、それらの全体を Aut(K/F) で表す。Aut(K) のときと同様に積を定めれば Aut(K/F) も群となる。
K の自己同型写像のうち F の要素を動かさないものをとくに Aut(K/F) としたのだから
Aut(K/F) ⊂ Aut(K) である。
さて G を Aut(K) の部分群とするとき、G のどんな要素 g(これは K の自己同型写像の1つ)に対しても g(a) = a であるような K の要素 a の全体を K^G とかき( K^G は体をなす)、これを G の固定体という。つまり
K^G = { a | a∈K, ∀g∈G, g(a) = a }.
さて H = Aut(K/F) とおいたとき、H の固定体 K^H はどんな集合になるだろうか。Aut(K/F) の定義からして K^H = F ではないかと思われるかも知れないが、一般にはそうではない。K^H ⊃ F はつねに成り立つが、とくに K^H = F すなわち K^Aut(K/F) = F となるようなとき、体の組 K/F をガロア拡大という。そして K/F がガロア拡大である場合とくに Aut(K/F) を Gal(K/F) で表し、これを拡大 K/F のガロア群という。
さてガロア理論のそもそもの動機は
f(X) = X^n + a_1 X^(n-1) + a_2 X^(n-2) + ... + a_n
に対して代数方程式 f(X) = 0 の解の公式を見つけたいというものだった。
係数 a_i が複素数の場合、f(X) = 0 が複素数の範囲に(重複を込めて)n 個の解を持つということはすでにガウスによって示されていたから、
f(X) = ( X -α1)( X - α2)...( X - αn )
という因数分解を与える α1, ... , αn が存在することは言える。ただ解の公式を与えるということは、これらα1, ... ,αn を f(x) の係数 a_1, a_2, ... , a_n の四則と開ベキ(m√:m 乗根 )による有限個の組み合わせて表示するということを意味する。
(ここで考えている係数を実数や複素数とは限らない一般の体の要素として話を進めることにする。一般の体 K に対してもその代数的閉包 Ω が存在することが知られているから、各 αi はΩの要素として存在する。)
いま体 K が係数 a_1, ... , a_n を含んでいるとしよう。α1, ... , αn は含まれていないとする。
このとき、集合 K に α1, ... , αn を付け加えた最小の体を f(X) の K 上の最小分解体といい、
K (α1, ... , αn ) とかく。さて代数方程式の最小分解体については、拡大 K (α1, ... , αn)/K は
つねにガロア拡大であることが知られている。さて M = K (α1, ... , αn) としたときの拡大 M/K の
ガロア群 Gal(M/K)が問題なのである。
群の一種に可解群というものがあるが、ガロア理論によると
「方程式 f(X) = 0 に解の公式が存在する ⇔ ガロア群 Gal(M/K) が可解群である」
なのである。
いちおう可解群について説明しておこう。
群 G の部分集合 S に対し、G の部分群で S を含むような最小の群を S で生成された部分群といい、<S>で表す。具体的には、S に属する要素の逆元の全体を S^(-1) とかき、和集合 S ∪ S^(-1) の要素を有限個かけあわせてできた要素の全体が <S> である:
<S> = { s_1s_2...s_n | n ≧0, s_i∈ S ∪ S^(-1)}
( n = 0 のときは s_1s_2...s_n は単位元 e を表す)
さて一般に群 G の要素 a, b について a^(-1)b^(-1)ab の形の元を交換子という。
そして G のすべての交換子の集合で生成された G の部分群を G の交換子群といい D(G) で表す。
次に D(G) に含まれるすべての交換子の集合で生成された D(G) の部分群を D_2(G) とする。
同じことを繰り返し D_3(G), D_4(G), ... と作っていったとき、ある m に対し D_m(G) = { e }
( e は G の単位元)となるとき、もとの G を可解群という。
ところで f(X) = X^n + a_1 X^(n-1) + a_2 X^(n-2) + ... + a_n を考えたときの、上のガロア群
Gal(M/K) は具体的にどういう群になるのか。それは n 次の対称群 Sn というものになる。
対称群 Sn については n = 3 ぐらいで考えると分かりやすい。
3次の対照群 S3 とは 3つのものの並べ替えを要素としていて、つまり
( 1 2 3 ) ( 1 2 3 ) ( 1 2 3 ) ( 1 2 3 ) ( 1 2 3 ) ( 1 2 3 )
( 1 2 3 ), ( 1 3 2 ), ( 2 1 3 ), ( 2 3 1 ), ( 3 1 2 ), ( 3 2 1 )
の計6個の要素からなっていて、左から s_1, s_2, ... , s_6 とするとき
積はたとえば s_2s_3 の場合、s_2, s_3 の順に数を置換して 1→1→2, 2→3→3, 3→2→1 となるから結局
s_2s_3 = ( 1 2 3 ) = s_4
( 2 3 1 )
のような群演算となる。
一般に Sn の要素の個数は n 個のものの並べ替えの総数だから n ! となる。
そして、n ≧ 5 のとき Sn は可解群でないことが知られており、
「一般に5次以上の代数方程式には解の公式は存在しない」ということになるのである。
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