『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.81
2009/10/16 (Fri) 04:28:39
尋隠者不遇 賈島
松下問童子
言師採藥去
只在此山中
雲深不知處
松下にて童子に問えば
言う 師は薬を採らんとして去れり
只だ此の山中に在らんも
雲深くして処を知らずと
松の下で童子に会い、隠者はどこにおられるかとたずねたら、
童子は答えた。――先生は薬草をとりに出かけられました。
この山の中におられるにはちがいありませんが、
雲が深いことですから、どこにおいでになるやら、場所はわかりません。
学校で働き出して驚いたことのひとつに、職員室である先生あてに電話がかかってきて、そこにその先生がいなかった場合、みな「おられませんね」の一言ですましてしまう、ということがあった。またたいていは、あとでその先生に「誰それから電話がありましたよ」と告げもしない。なぜ、どこに行っていて、何時ごろ帰ってくる予定で不在であるのか、そして帰ってきたら折り返し電話させようか、といったことはほとんど言わなくていい職場なのである。
そういえば自分がこれまで通ってきた学校でも、先生というのは、大学になるととくにだが、つかまらないときは全然つかまらない存在だった。とにかく誰も居場所を知らないのである。
上の詩は、素朴だけど以前から好きだった作品。大昔の中国でも、先生というのはどこにいるやらわからない人々だったのかと思うと、改めて面白く感じる。
(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
松下問童子
言師採藥去
只在此山中
雲深不知處
松下にて童子に問えば
言う 師は薬を採らんとして去れり
只だ此の山中に在らんも
雲深くして処を知らずと
松の下で童子に会い、隠者はどこにおられるかとたずねたら、
童子は答えた。――先生は薬草をとりに出かけられました。
この山の中におられるにはちがいありませんが、
雲が深いことですから、どこにおいでになるやら、場所はわかりません。
学校で働き出して驚いたことのひとつに、職員室である先生あてに電話がかかってきて、そこにその先生がいなかった場合、みな「おられませんね」の一言ですましてしまう、ということがあった。またたいていは、あとでその先生に「誰それから電話がありましたよ」と告げもしない。なぜ、どこに行っていて、何時ごろ帰ってくる予定で不在であるのか、そして帰ってきたら折り返し電話させようか、といったことはほとんど言わなくていい職場なのである。
そういえば自分がこれまで通ってきた学校でも、先生というのは、大学になるととくにだが、つかまらないときは全然つかまらない存在だった。とにかく誰も居場所を知らないのである。
上の詩は、素朴だけど以前から好きだった作品。大昔の中国でも、先生というのはどこにいるやらわからない人々だったのかと思うと、改めて面白く感じる。
(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
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No.80
2009/10/16 (Fri) 04:25:22
月の砂漠
加藤まさを作詞
月の砂漠をはるばると
旅の駱駝がゆきました
金と銀との鞍置いて
二つならんでゆきました
金の鞍には金の甕
銀の鞍には銀の甕
二つの甕はそれぞれに
紐で結んでありました
さきの鞍には王子様
あとの鞍にはお姫様
乗った二人はおそろいの
白い上着を着てました
曠(ひろ)い砂漠をひとすじに
二人はどこへゆくのでしょう
朧にけぶる月の夜を
対の駱駝はとぼとぼと
沙丘を越えて行きました
黙って越えて行きました
この古代の歌は、人類が月に自由に行き来していたころに成ったものであろう。
「月の砂漠」は、いうまでもなく月面上の砂漠のことである。「旅の駱駝」は、文字通り動物の駱駝ではなく、月面四輪駆動車を指す詩的表現と取るべきであろう。金銀それぞれの甕は酸素タンクであって、月で起こったと考えられる市民革命の結果、脱出を図った王族がすなわち「王子様とお姫様」である。彼らは行く当てもなく、酸素も底を尽きようとしており、彼らの絶望は涙を誘うほどである。しかしやがて、砂丘の果てにひそむ反革命の一派と合流し、新たに王国を立て、共和国と対立したことは誰でも知っている。両国間で起こった破滅的な核戦争の結果、こんにち月と呼ばれる衛星はあとかたもなく無くなってしまった。いまでは絶滅しつつある狼たち、彼らは毎夜どこへ向かって吠えればいいというのか。兎は何を見て跳ねればいいというのか。故国を失った王族たちの孤独の中に、月そのものの喪失が予感されているのを見逃してはならないであろう。
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加藤まさを作詞
月の砂漠をはるばると
旅の駱駝がゆきました
金と銀との鞍置いて
二つならんでゆきました
金の鞍には金の甕
銀の鞍には銀の甕
二つの甕はそれぞれに
紐で結んでありました
さきの鞍には王子様
あとの鞍にはお姫様
乗った二人はおそろいの
白い上着を着てました
曠(ひろ)い砂漠をひとすじに
二人はどこへゆくのでしょう
朧にけぶる月の夜を
対の駱駝はとぼとぼと
沙丘を越えて行きました
黙って越えて行きました
この古代の歌は、人類が月に自由に行き来していたころに成ったものであろう。
「月の砂漠」は、いうまでもなく月面上の砂漠のことである。「旅の駱駝」は、文字通り動物の駱駝ではなく、月面四輪駆動車を指す詩的表現と取るべきであろう。金銀それぞれの甕は酸素タンクであって、月で起こったと考えられる市民革命の結果、脱出を図った王族がすなわち「王子様とお姫様」である。彼らは行く当てもなく、酸素も底を尽きようとしており、彼らの絶望は涙を誘うほどである。しかしやがて、砂丘の果てにひそむ反革命の一派と合流し、新たに王国を立て、共和国と対立したことは誰でも知っている。両国間で起こった破滅的な核戦争の結果、こんにち月と呼ばれる衛星はあとかたもなく無くなってしまった。いまでは絶滅しつつある狼たち、彼らは毎夜どこへ向かって吠えればいいというのか。兎は何を見て跳ねればいいというのか。故国を失った王族たちの孤独の中に、月そのものの喪失が予感されているのを見逃してはならないであろう。
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No.79
2009/10/16 (Fri) 04:22:50
アラハン世代(アラウンド・ハンドレッド、100歳前後の人のこと)に今、最先端のハイテクを駆使した自動両替機能つき財布「小金くん」が人気である。これは一万円札、五千円札、千円札など紙幣を入れてボタンを一つ押すだけで、ランダムに五百円玉、百円玉、十円玉など貨幣に両替してしまうという財布である。これがなにゆえいま高齢の方々に人気であるか。この財布のユーザーの一人、桑畑隲蔵(くわばたけ・じつぞう、101歳)さんの話を聴いてみよう。
桑畑隲蔵氏の話
子どもっていうのは、意外と高額紙幣を喜ばないもんなんじゃ。百円玉、十円玉のチャリチャリする音がいいって言うんじゃな。そりゃわしらなど年寄りは万札が好きなもんじゃが、子どもの素直な感性は世の中の約束事に縛られやしない、貴金属が好きなんじゃな。そこでお小遣いは紙幣よりも貨幣を喜ぶ、このごろなどはひ孫たちにやるお年玉も、この「小金くん」で紙幣を小銭にバラしてからやるようにしてるんじゃ。二十人おるひ孫たちもみな満足しとるよ。
「わーい、おじいちゃん、お小遣いちょうだい!!」縁側で日向ぼっこしている桑畑氏の家の庭に、今日もひ孫たちがやってくる。
「そうかそうか。ミツオにヤスオにタミコにトミコにゲンザブロウ、今日も元気でわしゃ嬉しいよ、長生きはするもんじゃて。さーてジャリジャリ小銭が出てくるぞう」
桑畑氏は一万円札を「小金くん」に入れ、ボタンを押す。するとザクザクザク、紙幣は小銭に早代わり、財布はみるみる膨らんでいく。
「よーしみんなにやろう」
ミツオにヤスオにタミコにトミコにゲンザブロウは満足して帰っていく。きっとどこかの駄菓子屋にいくのであろう。ひ孫たちの健やかに育つ姿を見ると元気百倍、きょうも空気がうまい隲蔵氏であった。
桑畑真知子(くわばたけ・まちこ、32歳)さんの話
そりゃおじいちゃん、ひ孫たちがかわいいっていうのは分かりますよ。でもうちでは毎月決まった額のお小遣いをあげてます。それをどう使うか、子どもたちが自分で考えて、無駄遣いして困った月は「しまった、来月はもっと考えてお小遣いを使おう」と工夫する、それが教育にいいと思ってるんです。それをおじいちゃんが、「小金くん」ですか、ほいほいと小銭を子どもたちにやってしまう、お金がなくなったらおじいちゃんの所へいけばいいやって、そりゃなるでしょう。ホント迷惑していますわ。
これまでどちらかというとお金を貯め込む一方だったアラハン世代、「小金くん」が膠着した日本経済を刺激する突破口となるか。
「小金くん」のご注文はこちら→ 0120-577-590 (ホントに電話しないでネ)
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桑畑隲蔵氏の話
子どもっていうのは、意外と高額紙幣を喜ばないもんなんじゃ。百円玉、十円玉のチャリチャリする音がいいって言うんじゃな。そりゃわしらなど年寄りは万札が好きなもんじゃが、子どもの素直な感性は世の中の約束事に縛られやしない、貴金属が好きなんじゃな。そこでお小遣いは紙幣よりも貨幣を喜ぶ、このごろなどはひ孫たちにやるお年玉も、この「小金くん」で紙幣を小銭にバラしてからやるようにしてるんじゃ。二十人おるひ孫たちもみな満足しとるよ。
「わーい、おじいちゃん、お小遣いちょうだい!!」縁側で日向ぼっこしている桑畑氏の家の庭に、今日もひ孫たちがやってくる。
「そうかそうか。ミツオにヤスオにタミコにトミコにゲンザブロウ、今日も元気でわしゃ嬉しいよ、長生きはするもんじゃて。さーてジャリジャリ小銭が出てくるぞう」
桑畑氏は一万円札を「小金くん」に入れ、ボタンを押す。するとザクザクザク、紙幣は小銭に早代わり、財布はみるみる膨らんでいく。
「よーしみんなにやろう」
ミツオにヤスオにタミコにトミコにゲンザブロウは満足して帰っていく。きっとどこかの駄菓子屋にいくのであろう。ひ孫たちの健やかに育つ姿を見ると元気百倍、きょうも空気がうまい隲蔵氏であった。
桑畑真知子(くわばたけ・まちこ、32歳)さんの話
そりゃおじいちゃん、ひ孫たちがかわいいっていうのは分かりますよ。でもうちでは毎月決まった額のお小遣いをあげてます。それをどう使うか、子どもたちが自分で考えて、無駄遣いして困った月は「しまった、来月はもっと考えてお小遣いを使おう」と工夫する、それが教育にいいと思ってるんです。それをおじいちゃんが、「小金くん」ですか、ほいほいと小銭を子どもたちにやってしまう、お金がなくなったらおじいちゃんの所へいけばいいやって、そりゃなるでしょう。ホント迷惑していますわ。
これまでどちらかというとお金を貯め込む一方だったアラハン世代、「小金くん」が膠着した日本経済を刺激する突破口となるか。
「小金くん」のご注文はこちら→ 0120-577-590 (ホントに電話しないでネ)
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目次
上段の『☆ 索引』、及び、下段の『☯ 作家別索引』からどうぞ。本や雑誌をパラパラめくる感覚で、読みたい記事へと素早くアクセスする事が出来ます。
執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 ブログ引っ越しました。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
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セカイノハテから覗くモノ
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