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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/24 (Sun) 21:29:12

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No.60
2009/10/16 (Fri) 01:35:55

以前は品のよい乗客が多かった阪急電車も、京阪神での麻薬汚染の拡大も影響して、車内での非行少年や犯罪者の乱行が目立つようになってきた。
その日の午後五時ごろ、宝塚線・急行梅田行きの後ろから二両目は、降魔学園の男子生徒たちで占領されていた。喫煙するものはもちろん、堂々と大麻を吸引する者もいる始末である。こういう日は、車掌も恐れをなして注意しないのが通例になっていた。また、普通の人間ならこうした車両には乗り込まなかった。しかし蛍池駅で、事情を知らない盲目の少女が、運悪くこの不良の巣窟と化した車両に乗り込んだのだった。
「おい、スケだぜ。しかも上玉だ!」
不良の一人は叫び、ナイフを少女の前でちらつかせて
「おう、言うことを聞きなよ。痛い目を見たくなかったらよ」
しかし少女の眼はナイフを追ってはいなかった。
「このスケ、目が見えないんだぜ! こりゃ面白いや。めくらのスケとやるってのも乙なものだぜ」
少年は、少女を座席のところで四つん這いにさせ、スカートをまくり上げた。そのときである。一つ目で醜く黒ずんだ顔の車掌が、少年の首根っこを後ろからつかんだ。
「快適な車内の環境づくりにご協力ください。いや、協力しろ。といってもお前らには無理だろうな。麻薬で煙った体の中の風通しを良くしてやる」
そういってモンスターは、少年の背中にパンチし、そのこぶしは相手の体を貫通し胸から突き出た。正面にいた他の少年たちは、顔に血しぶきや生暖かい胃の内容物を浴びてあっけに取られた。しかし筋金入りのこの鬼畜どもは、すぐに戦闘意欲を燃やし、鉄パイプでモンスターに襲い掛かった。しかしパイプはモンスターの頭に直撃すると、ぐにゃりと曲がってしまい相手になんらのダメージも与えられなかった。飴細工のようにU字型に曲がった鉄パイプを奪ったモンスターは、その両端を攻撃してきた少年の両目に突き刺し、車両の天井に穴を開けて、列車に電力を送る架線にパイプを接触させた。すさまじい電気ショックがパイプを通じて少年の体をつらぬき、彼はあっという間に焦げ臭い匂いを発するしかばねと化した。
それに肝をつぶした不良少年たちは、十三駅で全員車両から逃げ出した。

あとに残った盲目の少女とモンスター。
「あなた、私の命の恩人なのね」少女は、手探りでモンスターの顔に触れた。光を失ったその目は、しかし美しく輝き、頬をばら色に染めていた。モンスターは自らの醜悪な顔のため、こういう状況に不慣れだったが、少女に顔を自由に触らせた。
「やさしそうなお顔……お礼がしたいわ。私のうちに来てくださらない?」
モンスターは彼女とともに、その住まいに向かった。そして彼女は、モンスターにとって生れてはじめての恋人となった。

(つづく)

(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
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No.59
2009/10/16 (Fri) 01:34:12

阪急電車・急行河原町行きの最後尾の車両で、不良少年たちと正義感あふれる青年との間で、激しい口論が起こった。
「君たちはなんだ。お年寄りがこんなに前に立っているのに席を譲ろうとせず、しかも大股開きで場所を取って! 電車でのマナーを守れ!」
「うっせえ! 俺たちにそんな口をたたいてタダで済むと思ってんのか!?」
黒い革ジャンを着た少年の一人が、ふところから拳銃を出し、いきなり青年の胸に向けて発砲した。青年は胸の真ん中から血しぶきを飛び散らせて倒れ、ぴくぴくと痙攣してこと切れた。
そのときである。
片手にモップを持ち、一つ目で真っ黒な顔をした車掌が現れ、銃を持った少年の手をつかんだ。
「いて、いてて!」
少年の苦悶の声を無視して、車掌はその腕をひねり上げ、勢いよく引っ張ると、少年の右手は肩からちぎれてしまった。血が血管からぴゅっぴゅと飛び出る。
「ぎゃー!!」
「ついでに貴様のはらわたを見てやる」とつぶやいた化け物の車掌は、少年の腹に腕を突っ込み、腸をずるずると引きずり出した。少年はとっくに息絶え、大きく目を見開いて痙攣していた。乗客たちは、中には喝采を上げる者もいたが、大混乱の情況を呈していた。
「ちきしょう、俺の仲間に何てことしやがる」と、もう一人の少年が車掌に立ち向かった。その少年は空手をやっているらしく、構えがさまになっていた。しかしその突きや蹴りは、車掌には何ら痛痒を感じさせることが出来なかったらしい。逆に車掌はその少年の首根っこをつかみ、窓に彼の頭をぶち当ててガラスを破り、地下線路のコンクリートの壁に頭をがりがりとこすりつけた。猛スピードで電車は走っているから、またたくまに少年の頭蓋骨は粉砕され脳が飛び散り、頭部の半分ほどが削り取られてしまった。頭が半ば無くなったその少年の口にモップを押し込み、その車掌は烏丸駅で降りていった。

「何なんだ、今の車掌は!?」
「化け物だが、正義の味方には違いない」
乗客は口々に言いあった。その中に、新聞記者の土呂間(とろま)がいた。彼はこのモンスターに、時代が求める英雄像を見た気がした。そしてモンスターの追跡取材をしようと心に決めたのである。

モンスターが住む郊外の一軒家。
二階の自室でモンスターは、放射性廃棄物を浴びた後遺症に苦しんだ。その被害が、彼から普通の人間としての生活を奪ったかわりに、超人的な体力と正義感を植え付けたのである。モンスターは苦悶にのたうち、叫ぶ。
しかし事情を知らない彼の年老いた母親は、階下で「あの子もやっと性に目覚めたのね」と、微笑みつつつぶやくだけだった。

(つづく)

(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
No.58
2009/10/16 (Fri) 01:32:14

「まったく、俺が胴巻きに銭をいっぱい入れてたから助かったがよ、あんたらよく俺を見殺しにしたな」三十円の介が、鴨居に手をかけて言った。
「でも、ああしなければ、あなたまた人を斬ったでしょう?」と奥方。
「だからといって俺が斬られりゃどうしようもねえじゃねえか」
「あら、人を殺すより殺されたほうがいいんじゃない?」千鳩(ちばと)が言った。「わたし学校で習ったわ。そういう考え方をしてこそ、真の平和が実現できるんだって」
「けっ。人を楯にしといていう言葉か」
三十円の介らは平田の屋敷、つまり具呂藤(ぐろふじ)の隣にある家に集まっていた。

「さて皆さん、これからどうするおつもりです?」奥方が若者たちに聞いた。
「まず、伯父の行方を突き止めて奪い返します。それから……」伊瀬地(いせじ)が言った。
「それだけで十分だ。やつら、城代に罪をなすりつけようとして、なんのことはねえ、自分で罪を白状してやがるんだ。城代を奪い返せばやつらはもうそれっきりよ」と三十円の介。
「おそらくそうでしょうね。ところであなた」奥方が三十円の介に向き直った。「あなたのお名前は?」
「は? 名前ですか? 私の名前は……」三十円の介は具呂藤の庭に咲き乱れる見事な椿に目をやった。「椿……三十円の介。いや実は、故郷(くに)で借金をして返すあてがなく浪々の身でしてね。もうすぐ利子が膨れ上がって四十円の介ですが」
「まあ、面白い方ね」奥方と千鳩はくすくす笑いあった。

菊田側の軍勢が、ぞくぞくと具呂藤の屋敷に集まっていた。そこに城代が監禁されているのは間違いなかった。
「よーし、俺が菊田の側にニセの情報を教えに行こう。俺たちの軍勢が集まっているところを教えてやるんだ。どこか離れた寺にしよう。俺が山門の二階で寝ていたら敵の手勢がぞろぞろ集まってくるのが見えた。どうだ、この案は? どこかいい寺はねえか」
「光明寺。あそこなら人気もほとんどない」
「光明寺だな。具呂藤の軍勢が出払ったところを見計らって合図を送るから、お前らなだれ込んでこい」
「してその合図は?」
「火をつける。椿屋敷がぼんぼん燃え出したらやってきな」
「いけませんよ、そんな乱暴な」奥方が口を挟んだ。
「こういうのはどうかしら。椿の花を、お隣から通じている水の流れに流すの」と千鳩。
「まあ、それはいいところに気づきましたね」
「白い椿が庭の流れにいっぱい流れてくるの。きっととってもきれいだわ」
「まあ、私は赤い椿のほうが好きですよぅ」
奥方たちの会話をいらいらして聞きながら、三十円の介はふすまに書かれている文字を何度も指でなぞった。
「赤い椿や白い椿が流れてくるなんて、なんてロマンチックなんでしょう。椿と言えば私が若いころ……」奥方がなおも話を続けようとすると、三十円の介は我慢の限界に達して
「イライラするんだよこんちきしょー!!」といきなり刀を抜いて、横ざまに奥方の首に斬りつけた。
「きゃーっ」大量の鮮血が障子に飛び散り、はね飛ばされた奥方の首が床の間に転がった。
「あんた何てことするんだ!!」伊瀬地が叫ぶと三十円の介は、
「けっ。その奥方ならタフだから首はのりでくっつけときゃ元通り治らぁ」
「千鳩、のりだ、のりのり」
伊瀬地と千鳩が大急ぎで、水のりで奥方の首を胴体に接着すると、奥方はすぐに意識を取り戻し、ずれた首の位置を自分で直しながら「ところで椿さん」
「それみろ治ったじゃねえか」
「お父様を助けるに当たっても、なるべく手荒なことはなさらないように」
「せいぜい気をつけるぜ。さてと、腹ごしらえも出来たし、そう急ぐこともねえだろ。みんなで酒のまねえか」
「酒など飲んでる場合ではないでしょう!」若者の一人が言った。
「いいじゃねえか、俺は酒飲むと面白くなるんだぜ。みんなで王様ゲームやろう。そのあとは乱交パーティだ。きっと盛り上がるぜ」
「あんた俺達からまきあげた金で借金返してくにに帰ってくんねえかな」
「そうかたい事いうなよ。な? な?」
三十円の介は若者たちの肩に手を回して媚びるようにニヤニヤ笑った。

(つづく)

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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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