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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/25 (Mon) 00:06:23

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No.45
2009/10/16 (Fri) 01:05:50

 セバスチャンが第九実験室の扉を開けた。
「お嬢様、お茶が入りました」
「あ、セバスチャン。ご免なさい、お茶はもう要らないわ」
「お嬢様? どこにいらっしゃるのですか?」
「ここよ、ここ」
「はて……」
「机の上を見なさい」
 見ると、複雑な工作機械の上で、背たけが三センチほどの小さなアデラインが小さな机に座り、バーナーを使って作業していた。
「お嬢様、いったいどうなさったので」
「依頼があった医療用の極小ロボットを造ってるの。これ、組み立てるのにまず小さな工作機械を作り、それでさらに小さな工作機械を作り、それを使ってもう一段階小さな工作機械を作って、そのミニ機械でロボットを作ってたんだけど、それが故障しちゃって。面倒だからこの前の物質縮小装置で自分を小さくして、細かい作業をやることにしたの」
「しかしお嬢様、そのサイズでは周りの工具が倒れてきたりすると大変に危険です。どこかから這いこんできた虫に襲われるかも知れません」
「大丈夫だって。あたしも注意しながらやってるんだから」
「それに、物質縮小装置は人間の精神に変調を起こすのではありませんか」
「うん、それも改良したわ」
「しかし、わたくし、お嬢様が心配で目が離せません」
「じゃあ、そこにずっといて頂戴。でもむやみに話しかけないでね」

 何時間もアデラインの慎重な作業が続き、いつしかアデラインは机の上で眠りこけ、セバスチャンはタオルの端を切り取って作った小さな毛布を、彼女の上にかけてやった。
 彼女がスヤスヤ眠っていると、セバスチャンが声をかけた。
「お嬢様、起きてください」
 小鳥がちゅんちゅん鳴いていた。もう朝だ。
「ウォルトン氏という方からお電話です。何でも亡くなったおじい様のことで重要なお話があるとか」
「うん……むにゃむにゃ……え、おじいちゃまの話?」アデラインは眠い目をこすりながら言った。
「じゃ、すぐ出るわ……っと、その前にあたしを元のサイズにして頂戴。そこに装置があるから」
 セバスチャンが金色の小箱をアデラインに向け、光線を放つとみるみるうちに彼女は大きくなった。
「よっと」机から飛び降りたアデラインは、スタスタと実験室を出て行った。

「ウォルトン氏はなんと仰っていましたか?」
「うん、なんでも彼はおじいちゃまが亡くなったとき、共同で難破した宇宙船の財宝を探してたって言うの。大量のプラチナらしいわ。でも、それを発見した直後におじいちゃまの船が事故に遭って、亡くなってしまったの。その船からはプラチナは見つからなかった。ウォルトン氏はおじいちゃまの遺品を回収したけど、あたしたち遺族には内緒にしていた。遺品の中にプラチナのありかの手がかりがあるかも知れないってことでね。あたしたちには大変申し訳ないことをしたって言ってたわ。それで、今度その遺品を持ってくるから、何かおじいちゃまの遺言のようなものが隠されていないか見てほしいって言うのよ」
「ロジャーおじいさまが最後にそのような仕事をなさっておいでとは、聞き及んでいませんでした」
「あたしもよ。おじいちゃまは一匹狼のパイロットとして、危険な仕事、秘密の仕事をたくさんしてたしね」

 翌日、ウォルトン氏がアデライン邸に現れた。背の低いがっしりした体つきで、四角い顔をした五十ぐらいの男だった。彼は名刺を差し出し、アデラインと一通りのあいさつを終えると、事情を話し始めた。
「亡くなったおじい様は、いわば私どもとチームを組んで仕事をしていたのです。私は、小さな宇宙船のリース会社を営んでいます。私が宇宙船をお貸しし必要経費を負担するかわりに、おじい様は難破船のプラチナを探索に行く。おじい様はそれを発見したらしい。百トンにも及ぶプラチナです。しかし土星付近で流星の被害に遭い、おじいさまは帰らぬ人となられました」
「そうだったんですか。わたくしどもも土星付近で難破したという事だけ存じておりました」
「おじいさまの見つけられたプラチナ、もちろん半分はおじいさまの物ですからご遺族にお返しします。しかしもう半分は、出資者たる私のものです。そのような契約でした。それで、ここにおじいさまの船から回収した遺品を持参してまいりました」
 ウォルトン氏は黒いスーツケースを開けた。中には祖父ロジャーの腕時計やシガレット・ケース、ナイフ、指輪などの遺品が十数点収められていた。
「本来なら、おじいさまが亡くなられた後すぐにお返しするべきでした。しかし当時私どもの会社は経営の危機にあり、一刻も早くプラチナを見つけ出す必要があったのです。ご遺族の方には、遺品は何もなかったとお伝えしましたが、大変申し訳ないことをしました」
「ご丁寧に有り難うございます……わたくし、この遺品をじっくり調べてみますから、少しお時間いただけませんでしょうか。そう……一週間以内にはご連絡差し上げられると思います」
「結構ですとも。では、何か分かりましたら名刺にあります電話番号へご連絡ください」
 
 アデラインは遺品の中から、直径五センチほどの円い金属板をつまみあげ、ふんふんと鼻歌を歌いながら客間から出て行った。第十五実験室に入ろうとするアデラインに、セバスチャンが尋ねた。
「お嬢様、その金属板に手がかりがあるのでございますか」
「そうよ。あなたも入ってようすを見ているといいわ」
 アデラインが大きなスクリーンのついた装置に向かい、スロットに金属板を入れて幾つかのスイッチを入れると、画面には、多少画像が乱れてはいるが、髪の長い少女の顔が映し出された。
「驚いた? 十二歳のときのあたしよ」
 画面の中の小さなアデラインが話しはじめた。

「どう? おじいちゃま、装置の付け心地は……うっとうしくない?」
「いや、まるで邪魔にならないよ。しかしこれで、本当にわしの体験がすべて記録されるのかね?」
「もう記録は始まってるのよ。おじいちゃまが今見ているあたしの顔、あたしの声、全部その機械の丸い板の中に収められてるのよ」
「わしが考えたこと、感じたことも全てかい?」
「ええ」アデラインがニコニコとあどけない笑顔を見せて答えた。

「お嬢様、この映像は……?」スクリーンを観ていたセバスチャンが言った。
「あたしが十二歳の頃ね、おじいちゃまがふと言ったの。自分は宇宙パイロットとして、何十年にもわたってさまざまな仕事をしてきた。危険な仕事、世にも珍しい体験も数多くしてきた。それを何とか記録に残したいが、自分には自叙伝などを作っている暇はなさそうだ……ってね。それであたしが、人間の見聞きしたこと、思ったこと感じたことをすべて記録する装置を考案して、おじいちゃまにプレゼントしたってわけ。自分で自叙伝を書いたり口述筆記させなくても、体験を思い出すだけでこのディスクに記録されるから、時間のないおじいちゃまにも人生の記録が残せるはずよって言ったら、おじいちゃますごく喜んでいたわ」
「では、今映っているのは、ロジャーおじいさまが初めてその装置をつけたときの映像ですか」
「そうよ。だから例の最後の冒険のときの映像を見れば、プラチナのありかも分かる」
「……お嬢様、差し出がましいようですが、一度その映像を止めていただけませんか」
「なぜ?」
「もし、プラチナがおじいさまの手によって何らかの処分をされたのなら、それはおじいさまのご遺志です。お嬢様といえども、勝手に覗き見るというのは如何なものでしょうか」
「うーん……」アデラインはしばし頬づえをついて考え込んだ。
「言われてみればその通りかも知れないわ。あたしも、大好きなおじいちゃまの頭の中を好き勝手に覗き込むのはなんだか気が進まない。じゃ、こうしたらどうかしら。このディスクには、おじいちゃまの記憶やものの感じ方が収められている。このディスクを頭脳回路に組み込んだロボットを作れば、おじいちゃまそっくりの記憶と考え方を持つはずだわ。そのロボットにプラチナのことを尋ねてみるっていうのはどう? 彼が答えたくなければ、きっと答えないでしょうし」
「そのロボットはおじいさまとほぼ同じ人格を持っているわけでございますね」
「まあそうね」
「ただ、そうやってロボットとして蘇ったおじいさまに、ただプラチナのありかをきくためだけに生き返らせられたと感じさせるのは残酷かと存じます。生前のおじいさまに対するのと同じような敬慕を持って接していただきたいものです」
「まあ、いやにロボットの肩を持つのね」
「わたくしもアンドロイドですから」

 下手に人間に似せたロボットとしてロジャー祖父を蘇らせるのは、かえって残酷かもしれない……そう思ってアデラインは、黒い箱型の、上部にセンサーのついたシンプルな形のボディにディスクを組み込んだ。移動は車輪で行う。

「おじいちゃま、おじいちゃま」ロボットの電源を入れたアデラインが、恐るおそる話しかけた。
「ん、うむ……ここはどこだ? わしはバウンティ号のブリッジにいたはずだが」
「バウンティ号は大破したの。ここは地球よ」
「む……思い出した……右舷からの流星をよけきれずに、船は致命的な損傷を負った。わしは助かったのか?」
「それが言いにくいんだけど……おじいちゃまはそのとき死んでしまったの。今、記録ディスクを使って意識を取り戻したのよ……」
「まだ状況がよく飲みこめん……しかし、お前さんは誰だ?」
「アデラインよ」
「孫娘のアデラインか? もっと幼かったはずだが……」
「バウンティ号の事故があってから、もう七年たっているのよ。今あたしは十九歳」
「そうなのか? 七年も……しかし、お前にまた会えるとは夢のようだ。美しく成長したな。見違えたぞ」
 アデラインは、七年前に体験記録装置をロジャー祖父にプレゼントし、それによって以後のロジャーの記憶感情がディスクに収められ、こうして意識を取り戻したのだ……と、もういちど祖父に説明した。ロジャー祖父は理解したようだった。
「しかし、七年か……世間はどれぐらい変わったものかな。アデライン、もっとお前ともいっしょに過ごしたかったよ」
「セバスチャン、アルバムを持ってきて」アデラインは優しげに微笑み、一瞬十二歳の少女に戻ったような無邪気な笑顔になって言った。
 セバスチャンが持ってきた古風な紙のアルバムを、アデラインは祖父に開いて見せた。
「ね、これが赤ちゃんのときのあたし。おじいちゃまも写ってる、とっても嬉しそうなお顔……。これはあたしが十一歳で学位をとったときの写真。おじいちゃまがプレゼントに綺麗な手鏡を贈ってくれたわね。お前も勉強ばかりしてないで、これからは身なりにも気を遣いなさいって。そしてこれが十四歳のときのあたし……」
 アデラインは嬉々として、祖父が生前見られなかった自分の成長の記録をひもとき、思い出話を語っていった。
「……そしてこれが、十九歳の誕生日の写真。そしてこれが……ん、何これ!?」
 アルバムの最後のページに、実験室の机の上で、ピースサインをしながら小さな陶器の入れ物に入っているらしきアデラインの写真があった。
「セバスチャン、この写真は何?」
「お嬢様が極小ロボットを作るために、ご自分を縮小された晩に写したものです。覚えていらっしゃいませんか?」
「全然覚えていないわ」
「お嬢様はお疲れになったとのことで、東洋製の陶器の入れ物にお湯を入れて持ってこいと言われました。持って行きますとお嬢様は突然服を脱がれ、ポチャンとお湯につかり『きゃー、おちょこのお風呂よ! せっかくだからカメラを持ってきてあたしを撮りなさい!』とのことで」
「あたしが? 嘘……というか、あたし、あなたの前で服を脱いだの?」
「ええ。やはり物質縮小装置は精神に変調をきたすようでございますね。お嬢様の場合は極端に開放的になるのではと思われます」
「信じられない……それに何よこの写真、バカまる出しじゃない……満面の笑みを浮かべてピースまでして」
 アデラインが眉をひそめていると、ロジャー祖父が笑いながら言った。
「いやいや、可愛いではないか。お前は小さなときからマセておったからな、こんな写真を見ると安心するぞ」

 楽しい団欒のひと時を過ごしたあと、アデラインが少し改まって言った。
「おじいちゃま、実はウォルトンという人から頼まれたのだけど、おじいちゃまがウォルトンさんと共同で見つけ出したプラチナのありかを知らないか、心当たりがあれば教えてくれって……」
「その件か……わしが最後に仕事をしたのがウォルトンとの財宝探しだったんだな。難破した政府の宇宙船が積んでいたプラチナだ。最初、それが見つかれば折半するという約束だったのだが、出発間際にウォルトンと部下のものが話すのが偶然耳に入ってな。早い話が、わしがプラチナを見つけてきたら、わしを殺して独り占めしようという相談だったのだ。ハハ、わしは昔から地獄耳だったからな」
「ウォルトンって人、そんなに悪い人だったのね。で、どうしたの?」
「わしはプラチナを長年の勘で探し当てた。しかし殺されてはつまらないから、ウォルトンには黙って、プラチナをある場所に隠したのだ」
「でも、ウォルトンさん、おじいちゃまがプラチナを見つけたって知ってたような口ぶりだったわよ」
「やつは勘が鋭いからな。最後の交信のときの声の調子で、わしがプラチナを隠したことに気付いたのかも知れん。だが、隠し場所までは分からなかったろう。その隠し場所というのは……」

(つづく)

(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
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No.44
2009/10/16 (Fri) 01:02:13

 グレーのスーツを着た男がチャイムを鳴らすと、玄関からアデラインが姿を現した。白いTシャツに黒のショートパンツというラフな格好。
「どなた?」
「ndr博愛協会の者です。今回は、車椅子用斥力車を公共施設に寄付するため、皆様のお力添えをと思いまして」
「まあ、北ドイツ放送交響楽団のかた?」
「そのNDRではございません。博愛協会です。これをご覧になってください。『愛のフキン』です。たったの2000クレジットでございます」
「でも、そういうの間に合ってますし」
「ただのフキンではございません。陽電子を帯びた特別な糸で縫ってございまして、どんな汚れも簡単に落とすことができます」
「うーん、そうね……あ、ちょっとお上がりになりません? 立ち話もなんですし」
「いえいえ、ここで結構でございます」
「そんなこと仰らずに。あなたお名前は何と仰るの」
「ジェイムズ・ライトです」
「じゃ、ジェイムズ。いいこと、うちに上がってお茶を召し上がってくださいな。そのフキン、何枚でも買ってもいいかなって、そんな気分になるかも知れなくてよ」
「いや、急ぐのですが……いや、そんなに仰るのなら」
「お座りになって、ジェイムズ。ネクタイをお外しになったら。たくましい胸……そんな腕に抱かれる女性が羨ましいわ。わたし、胸がどきどきしてきちゃった。確かめてみる?」
「ああ、お嬢さん!」とジェイムズが言って手を伸ばすと、アデラインはするりと身をかわし、背を向けながらも思わせぶりな流し目で、
「女のあたしからこんなこと言うの、はしたないんだけど……あたしのベッドルームに来る勇気、おありになって?」
「お嬢さん!」ジェイムズがアデラインに抱きつこうとすると、手がすり抜け、彼はその場に派手に転んだ。
このアデラインは立体映像だったのだ。

「アハハハハ! 馬鹿な男!」屋敷の奥のモニター室で、一部始終を見ていたアデラインがケラケラと笑った。
「お嬢様、いい加減に男心をもてあそぶのはおやめになっては」セバスチャンが言った。
「だって、あのセールスマン、しつこいのよ。慈善事業だとか言って、まるで押し売りみたい。ちょっとは痛い目を見るがいいわ」

 そのとき、ガラガラという大音響とともに天井が割れ、大小の石材が二人の上に降りかかってきた。
「きゃーっ!」
 床に伏せ、どうやら軽症にとどまったらしいアデラインが叫んだ。
「何事!? セバスチャン、何が起こったの?」
「どうやら何者かが屋根から侵入した模様です」大きなコンクリートの下敷きになって、砂埃にまみれながらも表情一つ変えずセバスチャンが言った。
「やあ! 久しぶりだねえ、アデラインにセバスチャン」金髪に青白い顔をした少年が、開いたパラシュートを背に現れた。
「ジェローム!」アデラインが叫んだ。
「やあやあ、可愛い従弟が遊びに来てやったよ。アデライン、また一段と綺麗になったなあ」
「それどころじゃないわ! なんで天井を突き破って入ってくるのよ! あたしに恨みでもあるの!?」
「とんでもない、お姉さま。たまたま着地したところがここだったというだけで、他意はないのさ」
「セバスチャンはアンドロイドだから良かったものの、普通なら死んでたわよ!」
「いやいや、私は何ともございませんので」セバスチャンは、コンクリートの塊を難なくはねのけて立ち上がり、体の埃を払った。「お久しゅうございます、ジェローム坊ちゃま」
「おう、セバスチャン、元気だったかい? じゃ、喉が渇いたからアイスコーヒーでも飲ませてもらおうか」
「ちょっと、それよりあんた、どこから降ってきたのよ」
「ああ、寄宿舎の連中とね、ちょっとアルプスあたりに旅行に行こうかっていうんで、飛行機に乗ってたんだよ。でも俺、急に気が変わってさ。パラシュート背負って途中で降りてきたってわけ」
「あんたってほんと移り気ねえ。飛行機に乗ってて急にいなくなったら、みんな心配するわよ」
「だと思うよ。操縦してたのは俺だから」
「セバスチャン! すぐ助けに行って!」
「は!」セバスチャンは脱兎のごとく部屋を飛び出し、小型ジェット噴射機を背負ってあっという間に空のかなたに消えていった。
「はああ、さすがアデラインの造ったアンドロイドだ、俊敏だねえ……」
「感心してる場合じゃないわよ! あんた自分のやった事がわかってるの!?」
「はいはい、承知しておりますとも。一族きっての才媛アデラインにひきかえ、出来の悪い従弟のジェロームはどうせ馬鹿ばっかりやりますですよ」
 そのとき、アデラインの腕時計がビーッビーッという発信音を鳴らした。
「はい、あ、セバスチャン? ジェロームの飛行機に無事乗り移ったのね? みんなに怪我はない? 良かった……じゃ、あんたが操縦してみんなを帰してあげてね」
 アデラインはホッと胸をなでおろした。
「まったくもう……あんたにはほとほと呆れたわ」

 夜になってセバスチャンが戻り、アデラインとジェロームの食事の用意をした。
 ジェロームはスプーンでシチューをかき混ぜながら、
「なあ、アデライン、小遣いくれよ。10万クレジットぐらいでいいから」と、昼間大騒動を起こしたにも関わらず、図々しく言った。もっとも、アデラインも後には引きずらない性質だから、そんな言葉もケロリと受け流した。
「駄目よ。あんたももう十八でしょ。いつまでもお小遣いなんかねだるもんじゃないわ」
「儲けてるんだろ。この間も宇宙ハイジャックを捕まえてだいぶ褒美をもらったって、ニュースで言ってたぜ」
「自分で何とかしなさいって言ってるのよ。そのほうがあんたのためだわ」
「小遣いくれないって言うんなら、あの事みんなにバラしてもいいんだぜ。マスメディアもアデラインのゴシップとなれば、きっと放っておかないな」
 アデラインは少し頬を赤らめつつも、
「べ、別にいいわよ。もう何年も前のことだし」
「へー」ジェロームはワインをぐいと飲み干してから、話題を変えた。
「ときにアデライン、最近はどんな研究をやってるんだい」
「話せることはあまりないけど……そうね、政府の専有になったんだけど、空に広告を描く技術ってのを最近までやってたわ」
「なんだいそりゃ」
「災害情報とか、国民投票の告示とか、大事な情報を誰もが見るように、空に表示するのよ」
「へえ、そんなことが出来るもんかな」
「特殊な軽いワイヤーの入った、安定した霧のスクリーンを空に張るの。そこにいろんな文字を投射するのよ。空に大きく目立つ文字で書かれるんだから、嫌でも誰の目にも入るってわけ」

 その夜、ジェロームはアデライン邸に泊まった。午前三時ごろのこと。
「お嬢様、起きてください」
「ん、うーん……何、セバスチャン。何があったって言うの」
「何者かがこの屋敷に忍び込みました。黒い人影を見ましたが、取り逃がしました……面目ございません」
「え……警報装置はどうしたのよ」
「それが、昼間ジェローム坊ちゃまが天井を突き破ったとき、回路に故障が生じたものと思われます」
「何か盗まれたかしら?」
「それが何とも……」
「いいわ、あたしが確かめる」
 パジャマの上にカーディガンを羽織ったアデラインが、十五ある実験室を一つひとつ確かめていった。
「あ……空中広告投射機の試作品がひとつ無くなってる」
「被害はそれだけでございますか」
「どうもそのようだわ……危険な機械ではないけれど、政府が買い上げた特別なものだし、ちょっと困ったことになったわね」

 翌日の午後、北の空にピンク色の大きな文字で次のような文面が浮かんでいたものだから、アデラインはもちろん、街中の人々が驚きの声を上げた。

 LGS百貨店、この金・土・日はお客様感謝デー!! 
 全品30%~50% OFF !!!

「投射機を盗んだのはあそこだったのね……盗みを働いてまでこの三日間の売り上げをのばそうとは、太い根性だわ。セバスチャン、行くわよ!」
 二人はエア・カーを飛ばしてLGS百貨店へ行き、投射機を設置していると見られる屋上階に昇ろうとした。しかし地上五十階の屋上に対し、四十五階より上は立ち入り禁止、電磁バリヤーまで張ってあるという念の入りようだった。
「責任者と話をつけてくるわ」アデラインは百貨店の支配人に掛け合ったが、相手は「あの広告はうちの発明品です」の一点張り。
「投射機を見ればわたしの家から盗まれたものかどうか分かるわ」と言っても、逆に「当店の企業秘密です」と断られてしまった。

 作戦を練り直そうと、うらめしげに空の広告を振り返りながらアデラインが引き上げようとすると、彼女の腕時計から着信音が鳴った。
「どなた?」
「ジェロームだよ。今、空の広告を消してみせるから空を見てな」
 アデラインが見上げると、みるみるうちにピンク色の空の広告が消えていった。
「ジェローム、いったいどうやったの?」
「いや、友達の親父がLGS百貨店の大株主でね、そのコネを使って屋上に上がらせてもらって、隙を見て投射機のスイッチを切ったのさ」
「あなた、その投射機をそこから運び出せる? 四十五階まで来てくれたらこっちで何とかするわ」
「そいつはご褒美しだいだね」
「昨日のお小遣いの話? いいわ、10万クレジットぐらいの価値は十分にある働きだもの」
「いやいや、こいつは100万クレジットはもらわないとね。この装置を取り返さないと君の信用問題になるんだろ」
「100万って、そんなお金ないわ」
「嘘だろ。100万もらうまでここを動かないぞ。それとも、あの事みんなにバラそうか?」
「う……30万でどうかしら」
「アデラインは意外とケチなんだな」
「50万では?」
「もういいさ。空を見てみるんだな」
 百貨店の上空には、真っ赤な文字ででかでかと、次のような文字が浮かんでいた。

 アデラインは、十六歳のとき植物と話す装置を発明し、らっきょと意気投合し、ついには結婚を申し込んだ
 彼女のラブレターに曰く、ああらっきょさん、らっきょさん、あなたはなぜらっきょなの?
  

 がたがた肩を震わせているアデラインに、セバスチャンは恐るおそる話しかけた。
「ジェローム坊ちゃまの口座に100万クレジット振り込みましょうか?」
「好きにするがいいわ……ジェローム、覚えてらっしゃい」
 セバスチャンは、去っていくアデラインの、いつもよりちっぽけに見える背中を眺めやり、事態の後始末をどうつけようかとしばし考え込んでいた。

(終)

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No.43
2009/10/16 (Fri) 00:59:57

「げほ、げほ」
 もうもうと立ち込める白い煙の中から、白衣を着た若い女が現れた。左手で口を押さえながら、右手で煙を払いのけている。辺りには、割れたフラスコやガラス管の破片が散らばっていた。
「やっぱりうちの小さな設備でニュートロニウムの実験をするのは無理があったわ……窓を開けて空気を入れ換えなきゃ」
 実験室の窓を開け、白煙がうすまり空気が澄んでくると、次第にくっきりと、彼女の美しい顔があらわになってきた。

 そのとき、窓の下から彼女に呼びかける男の声が聞こえてきた。実験室は、地上三十メートルの彼女の邸宅の一隅にあった。
「ああ、愛しのアデラインよ、僕のために窓を開けてくれたんだね!」若い男が地上から熱心に叫んでいた。
「ごほ……え、またアラン? しつこいんだから。さっさと帰って頂戴!」
「ああ、アデライン! 君の顔は満月のように輝いている!」
「え? 私の顔が何ですって?」
「満月さ! そして君の瞳はエメラルドのように……」
「うるさいわね! 不法侵入しといてぐだぐだ言ってるとレンガをぶつけるわよ! あ……頭痛がするわ。セバスチャン。セバスチャン」
「お嬢様、御用ですか」
 すらりとした長身の、モーニングを着た執事が入ってきた。四十歳ぐらいに見える。
「ここを片付けて頂戴。アランも何とかしなさい。あ、その前にお茶を入れてくれないかしら。煙で喉が痛いの」
「かしこまりました。しかしお嬢様、もう危険な実験はおやめになってはいかがでしょうか。大切なお体です」
「私はつねにフロンティアを求める科学者なのよ。危険はつきものなの。それよりセバスチャン、ちょっと太ったんじゃない?」
「そんなことはないかと存じますが」
「そうね、アンドロイドが太るわけないか。でも機械の体でも運動は大切だわ。ビリーズブートキャンプでもなさい」
「かしこまりました」

 アデラインは書斎でお気に入りのマホガニー製の椅子に腰掛けると、大きく一つ息をついた。栗色の髪、透き通るような白い肌。白衣に包まれた、ほっそりした肢体とふくよかな胸。眼鏡はかけていないが視力が悪いらしく、切れ上がった目の中の瞳は茶色く潤んでいる。芳紀まさに十九歳とはいえ、その美しさは水際立っていた。
「お嬢様、お茶が入りました」
「あ、ありがと。ところで私が実験室にこもっていたとき電話があったみたいだけど、誰から?」
「人口省のウィンダム部長からです。八分の一計画の進捗状況についてお尋ねでございました」
「ああ、あの件ね……最近いろんな研究を同時進行でやりすぎて、しばらく報告がとどこおってたのね。うーん、上手くいってるといえばいってるんだけど、どうも被験者の精神状態がひっかかるというか」アデラインは白衣の腕をまくり、お茶をすすりながら言った。
「精神に変調が見られるのでございますか」
「変調と言っていいのかどうか微妙なんだけど……。セバスチャンも一度ようすを見て頂戴」
 八分の一計画とは、膨れ上がった地球の人口に対し、食糧問題を解決するため、人間の体を八分の一に縮小しようというプロジェクトだった。人体を実際に縮小する装置の開発および人体実験を、アデラインは政府から委託されていたのである。

 二人が第七実験室と書かれた扉を開けると、それに反応したのか、何者かの甲高い小さな声が聞こえてきた。
「おお、麗しのアデライン! 今日もあなたに会えて嬉しい!」
 大きなガラス瓶の中の、八分の一の大きさに縮小された人間の男が叫んでいた。
「ただお嬢様に想いを寄せているだけではございませんか」セバスチャンが言った。
「でも言う事がちょっと変なのよ」
「ああ、アデライン! 僕の小さくなった体は、胸の鼓動で張り裂けそうだ! どうか、どうか君の素足で僕を踏みつぶしておくれ! 押しつぶされたいんだ。ぺちゃんこにぶちゅっとつぶれた僕の汚い体を、その美しい指でつまみあげて、その瞳で見つめてほしいんだ」
「ちょっと変態趣味でございますね」
「マゾヒズムの極致だわ。でも、八分の一に縮小されたがゆえにこうなったのか、もともとこういう性格だったのかが分からないのよ。でももう一人の被験者はスカトロ趣味なのよ。私の口からはとても言えないようなことをしじゅう口走るの。そういうわけだからウィンダム部長には、もうちょっと実験を続けさせてほしいって言っておいて」
「かしこまりました」
「今日は疲れたから、お風呂に入って休むことにするわ……あ、それからその被験者には、ボードレールの『女の巨人』を朗読して差し上げなさい。どうせあたしの裸をしじゅう妄想して悶えてるんだから」

 湯ぶねにつかってうっとりと目を閉じるアデライン。ついさっきまで、無数の数式や化学式が渦まいていた彼女の頭の中は、心地よさにとろけるようになって、七色にきらめく雪の結晶のような模様がたくさん、ゆっくりと寄せては返す波のようにまぶたの奥に映し出されていた。
 ピリリリリ……ピリリリリ……。
「え、電話? しかも緊急用回線の音だわ」
 彼女は立ち上がり、浴室内の電話を取ろうとした。
「ん? 何これ……セバスチャン、誰がお風呂場にテレビ電話を取り付けろって言ったのよ! 出られないじゃない! でも、この電話は明らかに非常事態だし……しょうがないわ」
 アデラインが電話を取ると、スクリーンに大統領の姿が映し出された。
「やあ、アデライン、久しぶりだな」
「ア、大統領閣下! ご免なさい、すぐ服を着ますから」
「構わん、公用だ。実は地球全土を危険に陥れる大事件が勃発してな。是非とも君の力を貸してほしい」
「あ、ハイッ」アデラインは敬礼した。
 大統領側のテレビ電話には、敬礼するアデラインのあられもない裸体が映し出されていた。
「で、閣下、どのような事件ですか」
「ハワイ上空に核ミサイルを多数搭載した宇宙ステーションがあるのを知っとるだろ。あそこにある男が侵入し、ステーションの人員を神経ガスで皆殺しにして立てこもったのだ。その男はDと名乗っておるが、地球連邦政府に百億クレジットを要求し、それに応じない場合はミサイルを主要都市に向けて順次発射するというのだ」
「で、そのDという男から宇宙ステーションを奪い返せばいいんですね」
「そうだ。政府はこのようなテロに屈服するわけにはいかん。もしDを生け捕りにしたら一千万クレジット、彼を死なせて事件を解決した場合は五百万クレジットの褒賞金を出そう。解決の方法は全て君に任せるが、小型の宇宙ステーションが件のステーションから七百宙里はなれたところで待機しておる。それを使えばよいだろう」
「了解しました」
「結構。では豊饒なる大地に」
「豊饒なる大地に」

 アデラインは急いで服を着て、といってもちょっとよそ行きの、黒い水玉模様がついた赤いワンピースを着ただけで、自家用ロケットの発射台に向かった。
「セバスチャン。第六実験室に、八分の一計画で作ったポータブルの物質縮小装置があるから持ってきて。あ、それと第二実験室に、No.7の番号をふった箱があるからそれも持ってきて頂戴」
「は、ただいま」
 彼女はセバスチャンに機械類をロケットに積み込ませると、操縦席に乗り込もうとして、
「あ、何度も悪いんだけど、ドライヤーも持ってきて。髪を乾かす時間がなかったの」
 
 栗色の長い髪をすっかり乾かしたアデラインが、小型ステーション「青い三日月」に到着すると、その乗組員たちは緊張していた面持ちを一斉にゆるめ、にこやかに彼女を迎え入れた。長時間Dの占領したステーション「白鳥」を、男の乗組員だけで監視していた緊迫した雰囲気の中に、普段着に近い美しい少女がふいに現れたものだから、一瞬空気がはなやいだのだった。それともちろん、その少女が頼りになる天才科学者アデラインだったという安堵感もあった。
 アデラインは大きなトランクを引っ張ってきていた。
「皆さん、よろしく。あたし、これからある装置を組み立てるので、出来上がったらそれをステーションに取り付けるお手伝いをお願いします」

 アデラインの装置の準備が整うと、彼女を中心に乗組員たちはブリッジの席についた。
「Dと話をします。チャンネルをオープンにしてください」とアデライン。
「了解。ただDは顔を隠していますから、音声のみの通話になります」
 しばらくすると、スピーカーから、
「なんだ、何か用か。それとももう百億クレジットの用意ができたのか」と、男のだみ声が聞こえてきた。
「あなたがDね。わたしはアデライン。地球連邦政府大統領からこの事態の収拾を任されたの。もう抵抗は無駄よ。早く降伏しなさい」
「あんた女か。降伏しなさい? 馬鹿じゃねえか? こっちはすぐにでもニュー・ニューヨークに向けて核ミサイルを発射できるんだぜ」
「いちおう、降伏は勧めたわよ。それじゃ、こっちはこっちの手を打たせてもらうわね」
 アデラインはそう言うと、ひざの上に乗せた銀色の小箱に手を伸ばし、幾つかのボタンを押した。
「ん、なんだ、この黒い穴は? ぎゃー、なんだこいつは! あんた何をやった」Dが叫んだ。
「あ、その音だと、きっと黒い大ダコのような怪物の腕が、あなたに巻きついてるんじゃない? ホラホラ、早く降伏しないともっと恐ろしい化け物がその穴から出てくるわよ」
「ぎゃあ、なんだこりゃ、でっかいベロにピラニアみたいな口がいっぱいついてて……おい、噛み付くな、やめろ、やめろ」
「アハハ。その子は人間に会うのは初めてだけど、あなたのことが気に入ったみたいね。ゆっくり遊ぶがいいわ。まだまだお客さんは来るはずよ」
「うわ、また出てきやがった。でっかい蟹! 甲羅に人間の頭が四つも五つもついてら……うげ、気味が悪い、分かったわかった、もう降参だ」
「じゃ、そのステーションの核ミサイルをすべて船外に廃棄しなさい。いくつミサイルがあるのか知ってるんだからごまかしは効かないわよ」
 しばらくすると、ステーション「白鳥」の中央ハッチが開き、次々と核ミサイルが放り出された。
「それで全部ね。Dさんありがとー。じゃ、こっちから迎えを寄こすから待っててね」
 核ミサイルを回収するためと、Dを連行するために小型船が二隻、「青い三日月」から出発した。

「ふう、これで一安心ですね。しかし、あの装置、平行宇宙導来機とか仰ってましたが、いったいどんな原理なんですか。平行宇宙とこの宇宙をつないで、好きな場所にその通路を作ることができるってことだけ聞きましたが」
「平行宇宙はね、無数にあるの。四次元空間の有界部分集合のほぼ全体だから、ふつうの無限個よりもずっと多い『アレフ2』というレベルの無限の数だけあるってわけ。その平行宇宙をひとつの四次元空間に適切に埋め込んで考えたとき、二つの平行宇宙A, Bの『通じやすさ』、まあ距離と言ってもいいわね、それがAとBの対称差の体積に比例して定まるの。その距離が小さければ、比較的小さなエネルギーでその平行宇宙どうしを通じさせる穴を開けることができるのよ。Dが見たグロテスクな怪物たちは、あたしたちの宇宙からそう『遠くない』ところにある平行宇宙の住民ってわけ。でも、その怪物さんたちもきっと、Dを見て『なんて醜悪なんだ』って思ったでしょうね」
 アデラインはぽかんとしている乗組員に早口で説明しおえると、ケラケラと明るく笑った。

 しょんぼりしたDが、ステーション「青い三日月」に連行されてきた。粗野な顔つきをしていたが、よく見るとまだ若い男だった。
「Dさん、ちょっとは反省した?」アデラインが尋ねると、
「あんたがアデラインか? こんなに若いとは……いや、反省したよ」
 アデラインはいきなり、金色の小箱をDに向けてボタンを押した。きりきりという不思議な音とともに発射された光線は、みるみるDをコビトにしていった。もとの大きさの八分の一を通りこして、Dは豆粒ほどの小さな人間になってしまった。
「チビDちゃん、『白鳥』の乗員を神経ガスで皆殺しっていうのはちょっと罪が重すぎるわね。今どんな気分? あたしに踏みつぶされたい?」
「は、はい、美しいアデラインさん」
「うーん、やっぱりこの物質縮小装置は欠陥があるんだな。じゃ、遠慮なく」
 と言ってアデラインはハイヒールのかかとでぐいとDをふみつぶしかけて、
「って、うっそぴょーん。あたしだって一千万クレジット欲しいもーん」
 
「じゃっあねー」
 荷造りを終えたアデラインは、縮小されたDをそのままにして、天真爛漫に皆に別れを告げた。「青い三日月」の乗組員たちは、なかばあっけに取られながら、アデラインの乗る自家用ロケットが去っていくのをいつまでも見送っていた。

(終) 

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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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