忍者ブログ
AdminWriteComment
 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/23 (Sat) 13:25:21

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

No.357
2010/10/09 (Sat) 03:57:40

恩制賜食於麗正殿書院宴賦得林字  張説

東壁圖書府 西園翰墨林
誦詩聞國政 講易見天心
位竊和羹重 恩叨醉酒深
載歌春興曲 情竭爲知音

この書院の東側は、天上の東壁の星にもなぞらえられる図書の蔵。
この書院の西園にもなぞらえられる、文学のゆたかに栄える林。
その書院でわが君は、「詩経」を読んでは国の政治の実情をご聴取になり、
「易経」を講じては天のみ心をみそなわすのである。
私の地位は、おおけなくも宰相の重任をわがものとしているのに、
君のご恩の深さは、その私に十分の酔いを授けたもうた。
そこで私は、春のしらべをこめたひとふしをうたう。
その中に私の真情をかたむけつくしたのは、ほかでもない、真に音楽を理解してくれる人(そして私を真に理解してくれる人)――わが君のためなのだ。

(前野直彬訳)

さてこの国の君主に仕えるようになって、はや半年。この宮殿で王族や貴族の子弟たちに数学を教えるのもだいぶ慣れてきた。かたじけなくも定期試験を作る栄誉にめぐまれ、有り難さと身の引き締まる思いを感じつつ、試験前の忙しい日々を送っている。

毎日の授業は規則正しく礼に始まり礼に終る。ややお脳の足りぬご子弟たちの組では、数学の授業中に突然マーチン・ルーサー・キングの演説を大声で朗読し始める生徒もおり、負けじと後ろの席の生徒が枕草子を朗読するという、混沌とした授業になることもままあるのだが、それでもここで働ける有り難さは筆舌に尽くしがたいほどだ。

しかしこのごろの世の情報洪水、とくに性に関する情報の氾濫は、私のあずかるご子弟たちに確実に悪影響を及ぼしている。とくに中等部の小さなお子たちが、その種の下劣な言葉を口に出されるのを見ると、わが君主に思い切って諫言し、この国での情報の制限をご提案しようかとも思うほどである。私は憂えている。悪しき情報がご子弟たちへの日々のしつけを台無しにして、しまいにはお子達がお子達どうしで子作りを始めるのではないかと。

それはともかく、今日は授業後は試験作りに励んだ。男女四人ずつ計八人が、特定の男女が隣り合いつつ、男女交互に輪になって並ぶ方法は幾通りか、などと少々頭のお弱いご子弟におかれては難渋するであろう問題も混ぜておかなくてはならぬ。たとえ高貴の生まれでも、不断の訓練によって学問は成るものだ、とお分かりいただかなくてはならない。数学に王道なし、である。

授業中「師よ、汝の体重はいかほどかや」と戯れにお尋ねになった姫君の一人。私にとってはあまり答えたくないご質問だったから、思わず「では姫君のご体重を先にお伺いしましょう」と言ってしまった。「こりゃ、お前は女性(にょしょう)に体重を尋ねるのか」とお怒りのご様子。私は話をはぐらかそうと、姫君の御かばんについている小さな人形を指さし「これは何という人形でございますか」。すると姫君は眉をしかめ「もうよい、あっちで江姫(ごうひめ)が質問しておる、答えてまいれ」。私はすごすごと引き下がり、江姫の御用を承りに行った。

体重の件は失言であったが、王族・貴族のご子弟だからといって、恐れ入って畏まってばかりでは、相手は心を開いてくれない。そこで教師の側でも多少ぶしつけな発言もさせていただくのである。

今日も骨が折れた。ゆっくり休んで明日に備えよう。


(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
PR
No.354
2010/10/08 (Fri) 00:06:44

いま高校1年で順列・組合せの授業をやっている。
順列とは、例えば5個の異なるものから3個を選んで並べる、というようなことで、その方法の総数は 5P3(左右の 5, 3 は通常下に小さく書く)と表される。これを計算すると
5P3 = 5×4×3 = 60
で、60通りである。一般に n 個の異なるものから r 個を選んで並べる順列の総数は
nPr = n×(n-1) ×(n-2) ×…×(n-r+1)
と r 個の数の積となる。

授業で新しい内容に入るときは、教師としては何かしら生徒の興味を引きそうな話をしたくなるものだが、ことしこの授業に入る前に考えていた話題は、野球の話だった。15人の野球部員の中から先発メンバーを選ぶ方法は、どれぐらいあるだろうか? 1番バッターから9番バッターまで決めなければならないから、これは15個から9個とる順列の総数である。その答えは
15P9 = 15×14×13×12×11×10×9×8×7 = 18億1261万4400.
まさかそんなに選び方があるとは思えない、というところが面白い。しかしこれは数が大きすぎる。生徒の中には、僕が話すことは何でも試験に出るものと思っている子もいるから、こんな巨大な数を見せておびえさせるのは考えものだ。
そこで、30人のクラスから4人のリレー走者を選ぶ方法の話にした。第1走者から第4走者まで決めるから、これも順列の話である。その選び方の総数は
30P4 = 30×29×28×27 = 65万7720.
これも意外なほど大きな数字である。しかし生徒の中には「足がめっちゃ遅くて選手に選ばれへんに決まってる奴もおるし、そんな計算をするのはおかしい」という者もいた。まぁそういう意見もあるだろうが、そんなことを言ったら数学の話は出来ない。

職員室でこの話をしていたら、ある女性の数学の先生が「わたし競馬の話でそれやったことありますよ」。仮に16頭の馬が出走したら、上位3着までの馬の並び方は
16P3 = 16×15×14 = 3360(通り).
つまり「三連単」が当る確率は 1/3360 である。「ほら、当てるの無理やろ?」と話したという(本当は確率の大前提である「同様に確からしい」が成り立っていないから、正しくはその確率にはならないだろうが)。
しかし女の先生の口からバクチの話が出るのは生徒にとっては面白かったに違いなく、かなり盛り上がったらしい。

「指数」の話でも、そうした大きな数字がよく顔を出す。
一、十、百、千、万、億、と数の位を昇っていくと、その上は兆、京、垓(がい)、秭(じょ)、穣(じょう)、溝(こう)、澗(かん)、正(せい)、載(さい)、極(ごく)、恒河沙(ごうがしゃ)、阿僧祇(あそうぎ)、那由他(なゆた)、不可思議(ふかしぎ)、無量大数(むりょうたいすう)ということになっている。無量大数は10の68乗だそうだ。こういう大きな数の名前は、子供向けのTV番組や本によく出てくる。このうち恒河沙(ごうがしゃ)は10の52乗で、その名の由来は「ガンジス川の砂の数」だという。

自分の大学の先輩は、実際にガンジス川にそれだけの砂があるのか考察した。ガンジス川の流域面積を調べ、砂粒一個の平均体積を妥当な線で決めて計算すると、結果は恒河沙よりはるかに少なかった。そこで「ガンジス川の砂」を拡大解釈して、「ガンジス川周辺の土砂」と考え、その一般的な流域面積を100倍して深さ100メートルまでの土砂の数を計算してみると、それでも3.4×10^28 (3穣4000秭)ほどしかなく、恒河沙にはほど遠かった。恐らく地球全体の砂の数も恒河沙よりずっと少ないであろう、と。

そのころ自分も大きな数や小さな数に興味を持っていたから、この問題について別な角度から考えてみた。すなわち、地球の質量は約6.0×10^27g、電子1個の質量が約9.1×10^(-28)gである。前者を後者で割ると、約6.6×10^54。つまり電子が「660恒河沙」集まってやっと地球全体の質量になる。電子は砂粒よりもずっとずっと軽い。一粒の原子の1000分の1よりまだ軽い。つまり上の結果によると、地球に存在するすべての原子を集めても「1恒河沙」に達しない。「地球上の全ての砂粒」ならなおさら恒河沙には程遠いはずである。

むかし自宅にあった子供向けの百科事典にも、大きな数の単位が載っており、恒河沙についてはガンジス川のほとりに座って砂粒を数えるインド人のイラストがついていた。ターバンを巻いて長いひげをたくわえたそのインド人は、いかにもうんざりした表情で砂をつまんでいた。そのインド人はもう存命ではないだろうが、生きていたらそんなことはもうやめろと言ってあげたい。

ところで中一の授業で幾何をやっているとき、あるクラスの生徒が
「この世に本当に平行なものってあるんですか?」
と素敵な質問をしてきた。なるほど教師が黒板に描く平行線はもちろん、鉄道のレールだって、精密に測れば本当の平行ではないだろう。簡単には答えられない問題である。だがそういう問いに対してこそ真剣に考えてあげなければならない。どうもそれはなさそうに思えたから
「僕は無いと思う。本当に平行な直線はおそらくみんなの頭の中にしかない」
と答えた。そして「頭の中」という言葉にピンと来ない生徒もいたようだから
「心の中にある」
と言い換えた。
こちらで答えずに生徒たちに考えさせたほうが良かったかも知れない。

しかし後になって、その答えで良かったのかと気になりだした。この世に平行なものは本当に無いだろうか?
二つのビー玉を同時に落としたときの両者の軌道は平行ではなかろうか。いや、ビー玉はきっと地球の重心に向かって落ちていくのであり、地球は丸いから、二つは落ちていくにつれて互いに近づくはずだ。

どなたか真に平行であるものについて、心当たりがあるでしょうか。


(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
No.353
2010/10/01 (Fri) 13:02:12

久方ぶりの
杏仁ブルマ
杏仁ブルマのおすすめモノ

紹介しましょう。
猫も杓子も
Twitterをやっていていけすかないです、
複数アカウントを使ってる
ヘビーユーザーにおすすめ
http://ja.splitweet.com/
もひとつvjヴィジュアルジョッキに興味ある方は
http://www.numark.jp/products/nuvj/
もひとつ
みんな待ちどーしー
アイマス2



個人的にはジュピターの登場はいい意味でも
悪い意味でも
前のアイマスを壊してくれそうだ。

DIMMU BORGIRのpvが凄くおもろいことになってるwww

音的には良いんだがな~
waltariのKärtsyのソロが割といい
waltariは30年近くやっている
天才バンドである。何が天才なのかは彼らの音の歴史を聞かねば
分からないであろう。




あと最近中東メタルが熱い
Orphaned Land


最後に臓器本(タブライアナトミカイ)宣伝
コミティア94にて6つ目の臓器本が出る予定です。
よろしくお願いします。


杏仁ブルマ
[48]  [49]  [50]  [51]  [52]  [53]  [54]  [55]  [56]  [57]  [58
執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









 ※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※







文書館内検索
バーコード
忍者ブログ [PR]