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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2025/04/03 (Thu) 12:00:31

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No.352
2010/09/25 (Sat) 11:26:23

512隻からなるその宇宙船団は、ある惑星で未知の知性体を発見した。五個の壜に収められたその物体は、何かの生物の脳の標本だった。人類学者たちはさっそく壜のひとつを宇宙船に持ち帰り、脳の再生実験を始めた。電子中枢を使用したその実験で、脳との意思疎通に成功したが、呼びかけに対する脳の返答は挑戦的なものだった。そして突如船内のロボットが勝手に動き出し、実験者たちの自由を奪ってしまった。脳が電子中枢を介してその宇宙船を支配したのだ。脳は「即刻この宇宙船から立ち去れ」と全乗組員に命令を下す。乗組員が全員退去すると、船は宇宙のかなたに飛び去っていった。

ここからエリックという青年の物語が始まる。彼は未知の惑星を仲間とともに探査していたが、危険な生物からの攻撃にあったため緊急避難し、やむをえず上官からの命令に背いて決められたコースから離脱し、逃亡する。その途上で知り合った女性と恋に落ちたり、仲間を見殺しにするなどしながら逃避行は続く……。

しかしこれは催眠状態のエリックが見せられていた幻影に過ぎなかった。彼は精神的奇形児と社会から疑われ、医師たちによって心理テストを受けていたのだった。幻影の中でエリックが取った行動を医師らは分析し、彼が社会的不適応者でありロボトミーを受けるべきだとの結論を下す。しかし医師団の一人であったジャネットは、ふだんから管理社会への不満を鬱積させており、エリックに好意を持ったことから、彼を連れ去って南極への逃亡を企てる。しかし彼女の計画は早々に露見し、やむなく下水道から地下世界に潜り込み、エリックとともに困難なサバイバル生活を始める。

読んでいると、はじめの脳の標本の物語はどこに行ったのか皆目わからず不安になるが、最後にはその伏線がみごとに生かされ、心地よい読後感が残る。

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No.350
2010/09/12 (Sun) 21:21:03

塞下曲 其二  李白

天兵下北荒 胡馬欲南飮
横戈從百戰 直爲銜恩甚
握雪海上餐 拂沙隴頭寢
何當破月氏 然後方高枕

天子の軍隊は北方の荒地へ出動し、
えびすの馬は南に水を飲みに来ようとして衝突する。
戈(ほこ)をかまえて百回の戦闘に参加するのは、
ただ天子の恩を深く心にきざんでいるためだ。
湖のほとりでは、雪を握って食べ、
ゴビの砂漠のあたりでは、砂をかぶって寝る。
いつになったら月氏を破り、
そうしてはじめて、枕を高くして眠ることができよう。

(武部利男訳)

われわれが蘇将軍にひきいられ、西北方の外敵である月氏の討伐に出発したのは秋の初めごろだった。玉門関を出て石や砂だけの荒地をひたすら行軍し、幾日たったころだろうか。ある霧深い夕暮れ、突然巨大な老婆の顔がゆく手に現れた。
「いますぐ立ち去れ、さもなくば全員命を落とすことになるぞ、手遅れにならぬうちに立ち去るのじゃ」
白髪をふり乱し青白く光る老婆の顔には、おどろおどろしいものがあった。
「なんだ、今のは」馬を止めた将軍がつぶやいた。兵員の多くは悪霊に取りつかれたような顔をして、怖気づいたようだった。ただ一人、副官の李岳(りがく)というものが平然として言った。
「こういう霧の日には、ごくたまに今のような幻影が見えることがある。光の加減で婆さんの顔が大うつしに霧に反射しただけのことだ」
「そうか。では進むぞ」蘇将軍が号令をかけ、一行はふたたび前進し始めた。
と、そのとき、シュッという鋭い音がしたかと思うと、あろうことか先頭を行く将軍の体がばらばらになって吹き飛んでしまった。首や四肢や胴体が、人形のそれのようにあちこちに散らばるのを見て、あまりのことに一同はしばらく口が聞けなかった。と、ある者が急に震えだし悲鳴を上げ、逃げ去ろうとした。動揺が皆に広がる。
「うろたえるな!」副官の李岳が叫んだ。「これはかまいたちという現象だ。つむじ風が起きたとき、いっしゅん周囲が真空になって、人間の体を切り裂くことがあるのだ」
副官はわれわれを睨みつけ「今からわしがこの軍の指揮をとる。予定通り行軍を続けるのだ」と言った。しかたなくわれわれはとぼとぼと歩き出した。
「ぎゃーっ」兵士の一人が叫び、そいつの首が吹き飛んだ。熱い血しぶきが皆の顔にふりかかる。
「副官、これもかまいたちですか!?」一同はざわついた。
私はそのとき、遠い岩陰に、青い服を着た小さな男が隠れるのを見た。そのことを李副官に告げると、
「ひょっとするとこれは月氏の新兵器かも知れん。青い服の男を見たらしとめるのだ。弓の用意だ」
するとほどなく岩陰から青いこびとが姿を現し、大きなひょうたんのような物をわれわれに向けた。一斉に矢が放たれたが、こびとにはまったく当らず、ひょうたんからシュッという音がしたかと思うと、またもや二名の兵士の体がばらばらになって吹き飛んだ。
「岩陰に隠れろ!」副官が叫び、われわれは必死に岩かげに飛び込んだ。
青い服のこびとは、今度は砂利のようなものを地面にたたきつけた。すると、地面のそこここから白い骸骨が姿を現した。手には長剣を持っており、それでわれわれに襲い掛かってきた。
必死に応戦したが、なにせ相手は骨だけの体だから、少々斬っても突いてもいっこうにこたえない。わたしは相手になった骸骨の首をはねることに成功した。するとそいつはこちらが見えぬらしく、見当違いのところを斬りつけるばかりだった。わたしは他の仲間に加勢し、一体また一体と敵の骸骨を倒していった。ようやく骸骨軍団を全員倒したときには、みな息も絶え絶えだった。味方の多くも骸骨兵士に殺されてしまい、あちこちに死体が転がっていた。
「副官どの、われわれは化け物を相手に戦っています。今のうちに退却したほうが得策ではないでしょうか」
「この世に化け物などいてたまるか」現実主義者の李岳は吐き捨てるように言った。「はるか西方には大秦国という大国があるそうだ。きっとそこでは科学が大いに発達し、それが月氏にも伝わっているのだろう。今の骸骨兵士も、高度なからくり人形に違いない。みんな、怖気づくな」
そのとき遠くで戦況を見ていた青い服のこびとが、青い頭巾をかぶって両手をあげるのが見えた。するとオレンジ色に輝く円盤がはるかかなたから猛スピードで飛んできて、黄色い光線であっというまにこびとを吸い上げ、円盤内に収めた。
「見てください!」私は円盤を指さした。
円盤は垂直に上昇し、いったん停止すると、雷のようなものを数条、機体から発した。そして来たときと同様、猛スピードで北方の空に消えていった。
みな唖然としてそれを見つめていた。ややあって、雨が降り出した。不思議に熱い雨だった。
「副官、いかがなさいますか」
李副官は何も答えない。呆然と雨に打たれるばかりである。
「ウ……ウウ……」どこからか、不気味に低いうめき声が聞こえてきた。あたりに横たわるいくつかの味方の遺体から、その声は発せられていた。心臓をえぐられ、あるいははらわたを露出させて血の海に横たわっているその者たちは、誰がどう見ても死んでいた。それが、うめき声を上げて四肢を動かし、起き上がろうとしている。
「死体が、死体が!」みな半狂乱になって叫んだ。
幾人かの死人が立ち上がり、目はよく見えぬようだったが、生きた仲間を見つけると咬みつき始めた。
「ぎゃーっ」肩やふくらはぎの肉を死人に食いちぎられ、絶叫する兵士。
われわれはそれを見るともう耐え切れなくなり、もと来た東のほうへいっせいに逃げ出した。
「待て、逃げるな!」李副官は叫んだが、誰も戻ろうとする者はいない。やがて四五名の生ける死人に取り押さえられ、はらわたや四肢の肉をむさぼり食われていたのが、李副官を見た最後だった。

われわれ兵士たちは、ひたすら故郷の中原に向かって歩いた。ほうほうのていで逃げてきたわれわれは、装備を置いてきてしまい、砂漠を何日も水なしで歩かなければならなかった。しかし故郷に戻ったところで、われわれのした怪異な体験を皆に信じてもらえるかどうか? 敵前逃亡と見なされ、極刑に処されるかも知れない。しかしそうはいっても、他に行くところはない。
飢えと渇きが極限に達しようかというとき、かなたに玉門関の関所が見えてきた。
とりあえず、助かった。みな安堵のため息を漏らした。
「われわれは月氏の討伐軍の者です……蘇将軍は戦死なさいました」
関所の重い扉が開いた。
「とりあえず、水をいただけないでしょうか」仲間の一人が言うと、関所の役人が奥から姿を現した。その役人は異様に青白い顔をし、白い目をして、服の胸のあたりが血だらけだった。屍臭がむっと迫ってくる。
「こいつも、死んでいる!」
仲間の一人は、歯をむき出した関所の役人にあっという間に肩の肉を食いちぎられた。
すると関所の扉の奥から生ける死人の大群がわっと現れ、われわれに襲い掛かってきた。

(おわり)

(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
No.349
2010/09/11 (Sat) 13:50:50

ある日、一つ目モンスターと岸川コーチが淀川河川敷の練習場に来てみると、IRバイアンズの主力選手の一人である獄目鬼修(ごくめき・おさむ)がベンチで首を吊っているのが見つかった。遺書らしきものがあり、そこには
「これ以上、モンスターや岸川コーチの拷問のような練習には耐えられません」
と書かれてあった。
岸川は激怒した。「俺に無断で命を絶つなんぞ、許してたまるか」
すぐさま救急車が呼ばれ、心臓救命装置(AED)で獄目鬼の胸に電気ショックが与えられた。なかなか息を吹き返さない中、救急車が到着した。
「俺は病院に行ってきますから、監督、練習を始めといてください」岸川は言って、救急車に乗りこんだ。
他のバイアンズの選手は獄目鬼には無関心で、キャッチボールなどをしている。
「よーし、守備位置につけ。ノックを始めるぞ」モンスターは言い、獄目鬼を心配しながらも、選手たちに檄(げき)を飛ばしつつ、ノックを続けた。

大阪市内のとある総合病院、集中治療室。
「先生、助かりますか?」と岸川。
「ああ、なんとか命は取り留めた。あと二週間は絶対安静だがね」
「ありがとうございます!」といって岸川は治療室のドアを勢いよく開け、獄目鬼の酸素マスクをもぎとり、その耳元で叫んだ。「おい、助かるとよ! まだお前には野球が出来る! 残念だろうが貴様は死ねないんだよ!」
岸川は、体中を包帯で巻かれミイラのようになった獄目鬼を強引にベッドから起こした。「二週間も休めると思うなよ、今から練習だ!」

練習場に連れてこられた意識のない獄目鬼は、セカンドの守備位置に無理やり寝かされ、岸川によるノックが始まった。
「貴様は野球の虎になるんだ! 千本ノックを受けるまで帰さねえからな!」
打球が、獄目鬼の体を次々と直撃する。獄目鬼はときどきうめき声を上げる。
「目を覚ますんだよ!」
百球もノックを受けたころだろうか、獄目鬼はむっくりと体を起こし、ともかくも打球を受けようとし始めた。包帯の下のあちこちから血が滴っている。
「ほらほら、まだ一球も取れてねえぞ! あーいらつくぜ! もういい! やっぱり貴様はぶち殺す!」岸川はバットを放り出しホルスターから拳銃を抜くと、獄目鬼に狙いをつけた。そのときである。ボールを岸川に渡す役をしていた外野手の愚呂(ぐろ)が、いきなり岸川の腕に噛みついた。拳銃の狙いは外れ、空に向かって弾丸は発射された。
「愚呂! なんのつもりだ!?」岸川は叫んだ。
「もう貴様らの指図は受けねえ! 野郎ども、かかれ!」愚呂の掛け声とともに、バイアンズの選手たちは手に手にバットを持って、岸川とモンスターに襲い掛かった。
「謀反か!? いい度胸だ! 束になってかかってこい!」岸川は叫んで、選手たちに次々発砲した。モンスターもバットで殴られたぐらいで参ることはなく、選手たちの腕を引きちぎったり臓器を引きずり出したりして応戦した。
しかし多勢に無勢、ついにモンスターと岸川はバイアンズの選手たちに取り押さえられ、木の杭に縛り付けられた。
「おい、俺たちをどうするつもりだ!?」岸川はあくまで強気な調子で叫んだ。
「ひひひ、どうするつもりだ、とよ」
「これまでの恨みを晴らすのさ。けけけ」
「さあ、悪魔の毒々バーベキューの始まり始まり」といってバイアンズの一人は、長い鉄の串を数本取り出した。「そら」と言って岸川の脇腹に突き刺す。
「むっ」眉をしかめる岸川コーチ。次々と鉄串が彼の体に刺されてゆく。
「殺すなら早く殺せ」岸川は言った。
「バーベキューは火で焼かないとね」選手たちは岸川の頭から灯油をかけ、マッチで火をつけた。燃え上がる岸川。
しかし、いっこうに苦しそうな顔はしない。「これで勝ったと思うなよ」岸川は口から白い液体を吐き出し「バチャビロビロビロビロ」と薄気味悪い機械的な声を発したかと思うと、ロープを引きちぎり、再び選手たちに襲い掛かった。
「早く殺せ!」パニックになったバイアンズの選手たちは、金属バットで狂ったように岸川の頭部を殴打した。岸川コーチの頭は炎をあげながら真後ろに折れ曲がり、首の付け根から人間のものとは思われない無数のチューブと白い液体をふき出させ、なおも選手たちに襲い掛かる。
「うわーっ、助けてくれ!」選手たちは人間以外の不気味な怪物を相手にしているのだと思うと、急に怖くなったらしく、全員が逃げ腰になった。
「そいつはロボットだ! 貴様らの手には負えん。俺に任せろ!」モンスターは縄を引きちぎり、かつては岸川コーチだったアンドロイドに立ち向かった。
モンスターは燃え盛るアンドロイドの四肢を引きちぎり、その頭部をねじ切った。ようやく大人しくなったアンドロイド。
「よし、せっかくだからこのロボットから話を聞いてみようじゃないか」モンスターは焼け焦げたアンドロイドの首を、ベンチにそっと置いた。
「岸川、聞こえるか?」モンスターが尋ねる。
「ああ、聞こえる」
「貴様はいったい何者だ?」
「もちろん、IR鉄道が開発したアンドロイドだ」
「野球のコーチをするために開発されたのか?」
「もちろんそれもあるがね。だが本当の目的は、野球を通して心身ともに強靭な少年戦士を作ることにあった」
「少年戦士?」
「IR鉄道と宇宙開発機構が共同で作った土星探査船が、三年前に未知の生物を発見した。それは無敵ともいえる危険きわまりないエイリアンだった。そこで少年戦士たちを鍛え上げて土星に派遣し、エイリアンを生け捕りにしよう、というのがIR鉄道の目論見だった」
「そんな厄介な怪物を捕獲してどうする?」
「アジャバラブ」
「何?」
「バラバラピーブロブロ。グッ」岸川だったアンドロイドはそこでこと切れてしまった。
「IR鉄道の考えてることはさっぱり分からん……しかしみんな、もうIRバイアンズはおしまいだ。悪い夢を見ていたとでも思って、もとの健全な中学生に戻ってくれ」
モンスターがそう言ったとたん、ピッチャーの剃度場(ぞるどば)が口から血を吹き出して倒れ、苦しそうに身もだえした。
「どうした!? 大丈夫か?」
剃度場の腹がいきなり裂け、血しぶきの中から眼のないコブラのような生物が頭を出した。その生物はあたりを見回すと、さっと身をひるがえして素早く蛇行し、草むらの中に逃げていった。
「なんだあれは?」モンスターは狐につままれたような顔で言った。

バイアンズのメンバーはこれからどうなるのか? 物語はまだまだ続く。


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









 ※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※







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