『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.323
2010/07/23 (Fri) 05:49:22
「俺が少年野球チームの監督に!?」
モンスターはIR鉄道の広報部から呼び出され、広報部長の唐突な申し出を受けて狼狽した。
「ああ、実は私の息子が監督をしているチームなんだがね、息子が病気で急に指導できなくなってしまったんだ。淀川バイアンズというチームなんだが」
「ちょっと待ってくれ。俺は野球はルールぐらいは知っているが、ほとんど素人だ。なんで俺にそんなことを頼む?」
「自分では分からないかも知れんが、君は子供たちにとって英雄なんだよ。正義の実現のためには手段を選ばない、今の時代には欠けた野武士的な魅力が君にはあるんだ。君の言う事なら子供たちはなんだって聞くだろう。もちろん野球に関して素人ということなら、専門のコーチを雇ってもいい」
「しかし部長さんにとってそれは私事だろう? 軽い気持ちでやれることかと思ったら、コーチを雇ってもいいなどと言い出す。あなたの狙いは何なんだ?」
「わがIR鉄道の地域への貢献をアピールすることだよ。淀川バイアンズは君を中心として、IRバイアンズと名前を変える。心身ともに健康な子供たちを育て、日本の輝ける未来を象徴するチームになるんだ」
「しかし、そんな仕事が俺に務まるだろうか」
「務まるとも。わが社はバイアンズに惜しみない協力を約束する。そしてこれは君にしかできない仕事なのだ」
「……わかった」
しばし広報部長と打ち合わせをしたモンスターが部屋を出て行くと、入れ替りに人相の悪い、髪を短く刈った中年男が入ってきた。
「まったくIRの広報部長さんともあろう人が、世のなか狂ってるね」
「何がだ」
「野球賭博に手を染め、既存の枠組みで儲けるだけでは気がすまず、少年野球を賭博の対象にしようなんてね。プロ野球賭博から客を引いてくる代わりに暴力団と儲けを折半……当然八百長も入ってくる。こんなことを実際にやろうなんざ狂ってでもなけりゃ思いつかねえよ」
「新しいビジネスなどというものは、狂気と紙一重のところから生れてくるものだ。さてモンスターが入ってくれたことで、少年野球も盛り上がり、いよいよこのビジネスも現実味を帯びてくるというものだ」
「まあいい、危なくなったらこっちは手を引くだけのことさ」
日曜日の早朝、IRバイアンズのメンバーは淀川の河川敷に集まり、モンスターと初顔合わせすることになった。岸川というコーチも付くことになり、モンスターは意気揚々と少年たちに挨拶した。岸川コーチも、スポーツマンらしい日焼けした顔をほころばせ、にこにこしながら自己紹介した。よく晴れた青空のもと、練習が始まった。グラウンドをうさぎ跳びで三周。三十名の少年たちが、懸命にうさぎ跳びして汗を流す。
「頑張ってる子供たちを見るのはいいもんだな」モンスターは言った。
「そうっすね」ホイッスルを吹いていた岸川が柔和な顔で応じたが、二人の少年が集団から脱落すると、途端に鬼のように表情を変え「おいそこ!!」そして岸川はいきなり拳銃を抜き、少年二人に向かって発砲した。そして倒れた少年たちのそばに駆け寄ると、とどめとばかりにズギュンズギュンと二人の頭を撃ちぬいた。一同うさぎ跳びをやめ、あまりのことにみな息を呑んで沈黙した。
「おい!! 根性なしの蛆虫がどうなるかこれで分かったか!! このチームは勝つために集まっている! 貴様らの心身を鍛えるなどという生やさしい目標なぞまったくない! 勝利あるのみ! さもなくば死!」岸川は叫んだ。
「おい、いくらなんでもやりすぎなんじゃないのか!?」モンスターは狼狽して言った。
「え? 一流のリトルリーグチームになるとこんなもんすよ」岸川は言って「ほらほら、うさぎ跳びを続けるんだよ! それから監督に忠誠を誓うんだ! 合言葉はジーク・モンスター!」
「ジーク・モンスター!」少年たちはうさぎ跳びしながら叫ぶ。
「声が小さい!! ジーク・モンスター!」
「ジーク・モンスター!!」
キャッチボールや守備練習も万事この調子で、根性がないと見なされた子供はつぎつぎ岸川によって消されていった。
練習も三回目になるとモンスターも岸川の流儀に慣れたのか、精神力に欠けた子供をチェーンソーや電気ドリルを使って率先して処刑するようになった。
モンスター、本当にこれでいいのか!?
(つづく)
(c) 2010 ntr ,all rights reserved.
モンスターはIR鉄道の広報部から呼び出され、広報部長の唐突な申し出を受けて狼狽した。
「ああ、実は私の息子が監督をしているチームなんだがね、息子が病気で急に指導できなくなってしまったんだ。淀川バイアンズというチームなんだが」
「ちょっと待ってくれ。俺は野球はルールぐらいは知っているが、ほとんど素人だ。なんで俺にそんなことを頼む?」
「自分では分からないかも知れんが、君は子供たちにとって英雄なんだよ。正義の実現のためには手段を選ばない、今の時代には欠けた野武士的な魅力が君にはあるんだ。君の言う事なら子供たちはなんだって聞くだろう。もちろん野球に関して素人ということなら、専門のコーチを雇ってもいい」
「しかし部長さんにとってそれは私事だろう? 軽い気持ちでやれることかと思ったら、コーチを雇ってもいいなどと言い出す。あなたの狙いは何なんだ?」
「わがIR鉄道の地域への貢献をアピールすることだよ。淀川バイアンズは君を中心として、IRバイアンズと名前を変える。心身ともに健康な子供たちを育て、日本の輝ける未来を象徴するチームになるんだ」
「しかし、そんな仕事が俺に務まるだろうか」
「務まるとも。わが社はバイアンズに惜しみない協力を約束する。そしてこれは君にしかできない仕事なのだ」
「……わかった」
しばし広報部長と打ち合わせをしたモンスターが部屋を出て行くと、入れ替りに人相の悪い、髪を短く刈った中年男が入ってきた。
「まったくIRの広報部長さんともあろう人が、世のなか狂ってるね」
「何がだ」
「野球賭博に手を染め、既存の枠組みで儲けるだけでは気がすまず、少年野球を賭博の対象にしようなんてね。プロ野球賭博から客を引いてくる代わりに暴力団と儲けを折半……当然八百長も入ってくる。こんなことを実際にやろうなんざ狂ってでもなけりゃ思いつかねえよ」
「新しいビジネスなどというものは、狂気と紙一重のところから生れてくるものだ。さてモンスターが入ってくれたことで、少年野球も盛り上がり、いよいよこのビジネスも現実味を帯びてくるというものだ」
「まあいい、危なくなったらこっちは手を引くだけのことさ」
日曜日の早朝、IRバイアンズのメンバーは淀川の河川敷に集まり、モンスターと初顔合わせすることになった。岸川というコーチも付くことになり、モンスターは意気揚々と少年たちに挨拶した。岸川コーチも、スポーツマンらしい日焼けした顔をほころばせ、にこにこしながら自己紹介した。よく晴れた青空のもと、練習が始まった。グラウンドをうさぎ跳びで三周。三十名の少年たちが、懸命にうさぎ跳びして汗を流す。
「頑張ってる子供たちを見るのはいいもんだな」モンスターは言った。
「そうっすね」ホイッスルを吹いていた岸川が柔和な顔で応じたが、二人の少年が集団から脱落すると、途端に鬼のように表情を変え「おいそこ!!」そして岸川はいきなり拳銃を抜き、少年二人に向かって発砲した。そして倒れた少年たちのそばに駆け寄ると、とどめとばかりにズギュンズギュンと二人の頭を撃ちぬいた。一同うさぎ跳びをやめ、あまりのことにみな息を呑んで沈黙した。
「おい!! 根性なしの蛆虫がどうなるかこれで分かったか!! このチームは勝つために集まっている! 貴様らの心身を鍛えるなどという生やさしい目標なぞまったくない! 勝利あるのみ! さもなくば死!」岸川は叫んだ。
「おい、いくらなんでもやりすぎなんじゃないのか!?」モンスターは狼狽して言った。
「え? 一流のリトルリーグチームになるとこんなもんすよ」岸川は言って「ほらほら、うさぎ跳びを続けるんだよ! それから監督に忠誠を誓うんだ! 合言葉はジーク・モンスター!」
「ジーク・モンスター!」少年たちはうさぎ跳びしながら叫ぶ。
「声が小さい!! ジーク・モンスター!」
「ジーク・モンスター!!」
キャッチボールや守備練習も万事この調子で、根性がないと見なされた子供はつぎつぎ岸川によって消されていった。
練習も三回目になるとモンスターも岸川の流儀に慣れたのか、精神力に欠けた子供をチェーンソーや電気ドリルを使って率先して処刑するようになった。
モンスター、本当にこれでいいのか!?
(つづく)
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No.322
2010/07/20 (Tue) 14:59:04
久しぶりに煎餅の「ぱりんこ」を食べた。これをフランス語に訳せば「パリジェンヌ」または「パリジャン」となるのだろうか。ぱりんこにパリのイメージはないけれど。
映画の「ランボー」シリーズが流行っていたころ、「ランボー地獄の季節」という映画があった。詩人ランボーについての映画かと思うが、スタローンのアクションものと間違えて見に行った人も少しはいたかも知れない。そして帰還兵ランボーの意外な詩才に驚いたかも知れない。あと「鉄腕アトム」と間違えて「鉄血宰相ビスマルク」という本を買ってしまった人の話も聞いたことがある。
人間は考える葦である。だから葦は考えない人間である。むかしアッシー、メッシーなどという言葉が流行ったが、じっさい彼らは何も考えていなかったのかも知れない。
ではいつもネスカフェを飲ませてくれる男性はネッシーだろうか。
スパイ大作戦にならって蘇梅大作戦(そばいだいさくせん)。宋代の詩人蘇舜欽と梅尭臣が大活躍するドラマである。誰も見ないだろうな。
電車の中でエクトプラズムが口から出てきたら、喫煙者と間違われて注意を受けるだろうか。
Amazonがこの間までオリビア・ハッセー主演の「青い騒音」をしつこく僕に薦めてきたが、最近は「女囚帝国・陵辱エロチカ」という映画を薦めてくるようになった。そんなにエッチな映画を検索していないのにである。しかしこの「女囚帝国」は七人が点をつけて星4つ半だから、相当面白いのだろう。
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映画の「ランボー」シリーズが流行っていたころ、「ランボー地獄の季節」という映画があった。詩人ランボーについての映画かと思うが、スタローンのアクションものと間違えて見に行った人も少しはいたかも知れない。そして帰還兵ランボーの意外な詩才に驚いたかも知れない。あと「鉄腕アトム」と間違えて「鉄血宰相ビスマルク」という本を買ってしまった人の話も聞いたことがある。
人間は考える葦である。だから葦は考えない人間である。むかしアッシー、メッシーなどという言葉が流行ったが、じっさい彼らは何も考えていなかったのかも知れない。
ではいつもネスカフェを飲ませてくれる男性はネッシーだろうか。
スパイ大作戦にならって蘇梅大作戦(そばいだいさくせん)。宋代の詩人蘇舜欽と梅尭臣が大活躍するドラマである。誰も見ないだろうな。
電車の中でエクトプラズムが口から出てきたら、喫煙者と間違われて注意を受けるだろうか。
Amazonがこの間までオリビア・ハッセー主演の「青い騒音」をしつこく僕に薦めてきたが、最近は「女囚帝国・陵辱エロチカ」という映画を薦めてくるようになった。そんなにエッチな映画を検索していないのにである。しかしこの「女囚帝国」は七人が点をつけて星4つ半だから、相当面白いのだろう。
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No.321
2010/07/09 (Fri) 21:05:38
笛
涼陰荷氣淨
月上晩鴉翻
玉笛横銀漢
靑天古帝魂
涼しいこかげに はすのきよらかな香りがただよい
月がのぼると 夕暮れの鴉は身をひるがえらせ巣に戻る
どこからか 笛の音が鳴りひびき 空には天の川が横たわっている
青く広がる夜空には いにしえの王の魂が宿っている
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涼陰荷氣淨
月上晩鴉翻
玉笛横銀漢
靑天古帝魂
涼しいこかげに はすのきよらかな香りがただよい
月がのぼると 夕暮れの鴉は身をひるがえらせ巣に戻る
どこからか 笛の音が鳴りひびき 空には天の川が横たわっている
青く広がる夜空には いにしえの王の魂が宿っている
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目次
上段の『☆ 索引』、及び、下段の『☯ 作家別索引』からどうぞ。本や雑誌をパラパラめくる感覚で、読みたい記事へと素早くアクセスする事が出来ます。
執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 ブログ引っ越しました。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※
❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。
❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。
✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。
☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。
♘ ED-209 〜 ブログ引っ越しました。
☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ
我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。
※ 基本的に当ページはリンクフリーです。然し乍ら見易さ追求の為、相互には承っておりません。悪しからず御了承下さい。※
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