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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/23 (Sat) 23:14:46

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No.268
2010/04/06 (Tue) 10:32:53

はたして死人の生き血を吸ったあとの緑川は、とたんに生気のみなぎった顔になって登校するようになった。こいつは人間の血をエネルギー源にしている化け物だ、と青柳は確信した。そして一学期の期末試験も、緑川蘭三は全科目満点を取った。校長や教頭をはじめ管理職の者たちは、ますます緑川に期待をかけるようになった。私立高校の進学実績を上げるには時間がかかる。ここ数年、ようやく斬獄学園は国公立大学の合格者が年に数名程度でだしたところで、この学園初めての東大合格者となることが確実である二年生の緑川には、教員たちは大きな期待をかけていたのである。
こうしたなか青柳の気分を暗澹とさせたのは、校長が、緑川が吸血鬼である疑いがあるのを知っていて見過ごそうとしていることだった。

夏休みとなり、生徒たちは一週間ほどの講習会を終えると、クラブ活動にいそしんだり、遠出したり、めいめいの夏を楽しんだ。教員は、夏休みだからといって生徒と同じように休むわけにはいかない。クラブ指導を始め仕事は毎日あり、基本的に休暇は日曜だけである。青柳はサッカー部の練習を見たり、試合の引率に行ったりした。

ある雨の晩である。青柳の腹にできた蛙の顔をした大きな人面疽が、ひさびさに口を聞いた。「吸血鬼……吸血鬼たちが騒いでいるぞ……注意しろ、注意しろ」
「また殺人が起こるというのか?」青柳は言った。
しかし人面疽は「注意しろ……注意しろ」と言うばかりである。そして口をあけ急に舌を伸ばし、蝿を取って口に入れた。人面疽はさも美味そうに蝿をむしゃむしゃと食った。
「ぎゃーっ」突然、女の叫び声がした。青柳がマンションの自室を出ると、若い女が廊下を走ってきた。同じマンションの住人だった。
「そ、そこに変な男がいるんです!」女は言った。
「どんな奴です?」
「まだ若くて、ガリガリに痩せてて……そいつ、私に噛み付いてきたんです」
見ると女は左の二の腕を押さえており、そこから血がポタポタ滴っていた。
「大丈夫ですか!? 消毒しないと……ちょっと待っててください」
青柳は消毒液と清潔な布、そして包帯を持ってきて、女に応急手当を施した。
「ありがとうございます……私、向うの端の部屋ですけど、もう戻るのが怖くて……もしよろしければ、一緒についてきてくださいま、ウギャーオ!!」と女は突然ゾンビのような灰色の顔になって、青柳に噛み付こうとした。そのときである。青柳のシャツの腹の部分から黄色い液体が飛び出し、女の眼に入った。毒液だ! 女は目を押さえて苦しみもがき、断末魔の叫びを上げながら倒れ、体は猛烈な勢いで腐りだし無数の油虫が体内から這い出て、最後はすべてが泡になって溶けてしまった。
「見ろ……吸血鬼の残骸だ……悪の匂いだ……」青柳の腹から、人面疽がつぶやいた。人面疽の毒液に青柳は救われたのだった。
「まだ吸血鬼はそこらにいるぞ……油断するな……」
そのとき、パトカーのサイレンが雨の街を切り裂いて鳴り響いた。今夜のこの街は犯罪の匂いに包まれていた。神経が高ぶり感覚が鋭敏になった青柳には、闇の中を邪悪なものが跳梁跋扈し、絶えず獲物を狙っているのが感じられるようだった。

「またもバラバラ殺人、犠牲者は二十代の女性」次の日の新聞の一面トップの記事がそれだった。「遺体からは血が抜かれる、警察は一連の殺人事件と同一犯であると断定」とも書かれていた。してみると昨日のパトカーのサイレンは、青柳の見知らぬバラバラ殺人を意味していたのかも知れない。
「フフフ……面白くなってきたぜ……敵は緑川だけじゃない……油断するな」人面疽はそう呟いた。

(つづく)

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No.267
2010/04/05 (Mon) 20:47:03

         

せっかくの春休みだが、このところ気分がすぐれず一日中横になっていることも多い。
しかし今日は体調が良い。
新任校での受け持ちクラスが決まった。高一の数Ⅰ、数Aと、なんと中一。ずっと高校生を教えてきたから、中一の生徒なんて小動物のようで、どう扱ってよいやら分からない。
それはともかく、今年度は大きな問題を起こさずに一年通したいものだ。

写真は最近聴いたドン・ランディ・トリオの「枯葉」(現題は “ Where Do We Go from here ? ”)。これはジャズにおけるピアノ・トリオの、間違いなく「隠れ名盤」だ。 感情が鋭敏になっているときなどこれを聴くと涙が出そうになって、自分の葬式のときにはこれを流してほしいと思ったほどだ。ジャズ・ファンの人は是非聴いてみてほしい。

みなさんのところでも桜は満開だろうか。今年はとくに花見に行く仲間がいるわけでもなく、暇なときなんとなく桜ノ宮に行って、ぶらぶら桜を見てきた。花を見て酒を飲むのも楽しかろうけれど、シャブ中毒の人たちが集まって、桜を見ながら薬物注射したらさぞかし爽快だろう、などと不健康な考えも浮かぶ。

もう何年も、頭の中に「吸血ソーセージ」という言葉がこびりついていて、小説に使えないかと思うのだが、どうもうまくいかない。

外に出ると本かCDを買わずにはいられない。節約のためにこの癖を直さなければと思っているのだが、今日はフィッツ・ジェイムズ・オブライエンという作家の『金剛石のレンズ』という短編集を買った。訳がラブクラフト全集の大瀧啓裕さんで、ぱっと見た感じやはり重厚そうな文章である。

人殺しなぅ。嘘。

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No.266
2010/04/05 (Mon) 20:40:42

毎度脈絡のない日記。

かつて某派遣会社に登録していたが、いちども仕事をくれなかったのに、いまだに「お仕事情報」や「セミナー情報」なるものをメールで送ってくる。もう送ってくるな、と電話したことがあるが、派遣社員としての「登録番号」が分からないとメール送信はやめられないという。しかし登録番号が記されている社員証なんてとっくの昔になくしてしまっている。こういうことって多くの人が困ってるんじゃないか。

TVが面白くないから、「怪奇大作戦」のDVDを見ながら夕食をとっている。
僕もSRIで働きたい。「スペクトルG線」とか「カドニウム光線」とか言ってもさっぱり理解できないけれど、水棲人間やかまいたちと戦ったり、やりがいがありそうだ。

ミルト・ジャクソンの「オパス・デ・ジャズ」を聴くと精神がなごむ。ミルトのヴィブラフォンとフランク・ウェスのフルートの絡み合いがよい。このアルバムの三曲目を聴くと「妖怪人間ベム」を思い出す。ベロがさびしい街並みで一人で石を蹴っている場面などで流れていたような曲だ。

復刊ドットコム( http://www.fukkan.com/fk/index.html )は絶版になった書物をリクエストによって復刊してくれる有り難い組織ではあるけれど、同時にどうも怪しい感じもする団体である。岩波文庫の武内義雄訳註による『老子』をリクエストしたところ、蜂屋邦夫訳註『老子』が出版されたおり、「岩波の『老子』が復刊されました!」と言っていた。しかしこの二冊はまるで別の書物である。どうも復刊ドットコムの手柄でもなさそうだ。
そこからよくメールが来る。いわく

 『倫理と無限』のリクエストにご投票いただきました皆さま、『宗教全般』
 『レヴィナス』『哲学』『ハイデガー』『道徳・倫理学』『竹田青嗣』
 『カント』に関連するリクエストに投票・商品をご購入いただいた皆さまに
 お知らせです。

しかし僕はそれらのジャンルにこんりんざい興味を持っていないのである。老子をリクエストしただけでこんなメールを連日送ってくるのはうんざりだ。
(哲学書を読む暇があったら数学書を読みますよ、僕は。というかこのメール配信はやめてもらえるのかな)


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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