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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/24 (Sun) 03:52:48

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No.236
2010/02/22 (Mon) 15:39:08

S-7地区を閉ざしていた緊急用の遮蔽シャッターが、何の前触れもなく持ち上がっていき、この地区は孤立状態から開放された。シャッターが下りたのは誤作動だったということが明らかになったからだった。
餓死寸前だったS-7地区の住民は、ほぼ全員命を取り留めた。磯野家でも、自ら命を絶ったマスオを除いては無事だった。
「わーい、またいろんな地区に行けるです~! 三輪車に乗って出かけるです」タラちゃんが叫んだ。
「よーし、またR-17地区でバーチャルリアリティを楽しむか。そろそろうきえの体にも飽きてきたしな」カツオが言った。
「私はまたR-25地区で薬物を楽しむわ」とワカメ。
「でも俺たち、隔離されている間にふつうの食事では満足できなくなったんだよな。あの味を知ったからには」カツオがあごをしゃくって、磯野家の玄関につながれている波平を注視した。波平は四肢を食用に差出し、犬のように四つん這いになって動かなければならなくなっていた。そして度重なる麻酔の投与のしすぎで脳に異常をきたし、犬同様の知能しかなくなっていた。
「ほら、波平。ビーフジャーキーでも買ってきてやるからな」
「わん、わん」
「でも、もう波平を食べるわけにはいかないわ」ワカメが言った。
「マスオさんの死体も腐らせちゃったしなあ」
「イクラちゃんなんて、やわらかそうで美味しそうじゃない?」
「美味しそうです~」
「じゃ、これからノリスケさんの家に行こう!」
三人は反抗が予想されるため、斧やくぎ抜き、金属バットなどを持って波野家を訪れた。
「タイ子おばさーん、いるー? ノリスケさん、いるー?」
「何、いまごろ」タイ子がドアを開けた。彼女の口の周りは血だらけである。
「いま、何時だと思っている」ノリスケが言った。彼の口の周りも血だらけ。「忙しいんだ。いま、イクラを二人で食べてたんでね」

カツオは目を覚ました。汗をぐっしょりかいている。いやな夢を見た。自宅で眠っているうち、長い長い悪夢に落ち込んだのだった。まだS-7地区を隔離するシャッターは降りており、波平の足を食べて寝たところだった。
こんなときは、うきえの体に身を任せるに限る。伊佐坂家に向かうと、リビングで三河屋さんがうきえをグーで殴っていた。
「三河屋さん、何をするんだ!」カツオは猛然と伊佐坂家に駆け込んだ。
そのときである。初めて聞く、波打つようなサイレンの音がシェルター全体に鳴り響いたのだった。 


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No.234
2010/02/22 (Mon) 15:29:06

このところ眠くてしかたがない。オーラのなんとかでエハラなんとかさんが「人生の転機には人間はよく眠る」と言っていたが、「よく眠るならばそれは人生の転機である」とは言っていなかったし僕のは違うと思う。

マイケル・ジャクソンの「This is it」を観た。あんなにずっと踊りっぱなしで息も切らさないマイケル・ジャクソンはすごいと思った。しかもあの華奢な体。「スリラー」や「ビート・イット」など往年のヒット曲もそれぞれ大掛かりな演出で歌っていたし、本番になったら何時間ぐらいの公演になったのだろう。しかし彼が局部を片手でしきりに持ち上げる動きは、本当にあれでよいのだろうか。

昨日は午前中具合が悪くて寝込んでいたのだったが、なぜか嗅覚が非常に鋭くなっていた。部屋に積み重なっている本の紙の匂い、外の気候の湿っぽい匂い。とても懐かしい心もちがした。いまは通常に戻ったが、嗅覚が鋭いというのも確かに生活を豊かにするように感じた。

狂犬病にかかった人が実際に犬のようなしぐさをする、という場面が「ブラック・ジャック」に出てきたが本当だろうか。そして恐水症状といって、水を極端に怖がるようになるのである。ふとそんなことを思い出したのは、ジューディス・メリル編『宇宙の妖怪たち』という本に、狼男が出てくる短編が入っていたからである。人類が火星に行ってみると、火星人は想像とはまったく違って狼そっくりの動物だった。知能は人間と同等に高かったが、人間のように猿に似た動物を軽蔑するところがあり、交流がどうも上手くいかない。そこで火星の親善大使とするべく、地球で狼男をつのった。すると「自分は実は狼男だ」という人は意外に多く、選抜して親善使節を作ることになった。火星の側でも、普段は狼だが猿に変身する「猿男」を組織し親善使節を作っていた、という話。この本、ハヤカワ・ポケット・ブックでいま絶版だからちょっと紹介してみた。

満月の夜に頭がおかしくなる、という人が「カオス・シチリア物語」という映画に出てきたが、ああいう人も本当にいるのだろうか。おかしくなるといっても、外に出て泣き叫ぶだけで人に危害を加えるわけではなかった。ただそこに嫁入りした女が苦悩するのである。月は地球に強く影響を及ぼしているから、そういう人がいてもおかしくない気もするが。

いぜん映画「狼男アメリカン」とプレスリーの「ブルー・ムーン」についての記事を書いた。
http://bladerunner.tou3.com/Entry/128/

平井和正の「ウルフガイ・シリーズ」も面白かったが二冊ぐらいしか読んでいない。平井和正の文章は大好きなのだけど、『幻魔大戦』も読んでいない。繰り返し読んだのは「ゾンビーハンター」だ。ハヤカワ・ポケット・ブックで出ていた『エスパーお蘭』も面白かった。

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No.228
2010/02/11 (Thu) 22:08:48

雪中作

凍泉銀世界
鷺影淨無塵
煮茗草堂靜
思詩玉漏頻
月中千古夢
天外萬花春
晩雪模糊裏
朝暉一望新

いずみは凍り 一面の銀世界
鷺の落とす影は清く 塵ひとつない雪の白さ
茶を煮る草堂の中はしずかで
詩を思ううち時間はまたたくまに経っていく
月の中には 永遠なる夢
はるか遠いところには 花咲き乱れる春がある
晩に雪が降りしきり ぼんやりした中に私はいたが
朝日のひかりで 視界はいちどに開けたのだった


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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