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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/11/24 (Sun) 04:35:19

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No.224
2010/02/09 (Tue) 22:45:20

       

タイムトラベルもので、時間旅行の技術が発達した時代が舞台。「エターニティ」という政府の組織があり、人間の歴史を望ましい形で維持すること使命とし、その職員は時代を行き来して歴史がヘンな方向に進まないように、各時代に介入し、干渉する。ある時代において、影響力のある人物については、その人が小石につまずいて転ぶか転ばないかといった小さなことで歴史が変わってしまうことが起こりうるから、「エターニティ」の職員はその小石を取り除いたり、ものおきのバケツの位置を三十センチずらすといった、細かな画策をはたらくことで「歴史を望ましい形に修正」する。やがて「エターニティ」設立者(時間旅行の創始者)という歴史的大人物の人生に介入することになり、うまくその人生を修正しないと、「エターニティ」の設立そのものが歴史上起こらなくなってしまうという危機におちいる。職員は必死で作戦を練るが、そのとき遥かな未来から「エターニティ」の活動を妨害する魔の手が……という話。話の面白さもさることながら、天才集団とされる「エターニティ」の幹部たちのキャラも立っていて、ぐいぐい惹きつけられる。

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No.217
2010/02/01 (Mon) 22:03:19

自分はいま数学の教師をし、大学時代も数学を専門にしていたが、初めは文学部に所属していた。大学院から数学に転向した自分のようなケースはかなり珍しいようだ。

文学部にいたころの研究室は、とにかくいろんな外国語を勉強しなくてはならないところだった。指導教官は、確か11ぐらいの外国語に堪能だと聞いた。まあ、文学作品の類ならどんな国のものでも卒論の題材にしてよいという研究室だった(僕がやったのは、インド・ヨーロッパ語族の言語を話す民族に共通の神話のパターンを探る、というものだったが、卒論はほとんどデュメジルという人の本に書いてあることをまとめただけのようなもので、とても「研究」とは言えないものだったと思う。その頃は数学に興味がいっていて、文学部の勉強はあまりやる気がなかったんだな)。

よく言われたのが、外国の文学を研究するものは最低、英独仏の三つ、あとはラテン語かギリシャ語のどちらか一方には精通していなければならない、ということだった。僕が本腰を入れたのは、英語、ドイツ語、ラテン語の三つで、フランス語とギリシャ語の勉強は中途半端に終わった。本腰を入れたものも、今はほとんど忘れてしまったが。

ラテン語はとくに好きだった。この言語では、動詞に限らず、名詞や形容詞も格変化する。例えば名詞は主格(……は)、呼格(呼びかけ)、属格(……の)、与格(……に)、対格(……を)、奪格(……から、etc)と六つの格に変化し、それぞれ単数と複数があるから、ひとつの単語について計十二の変化形がある(たとえば「友達」amicusの属格はamiciで、「本」はliberだから「友達の本」は"amici liber"という具合)。変化形もいくつかのパターンを覚えてしまえば、この十二個もすらすら言えるようになるのだが、初めは覚えるのに四苦八苦する。学部一年生の初めのころのラテン語の教室は、先生の後について格変化の大合唱になった。

「主人 dominus について、まず単数。ドミヌス、ドミネ、ドミニー、ドミノー、ドミヌム、ドミノー!」
合唱して笑えてくるものもときどきあった。
「女神」dea の単数。「デア、デア、デアエ、デアエ、デアム、デアー!」まるでパニックに陥った悪代官だ。
「骨」os の単数。「オス、オス、オッスィス、オッスィー、オス、オッセ!」何をそんなに押すのだろう。
代名詞も格変化する。「これ、この」の中性形hoc。呼格は主格と同じだからとばし、単数・複数続けて。「ホク、フーイウス、フイーク、ホク、ホーク、ハエク、ホールム、ヒース、ハエク、ヒース!」ヨーロッパでは、これを暗唱していてしゃっくりと間違われるというのが「あるあるネタ」なのだそうだ。

ラテン語の母音には長短あって、文法書や辞書では長母音の上に横棒がついていて区別できるが、普通のテキストにはそんな記号はついていないから、読み上げるときには注意が必要だ。きちんと勉強したことのない人はこれを間違えがちで、NHKのアナウンサーなどもよく誤った発音をしている。「次はモーツァルトの大ミサ曲ハ短調より『ラウダムーステ』をお送りいたします」これはLaudamus te(われらはあなたをほめたたえる)で、「ラウダームス・テー」と発音するのが正しい。

ちょうど学部一年生のころ塩野七生の『ローマ人の物語』の第一巻だったかが出て、それを読んだラテン語の先生が憤っておられた。ローマ人は地中海のことを"mare nostrum"(われわれの海)と呼んだが、塩野七生はこれを「マーレ・ノストルム」と書いていた。mare(海)は「マレ」と発音されるべきで、断じて「マーレ」ではない。このようないい加減なラテン語の知識しかない者がローマ人についての本を書くのはおかしい、とのこと。

ラテン語も普通に生活しているぶんにはトリビアな知識だな。バチカン市国にでも引っ越そうか。


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No.216
2010/02/01 (Mon) 15:10:40

          

未来世界。あらゆる富と権力が「クイズに答える」ことで得られる社会になっていた。この世界の最高権力者は「クイズ・マスター」と呼ばれる、クイズ出題機関の長である。クイズ・マスターは数年ごとに交代し、コンピュータによってランダムに選ばれた人物がこの地位を継ぐ(だからクイズ・マスターの地位だけはクイズでは得られない)。この「ランダムに選ぶ」行為は、ハイゼンベルクの不確定性原理に基づいており、その公平さは徹底したものである。誰も逆らえないこの権力者の選出方法により、かつての権力闘争は姿を消し、真に平等な社会が形作られるだろう……というのがこの制度の理念だった。

しかしクイズ・マスターに対し、一般市民は「刺客」を送り込む権利を持っていた。クイズ・マスターを殺した刺客は、あらたなクイズ・マスターになることが出来る(ここのところは、なぜか暴力による権力交代が認められるのである)。したがって、クイズ・マスターはあらゆる手段で身の安全を図るのだが、腕利きのテレパシストを何人も警護につけるため、たいていの刺客の接近は容易に察知できる。

クイズ・マスターの地位を転落したベリックは、本当は違法だが刺客として人間そっくりのアンドロイドを送り込む。遠隔で二十数名のベリックの部下が待機していて、彼らの意識を特殊な機械でアンドロイドの頭脳に代わるがわる宿らせながら、刺客アンドロイドを新クイズ・マスターに接近させる。SPのテレパシストは刺客の意識を追尾することでその位置を知るから、この作戦でテレパシストは混乱し、暗殺は成功するかに見えたが……。

設定から予想される「クイズ番組」的な見せ場はなく、具体的なクイズが全然出てこないのは期待はずれかも知れない。
刺客と身を守るクイズ・マスターの戦いは興味深かった。テレパシストというアイディアも効いていて、さすがディックと思わせる多面的な面白さを作り出していた。


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

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