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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/03/19 (Tue) 12:03:31

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No.262
2010/03/31 (Wed) 19:56:05

1959年のある日、ベルモント市にあるビヴァトロン原子炉が突如故障し、見学者八人が放射能障害を負う大事故が起こった。この物語は、この八人が意識を失っている間に観た幻覚の世界を描いている。

まず彼らが目を覚ますと、そこは魔法や呪術が幅を利かせ、バービ教なる宗教を皆が信仰している異様な世界だった。科学者も呪文の研究に熱中しており、ある意味中世に逆戻りしたかのようである。主人公のハミルトンは、バービ教の教会で「天に召される者のリスト」を見て、事故にあった八人のうちのシルヴェスターという退役軍人の意識の中に皆が閉じ込められているのに気づく。シルヴェスターを見つけた彼は、その頭をビンで殴り意識を失わせ、その世界から脱出するのに成功した。

しかしその次には、家庭的な中年婦人イーディス・プリチェットの世界に閉じ込められてしまう。芸術を愛する穏やかなプリチェット婦人の世界には、セックスが存在せず、みな生殖器を持たない体になっていた。ハミルトンはこの世界からも脱出を試み、何とか成功するが、今度は別な人間の意識に閉じ込められる……

前半は八人が閉じ込められる世界がコミカルなもので、ディックらしい暗さがなく、これならフレドリック・ブラウンあたりが書きそうな設定だと思ったが、転移していく新しい世界はどんどん救いのない憂鬱のものになっていく。単に幻覚の世界を描いて終わりなのではなく、そこで主人公たちが経験したことがラストの現実世界に生かされていく。


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

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セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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