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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/10/17 (Tue) 18:43:15

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No.423
2011/03/15 (Tue) 23:23:37

「もしもし?」礼子が電話に出た。
「青柳です。夜分遅くにすみません、緊急の要件なんです」
「どういうことですか?」
 青柳は、緑川が自宅マンションに忍び込んだこと、溝口も狙われる恐れがあることを告げた。
「いいですか、戸締りを厳重にして、誰が来てもドアを開けないでください」
「わかったわ」

 未明、溝口礼子の住むマンションに、光る目をした数名の男女が忍び寄っていた。彼女の部屋の扉に、彼らは爪を立て、生臭い息を吐き、中に押し入ろうとした。その者どもは人間のものとは思えぬ野太い叫び声をあげ、今度は窓を叩き割ろうとする。
 礼子は警察に通報した。住所を言い、暴漢が家に押し入ろうとしていると伝えると、しばらくしてパトカーのサイレンが聞こえてきた。と同時に怪物じみた暴漢どもはどこかへ消えたようで、辺りは静かになった。警官たちは、礼子の部屋の鉄製の扉につけられた暴漢たちの引っかき傷を見て、異常者が徘徊していると認め、以後この地域のパトロールを強化すると言って去っていった。

 礼子は出勤すると、さっそく青柳にこのことを伝えた。
「野獣のような野太い声に、生臭い息を感じたんですね? しかも相手は複数、間違いないですか」
「ええ」
「すると、緑川は仲間の吸血鬼をすでに増やしているに違いない……そしてその集団は、我々を亡き者にするか、でなければ吸血鬼の仲間に引き込もうとしている」
「でも、吸血鬼の話なんて警察は信じないでしょうし……」
「僕の古い友人の兄が、刑事をやっています。信じてもらえるかどうかは分からないが、紹介してくれるようその友人に連絡を取りました。明日の夕方、会う予定です。溝口先生も来てもらえませんか」

 青柳が紹介を受けた刑事は、河合虎児郎(かわい・こじろう)という三十代後半の背の低い人物だった。ひとなつこい柔和な笑顔の、刑事らしからぬ男だ。青柳は、これまでのいきさつを河合に話して聞かせた。とくに緑川がバラバラ死体から血を吸っていた件は、まだ警察には話していなかったから、河合刑事は興味深げに聞きいっていた。

「もちろん警察でも、これまでのバラバラ殺人の被害者の遺体には、人間のものとは思えない牙のような歯で噛まれた跡があることは把握していました。しかも共通の歯形です」河合刑事はゆっくり話し始めた。「はじめは野犬か何かの仕業だろうとされてたんですが、連続殺人で刀を持った人間と野犬が共犯とは考えにくい。青柳さんのほかにも、怪物じみた人間の目撃例は数件あります……ただちに吸血鬼どもがここらを徘徊しているとは結論できないが、私は緑川蘭三を張ってみようと思います。お二人のご自宅近くには、パトロール強化に加えて、私の部下を配置しましょう」
「あ、それから警察の行動は富沢と藤堂にも知られないように」
「もちろんですとも」

「河合警部は、きょうから緑川蘭三の監視を始めるようです」河合の上司である刑事課長の山倉が、警察署長に告げた。
「そうか」窓を見つめたまま、熊のように大柄な署長が応えた。署長の口からは、緑川と同じく鋭い牙が伸びており、生臭い息が大きくひとつ吐き出された。

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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209 〜 PNの由来は映画『ロボコップ』に登場するオムニ社の敵役ロボットからです。今まで書き溜めてあった自身の体験談やコラムを発表するには良い機会と思い寄稿させて頂きました。是非、御読みになってみてください。そして何より皆さんに楽しんで貰えれば嬉しいです。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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