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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/08/20 (Sun) 16:41:55

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No.150
2009/12/06 (Sun) 01:26:14

 制服を着ていたのは何時?なんて。

思い出せないくらい遠く感じる、けど、実はつい最近の話。
ひとつ門の外へ出れば、それだけ自由になれると思っていた。
だって誰も教えてくれなかったもの。

“翼を手に入れたとしても、体にまとわりつく様々な重りを捨てなければ飛ぶことは出来ない”


留学の話を彼から聞いた三日前の近所のファミレスpm10:00。
短くて2年半。
長かったら?永住かも。
「あたしを捨てる?」
努めて平静に聞いてみた。彼は一瞬ひどく傷ついた顔をして、それから自嘲気味に言った。
「お前も来るか?」
黙って首を横に振る。しかない。
あたしは元々、何も持ってやしなかった。生きていても仕方ないくらいに。
だから泣いた。
泣きながら言った。
「そこへ行って、あたしはどうしたらいいの?」

結局、あたしたちはお互いを捨てることにした。
永遠という言葉と一緒に。


明日、彼は飛行機で日本を発つ。
最後の日を、彼の部屋で過ごした。
すっかり片付いて何もなくなった部屋に二人、ごろりと寝転がる。
あたしは真新しい卒業アルバムを持ってきて、今まであったことを丁寧に掘り返すようにして語り合った。
どうでもいいようなくだらないことも何でも。
もう離れてしまうとわかったら、ほんの束の間でも繋がっていたいと必死になった。
ぬくもりも、口癖も、照れ隠しも、見栄も。
傍から見ればわからない彼の事は、あと少しで思い出になる。


やがて話疲れた彼は横になって眠りについた。
2、3度声を掛けたけど、深く寝入ってしまっていて何の反応もない。
諦めて電気を消した。


am3:20。もう2時間もすれば夜は明けてしまう。
愛しければ愛しいほど、光のような速さで。


飛びたくても飛び方を知らない。
それを知ってか知らずか、社会はあたし達に重たい枷を嵌めようとする。
今振り返れば、学校はぬるい楽園のような場所だった。
知りたくないことは、別に知らないままでも許された。
その環境を甘受したまま、あたしと彼はただひたすらにじゃれあっていた。

もう遥か遠くへ行ってしまった、虎になった男の話をかすめた授業。
―ねえ、あんたが虎になって、あたしの前に立ったとしても、あたしは絶対逃げないよ?
―け。臆病なくせに。
―だってあんただもん。それにきっと、あたしを食べずにどっか行っちゃうもん。
―知るかよ。わかんねぇよ。つか、ならねぇよ馬鹿。
―いつかあんたが消えても、あたしは忘れないでいてあげるからね、仕方ないから。


甘い戯言を今、本気にしてる。忘れないから。
でも、あたしには解る。
思い出はいつか風化する、と。
固い契りを交わしても、新しい今は重なって、それはいつの間にか日常に埋もれ、その姿を消してしまう。


辺りがうっすらと白んできた。
彼の無防備な横顔を視線でなぞった途端、彼に傷をつけたい衝動に駆られた。
ほんの小さなものでいい、ピアスやタトゥーのような一生消えないものを。
彼はきっとあたしのことを忘れてしまう。
永遠がただの言葉になったときと同じように。


もうすぐ朝がくる。
その前に、あたしが居た証拠を彼に残しておきたい。


am5:40。彼の中のあたしが消えてしまわないうちに。


(c)2009 tyuugokusarunasi
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快文書作成ユニット(仮)
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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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