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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/26 (Fri) 06:49:13

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No.153
2009/12/09 (Wed) 04:26:58

はっくしょん! はーっくしょん!
くしゃみを二度した私は身震いした。近頃はみんな私の噂をしているのだろう。
さてここは高校の職員室で、いま期末試験期間中であり、ちょうど私の作成した「数学Ⅱ」の試験が行われている最中だ。テスト開始から三十分経ったから、教室を見てこよう……おっと、頭と尻にプラグを差し込むのを忘れるところだった。プラグをつけていなければ、私は九九もできないでくのぼうなのだ。
ずるずると頭と尻から長いコードを引きずりながら、私は教室に向かった。
「試験問題について、何か質問はありますか」
生徒達は一瞬私をちらりと見たが、しんとしていた。何もないようだから立ち去ろうとすると、女子生徒の手が上がった。生徒たちのカバンにコードが引っかからないように難儀しながら、私はその生徒の机のところまで来た。
「何ですか」
すると女子生徒は声をひそめて「先生、結婚してください」
私は驚いた。試験時間中にそんな重大な申し出を受けようとは。冷静に考えなくては……私とこの生徒との接点は、ほとんど授業時間しかない。つまり彼女は数学の教員としての私しか知らないのだ。とすると、結婚したら私は彼女の前でこのプラグを抜くわけには行かない。いつもコードを引きずって歩く必要がある。たとえば新婚旅行に行って、どこかのトンネルをくぐったとしよう。私は必ずもと来た道を引き返さなければ、コードが引っかかって帰ることが出来なくなってしまう。そうした不自由をあれこれ考えているうちに、突如私のコードが後ろから引っ張られた。あちこちにつまずきながら、後ろ向きに教室から出て行った私は、そのまま校長室にまで引っ張ってこられた。
「N先生」ソファに座った校長が言った。「この学校では、生徒と教師の交際が禁じられているのはご存知ですか」
「はあ、しかし私はそんなことはしていません」
「二年六組のM.Mの保護者から連絡がありました。先生は彼女に結婚を迫ったそうですね」
「いえ、その逆です。私が結婚を迫られたのです」
「事実はどうあれ」校長は表情を曇らせて言った。「そのような噂が立ったというだけで学校の信用に関わります。N先生、責任を取ってください」
というわけで、私はその高校を辞職した。
学校からの帰途、電車の椅子に座って頭にプラグを差し込み、虚ろな目をした若者たちが数名目にとまった。彼らは瞳をすばしこく動かし、脳内でゲームを楽しんでいるようだった。近頃は、ゲーム機を手にすることなく直接脳でゲームをするようになったのだった。私もつまらない現実から逃避しようと思い、列車内の壁から多数出ているゲーム用のプラグを自分の頭に差し込んだ。

という夢を見た。目が覚めた私は、いま剣を片手にモンスターと戦っている。


(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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