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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/29 (Mon) 20:35:50

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No.236
2010/02/22 (Mon) 15:39:08

S-7地区を閉ざしていた緊急用の遮蔽シャッターが、何の前触れもなく持ち上がっていき、この地区は孤立状態から開放された。シャッターが下りたのは誤作動だったということが明らかになったからだった。
餓死寸前だったS-7地区の住民は、ほぼ全員命を取り留めた。磯野家でも、自ら命を絶ったマスオを除いては無事だった。
「わーい、またいろんな地区に行けるです~! 三輪車に乗って出かけるです」タラちゃんが叫んだ。
「よーし、またR-17地区でバーチャルリアリティを楽しむか。そろそろうきえの体にも飽きてきたしな」カツオが言った。
「私はまたR-25地区で薬物を楽しむわ」とワカメ。
「でも俺たち、隔離されている間にふつうの食事では満足できなくなったんだよな。あの味を知ったからには」カツオがあごをしゃくって、磯野家の玄関につながれている波平を注視した。波平は四肢を食用に差出し、犬のように四つん這いになって動かなければならなくなっていた。そして度重なる麻酔の投与のしすぎで脳に異常をきたし、犬同様の知能しかなくなっていた。
「ほら、波平。ビーフジャーキーでも買ってきてやるからな」
「わん、わん」
「でも、もう波平を食べるわけにはいかないわ」ワカメが言った。
「マスオさんの死体も腐らせちゃったしなあ」
「イクラちゃんなんて、やわらかそうで美味しそうじゃない?」
「美味しそうです~」
「じゃ、これからノリスケさんの家に行こう!」
三人は反抗が予想されるため、斧やくぎ抜き、金属バットなどを持って波野家を訪れた。
「タイ子おばさーん、いるー? ノリスケさん、いるー?」
「何、いまごろ」タイ子がドアを開けた。彼女の口の周りは血だらけである。
「いま、何時だと思っている」ノリスケが言った。彼の口の周りも血だらけ。「忙しいんだ。いま、イクラを二人で食べてたんでね」

カツオは目を覚ました。汗をぐっしょりかいている。いやな夢を見た。自宅で眠っているうち、長い長い悪夢に落ち込んだのだった。まだS-7地区を隔離するシャッターは降りており、波平の足を食べて寝たところだった。
こんなときは、うきえの体に身を任せるに限る。伊佐坂家に向かうと、リビングで三河屋さんがうきえをグーで殴っていた。
「三河屋さん、何をするんだ!」カツオは猛然と伊佐坂家に駆け込んだ。
そのときである。初めて聞く、波打つようなサイレンの音がシェルター全体に鳴り響いたのだった。 


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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209ブログ引っ越しました。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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