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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/03/19 (Tue) 18:16:18

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No.372
2010/11/26 (Fri) 21:21:22

太陽系の居住可能な惑星・衛星に多くの人類が暮らす時代。火星、金星および大惑星の衛星群からなる惑星連合と、地球との間に軋轢が生じていた。惑星連合の星々では、当時の工業にとって不可欠な水銀・鉛・ウラニウムといった重金属がほとんど手に入らず、それらを地球からの輸入に負っていた。そんな折、月の内部にそうした重金属が豊富に存在することが地球の科学者によって証明され、それが惑星連合にも知られるようになった。月は地球の管轄地であったが、惑星連合はその資源を求め、地球はそれを与えまいとした。双方の緊張が高まるなか、月基地の天文台から情報が漏れている形跡が認められ、惑星連合のスパイがその職員の中にまぎれこんでいることは確実だった。
地球から月天文台へ派遣されたサドラーは、表向きは会計士だったが、実は惑星連合側のスパイを発見する使命を帯びていた。そんな折、月天文台からの観測で超新星が発見され、世紀の大発見と天文台は興奮状態になる。星に興味のなかったサドラーも、ドラコニス新星と名づけられたその超新星を望遠鏡で観たり、観測用の機械類の説明を受けるなどするうち、天文台のメンバーに自然ととけ込んでいった。しかし、いつまで経ってもスパイは見つからなかった。
とうとう、惑星連合の戦闘用宇宙船が月を攻撃してきた。地球側も新兵器で応戦し、結局勝敗は決まらなかった。打撃を受けた惑星連合の宇宙船の乗組員が、地球の旅客用宇宙船によって救われたことは、戦後の和平を大きく前進させた。けっきょく月は共和国として独立し、地球と惑星連合に対し中立の立場をとりつつ資源を提供するようになった。
スパイが誰だったかサドラーには分からずじまいで事件は決着してしまったが、彼は個人的興味からその謎をときたいと思い続ける。そして三十年後、サドラーはついにスパイを発見し、機密を惑星連合に送るのに使った思いもよらぬ方法の説明を受ける。

とても読みやすかった。月で起こる奇妙な現象の物理的説明も好奇心をそそる。最後の謎解きも興味深いものだった。アポロ11号が月に到達する以前に書かれたとは思えない、クラークならではの緻密な科学考証に脱帽。

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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

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主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

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