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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
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No.435
2011/05/23 (Mon) 23:42:20

 さいきん新書で古代ギリシャ関係の本をよく読んでいるから、その勢いにのって古書店で「岩波文庫 ギリシアの悲劇・喜劇」十五巻セットを買った。内容は

『アガメムノン』 アイスキュロス作 呉茂一訳
『アンティゴネー』 ソポクレース作 呉茂一訳
『オイディプス王』 ソポクレース作 藤沢令夫訳
『コロノスのオイディプス』 ソポクレース作 高津春繁訳
『テーバイ攻めの七将』 アイスキュロス作 高津春繁訳
『ヒッポリュトス ―パイドラーの恋―』 エウリーピデース作 松平千秋訳
『タウリケのイピゲネイア』 エウリーピデース作 呉茂一訳
『アカルナイの人々』 アリストファネース作 村川堅太郎訳
『雲』 アリストファネース作 高津春繁訳
『蜂』 アリストファネース作 高津春繁訳
『平和』 アリストファネース作 高津春繁訳
『鳥』 アリストファネース作 呉茂一訳
『蛙』 アリストファネース作 高津春繁訳
『女の平和 ―リューシストラテー―』 アリストファネース作 高津春繁訳
『女の議会』 アリストファネース作 村川堅太郎訳

 出版の時期がまちまちだからか、旧漢字が使われていたりいなかったり、旧仮名遣いが使われていたりいなかったりしている。しかしこういう古典中の古典ともいうべき作品群は、個人的には旧字体・旧仮名遣いで読みたい。
 訳者の中で藤沢令夫さんが『オイディプス王』の一作だけに顔を出している。この本のまえがきにこうある。

われわれの常識的な領域区分からいえば、悲劇作品は「文学」の領域に属し、したがって「哲学」を専攻する訳者は、その専門外の者ということになるであろう。じじつ訳者は、そのことから由来する無知無学を最もおそれ、この拙訳に対しても、識者からのきびしい批判を心から待つものである。
 しかしながら他方、このような「哲学」とか「文学」とかいった区別は、われわれの眼界狭小(スミークロロギアー)がこしらえあげたものであり、こんにちのわれわれにおける、経験そのものの分裂を意味しているとも言えよう。ソポクレスにせよ、プラトンにせよ、ヨーロッパの古典的世界における第一級の精神家にとって、このような経験の分裂ほど無縁なものはなかった。哲学という、人間の生き方に関する精錬された思索の営みを支えていたものは、紀元前五世紀までにつちかわれてあった「経験」の全総体であり、その全総体のなかにあってギリシア悲劇が占める位置は、きわめて重要である。いわゆる「思想」に関する面のことばかりを言うのではない。最も注目に値するのは、ソポクレスの作品が示しているような、劇(ドラーマ)という人間にとって本質的な媒体の中でおこなわれた、正確無比な言語的経験の結晶なのである。これなくしては「哲学」は生じえず、逆に哲学的次元にまで高められた視点とロゴス(言葉・思考)的修練なくして、どうして真に「文学」が理解されえよう。(引用ここまで)

 なるほど。
 ところで文学とか哲学とか、自分の専門分野をはっきりさせておかないとコウモリのようになって、今日の学会では居心地が悪くなる――自分が文学部にいたときはそんな雰囲気があったけれども、現在ではどうなのだろう。
 藤沢令夫さんは2004年に亡くなっているが、今から十年ほど前、文学部の先輩が何かの学会で氏を初めて目にし、七十過ぎにしてはその若々しくてかっこいいのに驚いた、と言っていたのが印象に残っている。

 専門の分化というと、今日たとえばライプニッツの哲学を研究する人が、通常微積分をどこまでつっこんで追究するものだろうか、気になるところだ。
 哲学者と数学者というと、世の役に立たないことを研究する人種の二巨頭であって、似通ったところがあるはずだが、両者が最も接近している箇所は論理学、数理論理学(数学基礎論)という分野であろう。英語ではこれらはすべてひっくるめて logic と呼ばれる。哲学サイドで論理学をやっている人も、数学サイドで数学基礎論をやっている人も、英語では同じく logician である。日本ではまだ文理の垣根が大きいようだが、海外ではその垣根を乗り越えて、互いの分野に貢献する哲学者・数学者が珍しくないようである。
 自分はまだ不勉強で数理論理学には疎いけれども、そのうちその方面から勉強を進めて、むかし投げ出したヴィトゲンシュタインなどに再挑戦したいものである。


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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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