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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/08/19 (Sat) 07:04:35

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No.553
2012/03/19 (Mon) 17:45:17

 ふだんは立ち食いそばに入っても、殆ど蕎麦しか食べない。
 忙しい営業の合間を縫って、駅やホームの立ち食いそばを食すのはある種の
感動であると思う。
 以前にも書いたが、たとえば「葱を多めにして」とか「大盛にして」と頼んでも
いやな顔せずにそれ相当の量を即座に出してくれる店なら大概は満足する。
 逆に大盛というほどの量・・・(これは野菜の出来にもよるので何とも言えないが)ケチるのは許せても「ハイ、ネギ大盛りですね!」とオーダーを受けておきながら、いざ出汁を入れ、蕎麦を盛り天ぷらを乗せた時点でネギのことなどすっかり忘れている・・・これでは論外だ。

 最近、横浜で相鉄線に乗り換えて行く現場を担当しているので、JRの改札を抜け、相鉄線の改札をくぐった突き当りの「星のうどん」で昼をとることが多い。
 どこの現場に行っても、最寄り駅近辺に必ず立ち食い蕎麦屋を探すのが習慣だ。が、最寄り駅にはないこともある。多くの場合、乗り換えターミナルの近辺で捜すのが賢明だ。

 昔は、駅の近辺や地元の蕎麦屋が駅に軒を連ねる格好で店を出し、駅の乗降客にそばを食わせたのが立ち食い蕎麦の始まりと聞くが、現代のJR線の駅では殆ど単一化されたそばしか味わえないのが現実だ。むしろ、私鉄ローカル線の方が個性的な店が多い。
 横浜の「星のうどん」もそのひとつだ。
 だしは関西風でうどんが透けて見える。さほど醤油の味はしない。野菜かき揚げにネギを沢山入れて、生姜フレッシュなる小鉢に入ったおろし生姜を二匙ほど入れて、七味はやや控えめで食べる。ここでは、そばは置いていない。
 
 JRの西口、ビブレへ向かう駅前の角にも立ち食いそば屋があっていつも繁盛している。一度、話のタネに行ってみたが特別旨いというほどじゃない。ただ、昭和の活気を伝えるような懐かしい空気が漂っていた。「ネギの大盛サービスは事情により本日はできません」と書いてあった。懐かしさを覚えるのは、煩雑なカウンターで袋から出した麺を湯通しし、作り置きの天ぷらをのせるからかもしれない。昔はどこもこれだった。

 中学で越境入学していたので、通学には東武線を使って小一時間かかった。
今と違ってコンビニもマクドナルドもない時代、そばにコロッケやちくわの天ぷらを入れたそばは実に旨かったし、腹の足しにもなった。

             

 松田優作の遺作となった『ブラックレイン』は、日米の文化や食を含めた習慣の違いを見事に描き出すことに成功している。中でも、高倉健演じる松本刑事がマイケル・ダグラス演じるニック・コンクリンとともに張り込みでうどんを食べる一幕が非常に印象深い。割箸すらうまく使えないニックは、うどん屋の女将に箸の使い方を習いながら「pepper・・・」と差し出される七味をかけて不器用だが旨そうに頬張る。張り詰めた深夜早朝の空気がうどんの湯気で匂いすら感じられそうなこのシーンは今見ても素晴らしい。
 腹ごしらえを真剣にする場面と言うのはある意味感動を誘うのかもしれない。

 さて、昨年の3月11日と言えば自分は豊洲に居た。竣工して間もない大きな事務所ビルの点検補修の打ち合わせの最中だった。
 不気味な振動と激しい揺れの末、やっと外へ出た時は路上に止まっている10tトラックやラフターなどの重機がまるで動物のような動きで揺れていたし、足元を見れば黒い水が流れ出し瞬間、これが液状化だと悟ったものだ。

 豊洲と言う地名は昭和の初期に一般公募で付けられた名前だという。
 「豊かな洲」と名付けられたその反面、関東大震災の瓦礫が埋められたのだともいう。
 意外に知られていないのはセブンイレブンが1号店をオープンさせたのは彼の地と言うことだ。今でも「アーバンドク」とか言う名前になって、ららぽーとの後ろにそびえる鉄骨で出来たクレーンが当時の面影を今に残す。

              

 戦前、戦中、戦後と港湾、船舶整備の役を担ってきたその町も、今では超高層マンションのメッカ、見本市のようだ。数年前にNHKで観た「小さな旅」だったと思うが、一棟、数百所帯のマンションが建つと小中学の同級生も格段に増えるんだとか。
 少子化、ドーナツ化が叫ばれる現代にあってなかなか珍しい現象だと思う。
 駅の近辺にはやはり超高層の大きなオフィスビルも立ち並び、昼休みともなると屋外へ出たサラリーマンやОLたちが一斉にランチへ向かう。
 ビルの規模によっては、魅惑的な社員食堂も完備しているから案外駅の近辺で昼食を済ます人々は少ないかもしれないが実態は分からない。

 この豊洲にも立ち食いそば屋はあるにはあるが、駅からは裏通りに一本入った処で分かりにくいし、余り行列しているのを見たことがない。
 吉野家もなか卯もあるが、立ち食いそばの活気とはやや違う。

 ららぽーとの中にあるフードコートは個性的なランチも選べるが、やはり家族やカップルで訪れる場所であってサラリーマンのお昼を過ごす場所ではない。
 こうして考えると東京駅まで数キロ、数分と書かれて沿岸部に造られつつあるベッドタウンが決定的に魅力的な街には成りえないのが分かる。

 家族とともに海や街を見渡す超高層の町も安息ばかりでは刺激は生まれない。
やはり、街の魅力と言うのは飲食も含めた個性や習慣が一体となって通りや建物や路地やビルに漂わせるカオスや匂いだと思う。
 新橋や神田が廃れないのはそのあたりだと思う。

 蕎麦屋から回った突き当りに駄菓子屋があって、沢山の子供が出入りしていた。
 マンションが立ち並ぶ随所、一角には高度成長期に活躍したであろう船舶の錨、港湾の搬出入に使われたと思えるような鉄道の動輪や線路の残骸が、オブジェのようにららぽーとの裏の公園の一角に飾ってある。
 これはこれで悪くない。

              


 堅調な人口増加を続けるこの街では駄菓子屋も続けていけるのかも知らない。
 復興だの頑張ろうだの絆がどうしたと偉そうなことを言うつもりも権利もない。
が、ローンの重荷に耐え、丼の蕎麦や饂飩をすする男たちの背中を哀愁でなく、かつて昭和の男たちがそうであったように強く逞しい男に・・・と願うのは空し過ぎるのだろうか?・・・・。



 (c)2012 Ronnie Ⅱ , all rights reserved.




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