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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/29 (Mon) 09:09:32

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No.212
2010/01/30 (Sat) 15:20:01

日蘭交流史の中でひときわ異彩を放つボッス神父について深い興味を抱いたのは、2007年の夏ごろだったと思う。この人物は通常、江戸時代に単身和歌山まで来てフラフープを伝えた人物、ということで知られているが、地元では今なお多くの信者を引きつけているのである。取材してみると地元での神父についての情報は錯綜を極めていたが、そこから彼の人となりが徐々に浮かび上がってきたのだった。

「というわけで和歌山までやってきたのです。ボッス神父についてお話を伺えますか」
「ボッスさまのお話ですか、それはもう子供のころから耳にタコができるぐらい聞かされてきましたのよ。その昔、わが一族は代々隠れナポリタンでして」
「キリシタン」
「そうその隠れクリンゴン。それでお代官様からじきじきにお達しがあって、踏み絵っていうんですか、デウスさまとマリアさまの絵を地べたに置いてですね、われわれに踏まそうっていうんです」
「踏みましたか」
「そりゃ踏めませんよ。朝晩拝んでいる神様なんですもの。そのとき、あなたがお尋ねになったボッス神父がわれわれを救ってくださったんです。敢然と代官所に乗り込んできた神父様は言われたのです。そんな絵や像を踏んだからと言って神様はお怒りにならない。それよりあなたがたが苦しむのを見るのが何よりつらいと思し召しのはずだ、さあ踏みなさい、その絵を、とね」
「その当時、外国人の神父が代官所に乗り込んでくるなんて異例のことだったでしょうね」
「そりゃ役人たちはたまげたそうですよ。外人なんて赤鬼とか化け物のように思ってたんですからね。しかし代官様はさすがに胆力のある人で、日本人よりはるかに大柄なボッス神父を見ても屁とも思わなかったようです。何しに来てんこの毛唐が、と言って神父の胸ぐらをつかんだそうですよ」
「神父はどうしましたか」
「それは鉄の軌条のごとき信仰をもった神父様ですもの、いささかもひるまず、代官様を神の愛を知らぬ憐れな一個の人間として扱い、優しく諭したのです。神様は言われました、隣人を恨むなかれ。恨みからは何も生れません、ご覧なさいわれわれ皆を等しく照らすあの太陽を、神様はどんなに罪深い人間をもその慈愛で包み込むのです。あなたも神の子としてずっと愛されて育ってきたのですよ、と。しかしこの太い悪代官には馬の耳に念仏だったようです。ボッス神父のこのお話を聞いてもぽかんとして、やおらこう言い放ったのです。おまえ外人やからチンポでかいやろ。さすがの神父様もこれにはたじろぎました。で、でかくないですよ。と答えるのが精一杯だったそうです。こういった日本人の無理解にもめげず、ボッス神父は三十年にもわたってこの地方の教化につとめ、その一生をこの地で終えたのです」
「神父はどのようにフラフープを伝えたのですか」
「それも子供のころから蛸に耳ができるぐらい聞かされてきましたわ。ボッスさまは、信仰の強さは腸の長さに比例するという不思議な考えをお持ちでしたの。それで腸を鍛えるにはフラフープが一番だ、というので近所の子供たちに教えていましたわ。ずいぶん多くの子が腸捻転を起こし、信仰どころではございませんでした」

このような取材を通して、僕はボッス神父について論文を書き、幸いにしてそれは雑誌「オランダ」の日蘭交流400年記念号に載った。噂によるとボッス神父は皿回しの名人だったそうだが、これには確たる証拠がないため十分な論述ができなかった。読者諸賢の叱正を請う次第である。


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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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