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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/08/20 (Sun) 16:57:57

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No.284
2010/04/18 (Sun) 16:53:26

「おい、ケンカがすんだあとあのモンスターを殺しちまえば、まるまる二十五億儲かるんだがねえ」と丑寅院長の妻・兼子がひそひそ声で言った。
「おふくろ、そりゃひでえや」と息子の与一兵衛が言った。
「馬鹿、盗っ人人殺しと言われるようじゃなきゃ顔が立たないんだよ」
「おっかあの言うとおりだ」丑寅院長がいった。
その親子の会話を、モンスターは陰で立ち聞きしていた。

「よし、これからモンスターの旦那を先頭にして熊沢病院に殴り込みだ!」
「おー!!」丑寅病院の若い者、つまり大部分は患者だが、威勢よく応じた。
熊沢病院からも、院長はじめ若い者たちが大勢繰り出してきた。
「おっと、小柳の先生が見あたらねえな」
「あの先生は逃げたぜ。救急車を盗んでトンズラだ」とモンスターが言った。続けて銀のアタッシュケースを放り投げ「悪いが俺は抜けさせてもらうぜ。ケンカに勝った後に殺されちゃ元も子もないものな」 
「こいつ、怖気が振るったんだよ」と兼子が言うのを無視してモンスターは
「おーい、熊沢の! 俺は腹に据えかねることがあって丑寅病院とは手を切った!」と言って火の見やぐらに登って、熊沢と丑寅のケンカを高みの見物と洒落こんだ。

そのときである。熊沢病院から白衣を着た若い医師がすっとんで出てきて叫んだ。
「大変だ! 地下倉庫のタンクに貯蔵していたトライオキシン235が漏れ出したぞ!」
「なんだと!?」と熊沢院長はじめ医師たちはうろたえた。
まもなく、全身無毛の黄色味がかった奇妙な人間たちが四五人、病院から飛び出してきた。その者たちは敵味方の区別なく襲い掛かり、頭にかじりついた。
「熊沢の! それは陸軍が開発した薬品だろ? 死者を生き返らせるという」と丑寅院長。
「そうだ! このゾンビどもを退治するには全身バラバラにするか、焼却炉で焼くしかない!」
「ひとまず休戦しよう!」
「おう、分かった!」

「ちくしょう、ゾンビどもが俺の筋書きを書き換えやがった」モンスターはそう呟いてやぐらから降り、そしてなじみのうどん屋に入っていった。
うどん屋のおやじ・権じい(ごんじい)はニコニコしてモンスターを出迎えた。
「よ、来たな。せっかくのケンカも休戦になったことだし、めでてえめでてえ」
「馬鹿やろ! 表を見ろ。ゾンビどもがウロチョロしてるだろうが。バクチ打ちの手打ちとゾンビぐらい怖いものはねえんだぞ」
「おい、そこの若いの」と、奥の席でうどんをすすっていた男が言った。
「俺のことか?」とモンスター。
「そうだ。さしものモンスターもゾンビにはかなわないと見えるな」その男は髭をぼうぼうに生やした五十がらみの男だった。
「お前は誰だ?」
「俺の名は熊谷谷谷(くまがや・やつや)。またの名をゾンビー・ハンター。見てろ」
熊谷はそう言って窓を開け、いきなりライフルを発射した。散弾銃だ! 無数の弾丸が一人のゾンビの体のあちこちに命中したと見え、あっという間に体がバラバラになってしまった。
「モンスター、俺の弟子にならないか。ゾンビとの戦い方をみっちりしこんでやる」
「余計なことだ、俺はあくまで一匹狼だ」
しばらくするとうどん屋に、若い血色の悪い男が幼児を連れて入ってきた。「おやじ、邪魔するよ」
「よう、伝次郎じゃないか」と権じい。
「俺よぉ、ゾンビに女房を寝取られちまった。へへ、笑ってくれや」
「相手がゾンビじゃなあ……なまじ別嬪な女房をもらうからそういう目に合うんだ。どこで寝泊りしてるんだ?」
「自分の家の隣で野宿さ。女房に触るとゾンビに殴られるからな。まあ殴られつけて、もう慣れちまったが」
モンスターは伝次郎を横目にするめをかじって吐き捨てるように言った。「俺はああいうやつは好かねえ。……よう、腹を決めたぜ。熊谷のおっさん。俺はあんたに弟子入りする。ゾンビとの戦い方をぜひ教えてもらいたい」
モンスターは熊谷谷谷とがっちり握手を交わした。
そのとき、一発の銃声が外から鳴り響いてきた。「熊沢の卯之介が帰ってきたぞ! からっ風もお出迎えだ!」


(つづく)

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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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