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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/10/21 (Sat) 11:55:14

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No.441
2011/07/23 (Sat) 00:52:44

 統一教会に出入りしていたころの話の続き。この団体について組織だった話をするのは大変だから、とりとめもなく自分の身辺に起こったことを中心に書いてみる。

 一ヵ月の合宿でも、ほぼ毎日講義が行われ、時おり教会内部で非常に地位の高いらしい講師が招かれ講演が行われた。とくに印象に残っているのは、統一教会の教義だけではなくキリスト教の教派全般にわたって広範な知識を持つHという人物だった。猛烈な早口で、物理や数学の話もまじえて縦横に宗教についてしゃべりまくるその語り口は、ただの宗教家というより思想家といった印象があった。統一教会の教義を信じる信じないは別にして、その博学ぶりについては敬服しないわけにはいかなかった。統一教会におけるバイブルは『原理講論』という分厚いハードカバーの本で、講義のときは皆それを持参しているわけだが、何のミーハー心か自分の原理講論の扉にH氏からサインをもらった。いま見返すとこうある。

 御言の目的は実体 実体の目的は心情である 1995年8月24日 

 だからもう十五年以上も前の話だ。ちなみに原理研究会の合宿では参加者はいくつかの班に別れ、夕食後「レク」(と呼ばれていたと思うが定かでない)という「出し物」を班ごとにすることがあった。コントをしたり歌を歌ったりしなければならないから、嫌がる参加者もいた。その年、オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こし話題になっていたが、コントの中でオウムのヨガ修行者のマネをする者もいて「おお、アブない!」と爆笑を誘っていた。世間からは統一教会もアブない団体と見なされていたのだから、思えば変な話である。あと参加者は自分の誕生日には皆の前で歌を歌わなければならない、という不文律があって、カラオケ嫌いの僕にはこれはストレスだった。とりあえず一番うまく歌えるH2Oの「思い出がいっぱい」を歌った。いやな思い出だ。
 
 さて統一教会について簡単に解説すると、それはまずキリスト教の一派である。そしてこの団体においては、教祖である文鮮明をイエス・キリストに続いて現れた救世主としており、その著『原理講論』は「旧約聖書」「新約聖書」に続く聖書であると位置づけられ、別名「成約聖書」とも呼ばれている。
 その教義においては、今日の人類はすべて「堕落した」存在である。もともと神は、人間を世界の支配者となるべく創造し、人間は神の愛を受けるはずだったが、アダムとイブが神に対する背信を行なったため、人間は「愛される存在」ではなくなってしまった。聖書にいう、イブが蛇にそそのかされ禁断の木の実を食べた、というのはセックスの比喩であり、蛇とはすなわち天使長ルーシェル、のちのサタンである。イブは夫たるアダムではなく天使と肉体関係を結んでしまったことで罪を負い、彼女は神に対する恐怖から正式な夫であるアダムとも急いで関係を結んだ。これは本来の配偶者との結びつきとはいえど、動機からして忌むべき関係であり、そこから生まれた人類のすべてが「不義の子」「堕落の産物」と見なされるようになってしまった。しかしこうして「愛されざる存在」となってしまった人類は、どうすれば救われるのか。セックスが悪いのではない。神に夫婦として認められていないもの同士がセックスするのが悪いのである。人類はずいぶんと増えてしまったが、しかしこれからでも神が夫婦と認めた信仰深い男女なら、肉体関係を結んで殖え広がればいい。そこで神の使いである救世主・文鮮明が、「神に認められた結婚」の担い手として、仲人の役を司るようになった。しかし数十億もの地球人類すべての婚姻をとりもつのは大変である。時間もない。そこで文鮮明は、信者の顔写真を大広間いっぱいに並べ「こいつとこいつ、こいつとこいつ」と素早く夫婦となるべき男女を選んでいく。彼は「最も夫婦としてふさわしい二人」を猛スピードで選ぶことができる「超能力」を持っていると信じられている。そしていっせいに結婚式をやる。これが合同結婚式である。

 統一教会の宇宙観は「人間原理宇宙論」である。すなわち、この宇宙はわれわれ人類が生活の場とするために生まれた、と考える。ほかのすべての動物は人類に仕えるために誕生した。したがって異星人などいない。いたとすればそれは「異星の動物」である。
 ときおり原理研究会の人は、それぞれの言葉で統一教会の宇宙論を語って聞かせる。Mという女性信者の言うのには、人間より背の低い草木の花は上を向いて咲き、人間より背の高い草木の花は下を向いて咲くのである。それは人間が宇宙の中心であることのひとつの証拠である、と。あとで考えてみればモクレンは人間より高いところで上を向いて花を咲かせるのであり、そのとき反論してやればよかったと思った。
 Tという年かさの男性信者とはよく話をしたが、彼は船井幸雄の思想が統一教会の思想と非常に近いとして、よくその言葉を引用していた。またTさんによると「相対性理論は間違いである」とのこと。これは深野一幸という工学者の影響だったが、この宇宙には人間には観測し得ない微粒子が瀰漫しているのであって、そこに霊の世界があるらしい。なにゆえ観測し得ないかというと、10の-20乗メートル以下の小ささのものは現在のどんな精密な機器でも存在を確認できないのであり、そこに検知できない微粒子の世界が広がっている。統一教会の教えでは、「霊人体」というものが人間の魂にあたり、それが死後天国に行って永遠に暮らす。輪廻はない。その霊人体の存在を保証するために、Tさんは未知の微粒子が充満する宇宙観を必用としたのだろう。しかしここから絶対静止空間という相対論で否定された考えが出てくるのであり、その思想は深野一幸著『宇宙エネルギーの超革命』という本で述べられている。もちろんトンデモ本であり、この深野一幸という人はトンデモ学者としてときおりTVに出てきて大槻教授などと論争していた。しかし宗教者というのは博士号に弱いのか、Tさんは「この深野先生というのは工学博士だよ! 工学博士が言ってるんだよ!」といって相対論を否定してきかなかった。
 どんな新興宗教でもそうかも知れないが、彼らは信用を得るためにしばしば科学者を広告塔として使う。統一教会を信仰している科学者もすこしはいるから、懐疑的な入門者に「あの科学者も信じてるんだよ!」などという。当時、数学者の一松信先生も広告塔として使われていた。いまも信仰しているのかどうか知らないが、一松先生が統一教会の教義を黒板に書いて熱弁をふるっている写真が彼らのパンフに載っていたものである。

 統一教会でもっとも厳しく言われていたのは「姦淫の禁止」だった。合同結婚式による結婚をするまでは、もちろんセックスしてはならないし、ヌード写真も見てはならない。テレビで女性のヌードが出てきたら目をふせろと言われた。ヌードを見ると「霊人体に穴が開く」らしい。
 原理研究会との付き合いが長くなってくると、彼らの寮、通称「学舎」に引っ越すよう勧められる。彼らにしてみれば、信者たらんとする者は邪念を起こさないように、一日の大部分を信者と過ごすことが望ましいのである。自分は「学舎」に住むことはなかったが、どうもプライバシーというものがほとんどない空間らしかった。そんなのは嫌だというと、M女史に「人間は好きな仲間と一日二十四時間いっしょに過ごしたいと思うのが当たり前だ」と言われた。プライバシー、すなわち孤独を欲するなど病的だ、というのだ。自分はこのM女史とは徹底的にそりが合わず、よく喧嘩した。M女史との喧嘩がもとで辞める決心がついたのだから、今では彼女に感謝すべきかも知れないが。

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快文書作成ユニット(仮)
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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209 〜 PNの由来は映画『ロボコップ』に登場するオムニ社の敵役ロボットからです。今まで書き溜めてあった自身の体験談やコラムを発表するには良い機会と思い寄稿させて頂きました。是非、御読みになってみてください。そして何より皆さんに楽しんで貰えれば嬉しいです。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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