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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/20 (Sat) 13:58:57

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No.49
2009/10/16 (Fri) 01:13:18

考古学者草壁が、殺気(さつき)と冥(めい)のふたりの娘を連れて獄門島に到着したのは、夕刻に近いころであった。

これから住むことになる、じめじめした古い屋敷を見て冥は言った。
「お父ちゃん、この辺にイボガエルいるかな」
「ああ、いっぱいいるとも。冥の好物ならなんだっているぞ」
「青い目の男の子も? 今から楽しみ~イヒヒヒ」
「こら冥、がっつかないの!」殺気が言った。
草壁は屋敷の雨戸をいきおいよく開けた。二、三十羽のコウモリが、バタバタと羽音もけたたましく飛び出してきた。
「ウシシ、ウシシ、うまそうなコウモリ~!」赤黒い目玉をぐりぐり回し、よだれをたらしながら冥が叫んだ。
「さーて、二階へ昇る階段はどこにあるでしょーか!」草壁がニヤニヤしながら言った。
「ウワーイ」殺気と冥はどたどたと屋敷に上がりこんだ。
「ここかな? ここかな? ここだー!」
「なんだか真っ暗ねー。ウヒヒ、なめくじいるかなー」
ザワザワという音とともに、黒い小さな球体がたくさん見え隠れした。
「まっくろくろすけ出ておいで、出ないと内臓ほじくるぞお!」
二人の娘は包丁を持ってくわっと目を見開き、猛然と階段をかけ上った。
「なんにもいない」
殺気が窓を開けた。光がサッと差し込む。
「ぎゃあ、お姉ちゃん、目がつぶれるぅ」冥がのたうちまわった。
「お父さん、ここお化け屋敷みたい!」殺気が階下にいる父親に言った。
「なーんだ、またお化け屋敷か! これはこれは、研究が進むぞぉ」

鬼婆が来た。
「手伝いにきたぞな、もし」
「これはこれは、すみません」と草壁。
「おやおやおや」殺気と冥を見た鬼婆はニンマリとして言った。
「可愛い子たちだこと……そら、おみやげじゃ」
鬼婆がブリキのバケツを差し出すと、中にはトカゲの尻尾や何かの目玉、芋虫などがたくさん入っていた。
「わー、お婆ちゃん大好き!」二人の娘は声をそろえて言った。

目が黄色くてがりがりに痩せた、坊主頭の少年が布をかぶせた大きな皿を持ってやってきた。
「これ、母ちゃんが、婆ちゃんに」といって皿を殺気に差し出す。
「何これ?」殺気が布を取ると、皿には腐った牛の首がのっていた。
「わー、ありがとう!」
少年は口元をぶるぶる震わせてあとずさった。
「や、やーい、お前んち、自殺の名所!」
「姦太(かんた)!!」鬼婆が叫んだ。
「男の子きらーい!」殺気はそういって、鬼婆の持ってきたみやげをムシャムシャほおばっていた。

(つづく)

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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

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 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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