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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/10/17 (Tue) 16:26:46

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No.53
2009/10/16 (Fri) 01:22:11

吐屠郎が置いていった新聞紙の包みには、小さな骨のかけらがたくさん入っていました。冥(めい)は、それを家の庭に埋めて「まだ芽が出ない、まだ出ない」と言っています。まるで欲深いナメクジのようです

 殺気(さつき)からの手紙を見て、母は微笑んだ。そこには「めいナメクジ」という不気味な生物のリアルなイラストが描かれていた。病室には、午後の日差しがやわらかに差し込み、平穏そのものだった。


 蚊帳の中で、殺気と冥が眠っていた。深夜、殺気がふと目を覚ますと、庭に、頭は若い男、胸と腕はゴリラ、腹は牛、足は馬、という生物がひざまずき、手を合わせてブツブツと呪文のようなものを唱えていた。吐屠郎だ。彼が力をこめて地面を指差すと、そこから骸骨の腕が一本飛び出した。続けて四方八方を指差すと、そこらじゅうから骸骨の手足、頭がニョキニョキ出てきた。
「冥、起きて! 吐屠郎よ」
 冥が目を覚まし、姉妹は興味津々で庭の光景をながめた。骸骨たちは手に手に飾りのついた笠をもち、奇妙なダンスを踊りながら吐屠郎の周囲を回った。
 吐屠郎は大きなコマを回すと雨傘を広げ、コマの上に飛び乗った。殺気と冥が吐屠郎にしがみつくと、吐屠郎はニーッと笑って空に舞い上がった。姉妹が上空からながめると、獄門島全体がぼんやりと青く光り、島のいたるところで骸骨が盆踊りを踊っていた……。

「さつき!」庭のほうから、男の子の声が聞こえてくる。殺気は目を覚ました。もう朝だ。
「姦太くん?」
「大変だ、早く目を覚ませ! 島の南のほうから死人が群れをなして襲ってくるんだ! あれはゾンビだ。みんな島の北部に逃げている。ぐずぐずするな」
 冥も目を覚ました。
「ほら、そこからもゾンビが出てくるぞ!」姦太が地面を指差すと、青白い手がにょきっと出てきていた。
「夢だけど!」殺気が叫んだ。
「夢じゃなかった!」冥が応じた。
「夢だけど!」
「夢じゃなかった!」
「二人とも、喜んでる場合じゃない!」二人の父親である草壁博士がいつのまにか後ろにいて、叫んだ。「早く逃げるんだ、一刻も早く!」
「草壁さん、電報です」
「えーい、こんなときに!」草壁が叫んだ。
「わたし、もらってくる!」殺気が玄関に行き、電報を手に戻ってきた。
「シキュウレンラクコウ、シチコクヤマビョウイン。病院からだわ! お母さんに何かあったのよ!」
「まあ落ち着きなさい。今はゾンビに集中しよう!」父が言った。
「そうだ、じきに大群が来るぞ」姦太はバットを振り回し、庭の畑から湧いた黒い着物のゾンビを倒した。
「あれ、冥は? 冥が消えた! きっと一人で病院に行ったんだわ!」
「えーっと、どうすりゃいいんだ、いやとにかく病院へは北への一本道だ、とにかく北へ向かおう」
 草壁が言うと、青い中型トラックが遠くから走ってくるのが見えた。そこらにまばらにフラフラしているゾンビたちを次々はね飛ばしながらトラックは疾走し、やがて草壁邸の庭先に停まった。ドアを開け運転席から降りてきたのは巨体の吐屠郎だった。彼は小石で、フロントガラスに金釘流で「めい」と書いた。
「吐屠郎! 私たちを冥のところに連れてってくれるの!?」殺気が叫ぶと、吐屠郎はニヤニヤ笑いながらうなずいた。
「ありがとう!!」殺気と姦太は助手席に乗り込んだ。
「よし、偉いぞ、吐屠郎」草壁もトラックに乗り込もうとすると、なぜか吐屠郎は「うがーっ」と叫んで草壁を突きとばし、そのまま車を発進させた。
 草壁は走り去るトラックを見送りながら「どうも俺は吐屠郎に嫌われているようだ……って冗談じゃないぞ、おい!」
 迫り来る男女のゾンビに血相を変え、草壁も北へ走っていった。

(つづく)

(c) 2009 ntr ,all rights reserved.


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自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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