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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
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No.96
2009/10/18 (Sun) 03:55:59

ばくてりやの世界  萩原朔太郎

ばくてりやの足、
ばくてりやの口、
ばくてりやの耳、
ばくてりやの鼻、
ばくてりやがおよいでゐる。

あるものは人物の胎内に、
あるものは貝るゐの内臓に、
あるものは玉葱の球心に、
あるものは風景の中心に。
ばくてりやがおよいでゐる。

ばくてりやの手は左右十文字に生え、
手のつまさきが根のやうにわかれ、
そこからするどい爪が生え、
毛細血管の類はべたいちめんにひろがつてゐる。

ばくてりやがおよいでゐる。
ばくてりやが生活するところには、
病人の皮膚をすかすやうに、
べにいろの光線がうすくさしこんで、
その部分だけほんのりとしてみえ、
じつに、じつに、かなしみたえがたく見える。

ばくてりやがおよいでゐる。



二、三日風邪で寝込んでいた。寒くなってくるとどこへ行っても「うがい手洗いせなあきませんよ」と社交辞令のように言われるが、僕は夏の暑い盛りでもうがい手洗いは欠かさない、それでも風邪を引くときは引く。今年は一月二月もしょっちゅう風邪を引いていたし、ウィルスに対する抵抗力が落ちているのか知らん。

一年中どこへ行っても細菌、ウィルスはうようよいて、抵抗力の落ちている人、潔癖症の人は毎日気が気でないと聞く。
泉鏡花という人は極端な潔癖症だったそうで、外で饅頭を食うなどの際には必ずアルコールランプであぶってから食ったとか、客が自宅を訪れたあとには、その客が座っていた座布団を徹底的に消毒するのが常だった、などという話を読んだ。「あなたはそれで細菌を完全に滅菌できるとお思いか」と聞かれて「そうは思わないが、それでもこうせずにはいられないのです」と答えたとか。

「もやしもん」という漫画が流行っているけれど、明治時代はちょうど微生物学が発達したころで、当時の大ベストセラー『自助論』にもコッホなどの微生物学者の逸話が載っていたり、細菌のことを気にする人が多かったのかも知れない。
いま「賞味期限」の偽装問題がいろいろ出てきているが、昔は賞味期限の表示などない食べ物でほとんど済ませていたことを思うと、みんなが注意深く食事すればそれで済むような気がしないでもない。

まだエイズという病名が一般に広まっていなかったころに、後天性ではない先天性の免疫不全の少年の話を読んだ。その少年は生まれる前から免疫不全であることが分かっていたらしく、生まれるとすぐに、あらかじめ用意された無菌室に運び込まれ、以後ずっとそこで過ごすことになる。壁から突き出たゴム手袋を通じてしか母親に抱かれたこともなく成長することになる。四、五歳ぐらいまでの写真が「元気にすくすくと成長」という言葉とともに載っていたけれど、彼はそもそも治る見込みがあってあの無菌室に入れられたのだろうか。いまどうしているのだろう。

mixiの「都市伝説」コミュで読んだ話だが、日本のある商社の社員がアメリカに出張することになって、その地域というのがゲイの犯罪者のたくさんいる所だった。彼は行く前に「ゲイに襲われそうになったら"I'm HIV positive."と言え、これで撃退できる」と聞かされた。さてびくびくしながら現地に着き、しばらく何事もなかったが、ある時とある酒場でごつい黒人が襲い掛かってきた。そいつはゲイのようだったから、彼は教わったとおり"I'm HIV positive !" と叫んだ。すると黒人はにっこり笑いながら"Me, too."と言って迫ってきたという。

免疫不全の人にとっては風邪のウィルスなども恐ろしい存在で、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』で地球に侵略してきた火星人が、最後に風邪のウィルスで全滅してしまったというのも面白いけれども、風邪、水虫、癌のいずれか一つでも根絶しえた者はノーベル医学賞間違いないといわれるのも興味深い。

(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

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