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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/10/20 (Fri) 17:56:51

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No.571
2012/06/25 (Mon) 00:46:11

 ゴア家の十一歳になる長男マシューは、あるときから自分の頭に宿った不思議な生物とひっそり会話するようになった。チョッキーと呼ばれるその生物はマシューの頭の中から彼に呼びかけ、しばしば難しい議論を吹っかけた。地球の一日が二十四時間になっているのは馬鹿げている、なぜ三十二時間にしないのか? 一週間はなぜ八日ではいけないのか? 両親のデイヴィッドとメアリはそれに気づいたが、はじめは子供なら誰でもする類の空想にふけっているに過ぎないと思った。しかし太陽はいったいどこにあるのかとか、牛はなぜ牧場の鍵を自分で開けて出て行く程度には知能が発達しないのかとか、およそマシュー少年の頭脳からは出てきそうにもない質問を発するため、親たちは徐々に不安になる。チョッキーの存在が家族の中でおおやけになり、それは単性の生物らしいこと、高度に発達した科学をもつ星からの来訪者らしいことが窺えるようになった。それでも親たち、特に母親のメアリはチョッキーを実在の生物であることを認めたがらず、マシューの妹のポリーはチョッキーに嫉妬し、家族内にさまざまな軋轢が生じる。マシューは家の外ではチョッキーのことを隠していたが、突拍子もない質問をしたり教えもしない二進法で数を数えようとするマシューは教師たちの関心を引き、ゴア家を訪問する教師も出てきた。

 この問題に決着をつけようと思った父のデイヴィッドは、ランディスという精神科医にマシューを診てもらう。ランディスはチョッキーが単なる子供の空想や借り物のアイディアなどではないことをすぐに見抜き、未開社会でしばしば報告される「憑依現象」に何よりも似ていると言わざるを得ない、と両親に話した。
 ゴア家はある週末を湖畔で過ごした。マシューとポリーがボートで遊んでいたとき、それが転覆し、湖から流れている川の急流にポリーは飲み込まれた。大人が目撃する中、マシューはオリンピック選手なみの泳ぎでポリーに追いついて助けた。それを見た大人たちはマシューを表彰し、水泳選手になるべきだと口々に言った。しかしマシューはその前日まで全く泳げず、そのときはチョッキーの助けを借りて泳いだのだった。彼が泳げないことは多くの知人が知っており、そのことがまた注目を集める。またあるときマシューがチョッキーの助けを借りて描いた絵が美術の教師の目にとまり、展覧会に出品されたその絵が賞を受けるなど、マシューはますます有名な存在になった。記者たちにしつこく質問され、チョッキーのことが世に広まるのは時間の問題だった。またランディスから話を聞いた高名な精神科医がマシューに注目し、彼に特殊な薬剤を投与してチョッキーについて洗いざらい話させ記録されるということも起こった。
 ここに至りチョッキーはマシューのもとを離れる決断をした。チョッキーはマシューの口を借りて、デイヴィッドに自分の正体を語った。彼は何光年も離れた星の住人で、まず移住に適した星を探す探検の使命を帯びていた。また一方では、知能を持つ生命を見つけたときはその精神に宿り、彼らの高度な科学や思考方法を授けるという博愛的な使命も持っていた。しかし彼はマシューに多くのことを語りすぎ、マシューと彼自身に危険が及ぶという失敗を犯してしまった、と。

 チョッキーの不思議な発言や能力も興味深いが、子供にはごく普通の幸福を手に入れて欲しいという母メアリの思いや、それとはやや違った冷静な目でマシューを見守る夫デイヴィッドの葛藤など、家族の心情の真に迫った描写も読者を飽きさせない。
「トリフィドの日」で著名なイギリスの作家ジョン・ウィンダムの遺作。

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執筆陣
HN:
快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

 ♘ ED-209 〜 PNの由来は映画『ロボコップ』に登場するオムニ社の敵役ロボットからです。今まで書き溜めてあった自身の体験談やコラムを発表するには良い機会と思い寄稿させて頂きました。是非、御読みになってみてください。そして何より皆さんに楽しんで貰えれば嬉しいです。

 ☠ 杏仁ブルマ
セカイノハテから覗くモノ 



 我ら一同、只管に【快文書】を綴るのみ。お気に入りの本の頁をめくる感覚で、ゆるりとお楽しみ頂ければ僥倖に御座居ます。









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