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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/27 (Sat) 04:40:51

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No.670
2013/12/29 (Sun) 00:22:24

 聞くところによると、動物園で売買される動物のうちもっとも高額なものはゴリラだそうで、一頭で一億円もするらしい。ライオンなどは驚くほど安価で、一頭で四十五万円ほどだそうだ。
 ゴリラ一匹で一億円。アフリカかどこかで捕まえて売り飛ばせば、こんな上手い商売はない。宝くじで一億当てるよりはよほど簡単そうだ。それはワシントン条約か何かに引っかかるのだろうが、裏の売買ルートだってあるはずだ。決めた。アフリカにゴリラを捕まえに行こう。

 アフリカ中央部の某国の空港から車で五時間。ゴリラの生息する密林地帯にやってきた私は、麻酔弾をこめた猟銃を肩にかけ、用心のため実弾の入ったピストルも腰にさしていた。
 草むらをかき分け、ジャングルの中を進んでいく。葉のたくさんついたツタが顔に絡みついてきて、なかなか取れなかった。ナイフでようやくそれを切り払うと、なんとすぐ目の前に大きなゴリラがいた! そしてほうきを持って襲ってくるではないか。私はあわててピストルを抜き、二発発射した。それは相手の腹に命中したようで、ゴリラは倒れてぐったりとなった。

 落ち着いてみると、私はなぜ麻酔弾を使わなかったのだろうと後悔した。ゴリラを傷つけ、死にでもしたら手に入るはずだった一億円がパアだ。
 そのとき、サイレンらしき音が遠くから聞こえてきた。このジャングルの真ん中で、なぜそんなものが聞こえてくるのだろう。サイレンの音はどんどん近づいてくる。直感的に、これはまずいことになったと思った。案外近くに警察があって、銃声を聞いて駆けつけてきたのかも知れない。私はすばやくその場を去り、ジャングルを出て、車に飛び乗った。
 都市部へ向けて車を走らせる。ラジオをつけると、こんなニュースが聞こえてきた。
「世界的な中華料理チェーン店『餃子の銀将』フードサービスの社長であるマホナホ・ニャタクマラさんが、会社の前を掃除していたとき、何者かに銃で撃たれたもようです。ニャタクマラさんは現在病院で手当てを受けていますが、安否が気遣われています」

 俺は剣を上段に構え、相手との間合いをつめようとしたが、奴め、なかなか隙がない。そのとき、相手のわらじの紐が切れた。ここぞとばかりに俺は斬りかかった。しかし相手は体を開いてそれをかわし、俺が喉もとを突こうとすると、そいつは見たこともないような刀さばきで俺の剣を叩き折った。急いで脇差を抜いたがそれも払われてしまい、そいつは俺の首をつかまえ、必死であらがったが俺は髷(まげ)を切り取られてしまった。
「ふははは! 藩の指南番といったところで、所詮は実戦を知らぬ道場剣法。戦乱の世であまたの修羅場をくぐってきたそれがしから見れば、貴公の経てきた修行は畳の上の水練のごときものに過ぎぬ。ではこれはみやげにもらっておくぞ!」
 そう言いながら奴は俺の髷をぶらぶらさせて去って行った。
 俺は脱力して幽霊のようになって帰宅した。剣をもって仕える武士ともあろうものが、決闘に破れたうえ髷まで取られたとあっては立つ瀬がない。かくなる上は腹かっさばいて潔く果てよう。俺はもろ肌を脱いで、短刀を勢いよく腹に突きたてて真一文字に切った。
「彦三郎! か、介錯を! 何をしておる、早く介錯を……」

 マホナホ・ニャタクマラ氏はそこで目が覚めた。さいきん日本映画の見過ぎで、こういう夢をよく見る。
 はて、ここはどこだろう。ニャタクマラ氏が首を持ち上げると、自分の毛むくじゃらの腹が、本当に真一文字に切り開かれているではないか!
「はい手術中ですからね、動かない動かない」
 メスを持った医師が言った。そしてピンセットで弾丸をつまみあげる。
 そうだ、俺は撃たれたんだった、とニャタクマラ氏は思った。相手は東洋人だったが、いったい誰の差し金だろう? 大会社の社長ともなれば、彼を恨んでいる人物がいてもおかしくはない。しかしこの俺を狙ったのが運の尽きだ、と彼は思った。政界、法曹界に幅広い人脈をもつこの俺だ、必ず犯人を捕まえ、首をはねてやる。

 私は空港の近くのホテルでいらいらしていた。台風の影響で空の便はのきなみ欠航。こんなところで足止めを食っていたら、警察に捕まるのも時間の問題だ。
 ドアの外が騒がしくなり、ノブががちゃがちゃ音を立てた。そら、おいでなすった。
 警官の制服を着たゴリラが二人、部屋に入ってきた。二人はしげしげと私の顔を見つめた。
「おい、なかなかいい玉じゃねえか」
「おいお前、ゲイの警官は好きか」
 すると私が返事するのを待たず、二匹のゴリラはズボンをおろし、パンツを脱いだ。
「やめてくれ!」という私を押さえつけ、ゴリラ警官たちは容赦なく私を凌辱した。
「へっへっへ」ゴリラたちは私を逮捕せずに帰って行った。
 異国の地でこんなはずかしめを受けるとは……よし、腹を切って死のう。
 私はキッチンにあった果物ナイフを腹に突きたてた。ゆっくり横に切り裂いていくと、やがて激痛が襲ってきた。しかし肛門の痛みのほうがひどいから、すぐ気にならなくなった。誰かに介錯をしてほしいところだが、贅沢は言うまい。床に血の海が広がっていく。

 そこで目が覚めた。ここはどこだっけ? そうか、私は裁判を受けていて……。
 裁判長の声が場内に響いていた。
「このように被告の行為は暴虐無残なもので、かつ計画的であり、本来なら斬首刑に処すところである。しかし、ちょうどモコモコ国王が百歳の誕生日を迎えられた折であるから、特に恩赦をほどこして鞭打ち百回の刑に減刑する」
 助かった。死刑になるぐらいなら、鞭打ち百回などむしろ楽しいぐらいだ。私は鼻歌を歌いながら、係官に連れられて裁判所をあとにした。
 翌日。何もない石畳の部屋に連れられてくると、そこに鞭を持ったゴリラの刑吏が二人いた。
「これから鞭打ちの刑をおこなうのだが」
 そういうなり二人のゴリラは鞭を投げ捨てズボンを脱ぎ始めた。

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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

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