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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
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No.673
2014/02/15 (Sat) 15:45:11


 脳には「報酬系」と呼ばれる部分があるそうで、動物実験によると、そこに電気刺激を与えるとその動物はとてつもなく気持ちいいらしい。そういう部分が脳にあるのは、動物が生きていくうえで欠かせない行為を間違いなく行うようにするためだろうと思われる。つまり食事、睡眠、性交といった生物にとって不可欠な行為をするとたいてい気持ちがいいけれども、快楽があるから生物はそういう行動をとるのであって、そう考えると報酬系のような快楽の源となる脳の部位は非常に重要な役割を果たしていることになる。

 この報酬系というのは脳科学者がネズミの脳を調べていて偶然見つけたものらしい。ある研究者はこれについて調べるため、ネズミが自分でボタンを押すと報酬系が電気刺激を受けるように細工をほどこしたところ、そのネズミはかわいそうにエサを食べることも忘れて死ぬまでボタンを押し続けたという。

 アメリカでは現在、死刑は毒薬の注射で行われているようだ。それはきっと死刑囚が苦痛を感じないように、また見た目にも残虐でないようにという配慮からだろう。ところが最近、アメリカの製薬会社が死刑用の毒薬の製造をやめはじめたとかで、その刑の方法が続けられなくなる可能性が出てきたという。そこで電気椅子や銃殺刑が復活するかも知れないとのことだが、それならいっそのこと上のネズミのように、死刑囚に自分の報酬系を刺激させたらどうだろうか。餓死しても構わないぐらいに気持ちいいのだから、これほど残虐でない死刑の方法はないと言えよう。
 
 僕も自分の報酬系を刺激したいと思わないでもないが、みんながそれをやったら人類は滅亡するんだろうな。まず多くの者は餓死するし、セックスもしなくなるから子孫も増えない。「良いことをしたあとは気持ちがいいなあ」などというけれども、良いことをしなくても気持ちよくなれるのだから良いこともしない。同時に悪いこともしなくなるだろうが。

 学校でさいきん授業をしていて腹が立ったのは、ふだんからまったく勉強しないくせに態度だけ大きい女子生徒が、一所懸命板書している僕に向かって「それ面白い?」と聞いてきて、数学が面白いのかということだろうから「面白いよ」と答えたら「気持ちわる……」などとほざいたことだ。数学は自分で手を動かして考えてみないと面白さは分からない。こいつの頭に電気コードをつないで勉強したら報酬系を刺激する、ということができたらいいのにと思った。
 
 まあこういうことを考え出すと、たとえば社員が仕事したら報酬系を刺激するようにして賃金を極端に安く抑えるとか、悪用も容易だと気付くのであるが。しかしいわゆるワーカホリックな人の頭の中も似たようなものかも知れない。仕事すればするほど脳内に快楽物質が出て、健康を害しても仕事がやめられなくなっているのではないか。かつて何とかいう会社は仕事が恐ろしくハードで、三十代で家が建ち四十代で墓が立つ、などと言われていたが、そこの従業員は報酬系のボタンを餓死するまで押し続けるネズミのようなものだ、と言ったら怒られるだろうか。

 報酬系というのは池谷裕二という脳科学者の本で知ったのだが、この人の『単純な脳、複雑な「私」』(講談社ブルーバックス)には、さらに驚くべきことが書いてあった。脳の頭頂葉と後頭葉の境目あたりに「角回(かくかい)」という部位があるが、そこに電気刺激を与えると人間は幽体離脱するのだという。これは実験で確かめられていることで、だから幽体離脱はもう科学的に存在が立証された現象なのだそうだ。
 僕はこれを読んで、自分の角回のあたりを指で押して幽体離脱できないか試してみたが、当然ながら成功しなかった。それが出来たら面白いのにな。

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快文書作成ユニット(仮)
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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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