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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/08/19 (Sat) 07:07:16

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No.678
2014/09/19 (Fri) 03:03:28

 アニメ「未来少年コナン」にテキという名の白い小鳥が出てきて、ヒロインのラナに可愛がられ、主人公のコナンとの橋渡しにもなる愛らしい存在だった。
 僕が大学に入った年に同級の文学部生のあいだでテキといえば、それはドイツ語のH先生のことを指していた。ほとんど笑うことのない厳格そのものの先生で、ロボットのように機械的で暗い話し方をした。なぜテキなのかといえば、顔つきや服装がテキ屋の親父にしか見えなかったからである。一回生のとき、ドイツ語選択者にはたしか週に三回ドイツ語の講義があって、テキ先生の概論とネコ先生の文法、それからティーレン先生による会話がその三つだった。ネコ先生は本当は金子といったが、カネコのカがいつの間にか省略されてネコになった。ネコ先生の講義で使われていた文法の教科書は、たまたまテキ先生が書かれたものだった。ネコ先生によるとテキ先生は、その教科書の原稿を出版社に渡したさい、誤りがないかほかの先生に見てもらったかと聞かれると、例のロボットのような口調で「私は誤りを犯さない」と言ったそうである。
 そういう物言いはテキ先生の性格をよく表していたが、一方でドイツ語という言語が非常に規則正しくできており、誤りのない教科書を書くのが比較的容易だという事情があったと思われる。またドイツ人のティーレン先生によると、教科書を一冊マスターしておけば、だいたいにおいて自然なドイツ語が話せるのだという。英語や日本語の場合、文法をひととおり知っていても、いちおう通じるように話せはするが、自然な発話ができるようになるのにはそれだけでは足りなくて、それはネイティブスピーカーとの実地の会話を繰り返して身につけるしかない。

 そういうことを考えると、こんにち英語が世界共通語のようになったのはやや不幸なことかも知れず、ドイツ語が広まったほうが良かったのではないかとも思える。たとえば英語の大きな欠点として、単語のつづりを見ても正しい発音が断定できないことがあげられるが、これはドイツ語にはほとんどない。というより世界の言語の中で、英語のほうが例外的に発音が不規則であるらしい。英語が誤った発音がなされやすく、地域によって訛(なま)った話し方が定着しやすいのには、一つにはそういう事情があるのだろう。
 最近のTOEICやTOEFLでは、そういう各地の訛った英語の聞き取り能力も問われるらしい。具体的にどこの訛りについて聞かれるのか自分はよく知らないけれども、インドなどではとくに激しく訛った英語が話されていて、しかし話者の多さからいうとインド訛りは決して無視できないものになっている。

 インドの英語教育では、日本のように正しい英語を使うよう意識させるのではなく、むしろ積極的に「間違えなさい」と教えるという。間違いを恐れずどんどん話すという積極性が大事であるし、間違えて人に指摘された事柄というのは強く記憶に残るから、合理的な教育方法かも知れない。ただ間違いを恐れずどんどん話す結果、みながよく間違えて使う英語表現や発音が、いつの間にかインドでは正しい英語としてまかり通ってしまうことはありそうなことで、それが訛りというものではなかろうか。そう考えると、日本人も間違いを恐れずどんどん英語を話し、日本訛りの英語が出来上がってそれが国際的に認知されてしまえば、もっと英語は近づきやすいものになるのではないか。

 すでに日本の英語の話者はそうしているかも知れないが、冠詞の a, the などは日本語にその種のものがないから難しいし、そんなものはどんどんすっ飛ばして話しても差支えないのではなかろうか。ただそのときの文脈で「その本」なのか「ある本」なのかはっきりさせなければならないようなときだけ the book とか a book と冠詞をつければよい。不規則動詞にもあまり神経を使わず、迷ったら語尾に –ed をつければいい。

 ただイギリスやアメリカなど昔から英語を使っている地域の人々の中には、不規則動詞のようなものは大切な文化だという思いがきっとあって、took というべきところを taked などと言えば、教養のない人間だと思われる場合があることは、覚悟しなければならないだろう。上で冠詞などは飛ばしてよいと書いたのは、それが論理的には不要だからだが、言語というものは論理だけで出来上がっているものではなく、論理的には要らないものが大切な文化だったりするのである。オーウェルの『1984年』という小説は未来世界が舞台で、そこでは人々はつねに政府に監視され、厳しく思想が統制され、思想を画一化するために「ニュースピーク」と呼ばれる極度に簡素化された英語が使われている。自分は原書を見ていないからはっきりとは知らないのだが、おそらく不規則動詞などはなく、単語は極力減らされ、たとえば bad, poor, dirty などという語は無くしてしまって、それぞれ ungood, unrich, unclean などと言い換える。名詞から形容詞を作るときは語尾を-wise とすることで一律化され、beautiful, funny などはそれぞれ beautywise, funwise となる。この「ニュースピーク」での会話の場面は、いかにも思想や文化の乏しい、不気味で暗い世界を効果的に表現しているようだ。

 そのように言語の難しい部分を簡単なものに変えたり無くしたりというのは、やり過ぎると文化の破壊につながり、言語を非人間的なものにしてしまう。だから僕が上で提案した「日本訛りの英語」というのも、いちおうきちんとした英語は念頭に置きつつ、会話のとき困ったら簡素化した英語表現をする、というようなバランスが大切かも知れない。


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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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