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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2024/04/25 (Thu) 07:07:58

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No.80
2009/10/16 (Fri) 04:25:22

月の砂漠
       加藤まさを作詞 

月の砂漠をはるばると
旅の駱駝がゆきました

金と銀との鞍置いて
二つならんでゆきました

 金の鞍には金の甕
 銀の鞍には銀の甕

 二つの甕はそれぞれに
 紐で結んでありました

さきの鞍には王子様
あとの鞍にはお姫様

乗った二人はおそろいの
白い上着を着てました

 曠(ひろ)い砂漠をひとすじに
 二人はどこへゆくのでしょう

 朧にけぶる月の夜を
 対の駱駝はとぼとぼと

沙丘を越えて行きました
黙って越えて行きました


この古代の歌は、人類が月に自由に行き来していたころに成ったものであろう。
「月の砂漠」は、いうまでもなく月面上の砂漠のことである。「旅の駱駝」は、文字通り動物の駱駝ではなく、月面四輪駆動車を指す詩的表現と取るべきであろう。金銀それぞれの甕は酸素タンクであって、月で起こったと考えられる市民革命の結果、脱出を図った王族がすなわち「王子様とお姫様」である。彼らは行く当てもなく、酸素も底を尽きようとしており、彼らの絶望は涙を誘うほどである。しかしやがて、砂丘の果てにひそむ反革命の一派と合流し、新たに王国を立て、共和国と対立したことは誰でも知っている。両国間で起こった破滅的な核戦争の結果、こんにち月と呼ばれる衛星はあとかたもなく無くなってしまった。いまでは絶滅しつつある狼たち、彼らは毎夜どこへ向かって吠えればいいというのか。兎は何を見て跳ねればいいというのか。故国を失った王族たちの孤独の中に、月そのものの喪失が予感されているのを見逃してはならないであろう。

(c) 2009 ntr ,all rights reserved.
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執筆陣
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快文書作成ユニット(仮)
自己紹介:
 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


 ❁ ntr 〜 またの名を中村震。小説、エッセイ、漢詩などを書きます。mixiでも活動。ふだん高校で数学を教えているため、数学や科学について書くこともあります。試験的にハヤカワ・ポケット・ブックSFのレビューを始めてみました。

 ❖ 呂仁為 Ⅱ 〜 昭和の想い出話や親しみやすい時代物、歴史小説などについて書きます。

 ✿ 流火-rjuka- ~ 主に漢詩の創作、訳詩などを行っています。架空言語による詩も今後作りたいと思っています。

 ☃ ちゅうごくさるなし
主に小説を書きます。気が向けば弟のカヲスな物語や、独り言呟きなことを書くかもしれません。

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