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 『読んで面白い』『検索で来てもガッカリさせない』『おまけに見やすい』以上、三カ条を掲げた〜快文書〜創作プロフェッショナル共が、心底読み手を意識した娯楽文芸エンターテイメントを提供。映画評論から小説、漢詩、アートまでなんでもアリ。嘗てのカルチャー雑誌を彷彿とさせるカオスなひと時を、是非、御笑覧下さいませ。
No.
2017/10/21 (Sat) 12:01:11

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No.593
2012/09/05 (Wed) 10:45:19

        

 アル・パチーノとロバート・デ・ニーロの競演による『ヒート』については以前に別のサイトで書いた記憶がある。

 映画史に残ると言われた十分以上に昇る銃撃シーンは今見ても古さを感じさせないし、脇のトム・サイズモア、ヴァル・キルマーたちも男臭さを感じる硬派な作りだ。

 毎年、星の数ほども封切り上映される映画において、今では「これを観たい!」と劇場に駆けつけてみる映画はほとんど皆無だ。
 日々の制約が大きくて時間が取れない言い訳もあるのだが。概して最近は魂を揺さぶられる映画は極端に少ない。
 ハイテクやCG、俳優の質やレベルもあるのだろうが「光と闇」の使い方・・・陰影の持つ魅力が白黒の世界だけでなく人の心に投げかける憂鬱と無関係だとは思わない。

             

 「30秒で高跳びできるよう面倒な関わりは持つな!」というのがデ・ニーロ扮するニール・マッコーリーの信条だったがひょんなことから書店で働くグラフィック・デザイナーの卵、イーディと知り合ってしまう。
 星をちりばめたようなロスの夜景をバックに睦み合う二人を描くシーンは硬派な男だけを映し出すわけでないことを語っている。

 本稿開始部分でも触れた十数分にも及ぶ街中での銃撃シーンは迫真の限りだが、この場面も含め、映画冒頭の輸送車強奪やパチーノ演じるヴィンセント・ハナ警部率いる捜査陣をコンテナ置き場におびき寄せ、あたかも次のヤマを踏む強盗たちの下打合わせを装ってる風に見せながら捜査陣の手の内を探る・・・一連の犯罪とプロセスは白昼堂々と陽の下で見せつけられ、逆に男と女、裏切り者への仕打ちなど愛憎の伴う場面は漆黒の闇の中が多い。
 ハナ警部がマッコーリーをヘリと高速で追跡しコーヒーを差し向かいで飲むシーンも合成だとか論議を呼んだが、似たような宿命を持ち敵味方に分かれても奇妙な連帯感、協調を互いに知り「今度、顔を合わせたら命はない・・・」ことを悟りながら別れていく。

             

 イーディを連れて高跳びできるだけのヤマは踏めたが、彼女に自分の正体を気付かれたことも含め代償は大きかった。
 傷ついた仲間のトレヨを楽にしてやり、クリスも逃がす。いよいよ、自分が高跳びを遂げてイーディと幸せに暮らす番だ。そう思う時、高速のトンネルの眩しい白い光にまみえる。やはり、仲間を死に至らしめることになった裏切り者のウェイングローだけはけじめをつけないと己を許すことができない。
 最後に踏んだヤマは現金強奪には成功したものの二人の仲間は銃撃と裏切りにあって倒され、残るヴァル・キルマーも肩を撃たれたところを現場から背負って命からがら脱出した。

 このチームともこれで最後だ。もう、来るところまで来てしまった。
 さあ、どうする?行くのか戻るのか?過ぎ去るのみか・・・?

             

 この時のイーディの目の輝きは、白い人工の光にニールと高跳びした後の暮らしを夢見ているとばかりに輝く。

          

 「いや、ダメだ。やはり、決着はつけないと・・」とウェイングローの潜伏先のホテルへカマロを向ける。
 白い光からまた暗黒へ解き放たれたように仇の泊っている空港のホテルへ向かってしまう・・・。イーディを白いカマロに残しウェイングローの始末に成功し戻った処にハナが駆け付ける。

             

 「・・・・云っただろう、もうムショには戻らないと・・・」撃たれたマッコーリーは云い残して絶命する。
 最期のやり取りも漆黒の闇の滑走路だ。闇の世界に生きたものは陽の光を浴びることなどなく闇へ戻っていくしかない・・・途中、まばゆい白い光の中にまみれることがあったとしてもそれは幻だ。所詮、黒が白になるなんて出来っこないのさとでも言いたげだ。場面や光の当て方はそうすることができても人の生きざまなんてそう簡単に変えられるものでもないと。


             

 一方、アラン・ドロンを一躍スターダムにのし上げた名作「太陽がいっぱい」である。アラン・ドロン演じるトム・リプレイは、親の金で放蕩を続ける悪友フィリップを彼の父親に頼まれて連れ戻しにきた。が、フィリップの恋人マルジュも含めた洋上生活やイタリア各地での破天荒な暮らしに、トムはやがて悪友の姿に自らを投影し、ついにはフィリップを殺害してしまう。

             

 富貴と貧困・・・これも光と闇に例えられなくはないが人生の現実だ。巧みに陽の光の力を借りて友人を殺害し、彼の財産を手に入れられるかに見えたその時、沈めた筈のフィリップの遺骸は陸揚げされた船下からゆっくりと現れる。

             

 「最高の気分だ・・・」と言って美酒に酔うアラン・ドロンの周りには文字通り太陽がいっぱいだ。強烈な陽光は遠慮なくトムの悪事を暴き立てる。
 世の営みの貧富の差なんて問題ではなく陽の光は誰に対しても平等さ・・・と云わんばかりに。

 光も闇も人の心には存在する。確かに陽の光は誰に対してもきっと平等なのだろう。だが、心の奥底までは陽の光も照らしてはくれない。
 よって人は悩み続ける。漆黒ばかりの宵闇が永遠に続くことがないことくらい皆わかってはいる。だが、人の悩みは尽きないものだ。
 光も闇も何かしら交互に横たわっている。ある時は失望でありまた、或る時は希望でその連続と輪廻である。

 刺すような煌めきの陽光は先日まで眩しいばかりだったが、ここ数日は穏やかで
爽やかな陽差しを感じることができる。

 最近はこのように考えさせられる映画を見る機会がかなり減ってしまった。



 (c)2012 Ronnie Ⅱ , all rights reserved.




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 各々が皆、此の侭座して野に埋もるるには余りに口惜しい、正に不世出の文芸家を自称しております次第。以下、【快文書館】(仮)が誇る精鋭を御紹介します。


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